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自然なお産をした女性が、育児中に自然派ママの「沼」にハマらなかった理由

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1人目の出産が理由で、2人目に“自然なお産”を選ぶケースも。Photo by Philippe Put from Flickr

 妊娠出産を機に、嗜好やライフスタイルがガラリと変わるのはよくあるお話。とりわけ子どもによりよい環境を与えたいという想いから〈自然派〉に転ぶケースは少なくありません。

 自然派子育ての例としては、〈自然でない〉という理由でワクチンを否定し、発熱や湿疹などのトラブルも極力、家庭での〈お手当〉でケア。テレビを見せずキャラものを与えず玩具は自然素材の素朴なものが理想的。子どもに食べさせるものは、無添加無農薬が基本のキ。牛乳砂糖はもちろん、コンビニやファストフード、冷食はもってのほか。衣服も化学繊維はできるだけ避けてコットンやウール、シルク、洗濯洗剤は環境に優しい成分etc……

 そしてそんな育児のスタートとなる出産は、医療介入は最低限と謳う〈自然なお産〉が、子どもにとってよりよい選択であるとランク付けられています。

 今回お話を伺ったA子さんも、自然なお産の魅力に惹かれて〈自宅出産〉したという体験の持ち主。ところが出産後の子育ては、冒頭で例を挙げたような〈自然派ママ〉とは様子が異なり、ワクチンは積極的に接種させ、食材のチョイスは「なんとなく白いものよりかは、黒いもの」という程度。現在お子さんは小学生なのでママ友との間で性教育の話題にもなるそうですが、もし子どもの学校で〈誕生学〉(過去記事ご参照)の講義が行われるなら、物申すつもりーーという、ごくノーマルな感覚を持ち合わせたお母さんでした。

自然なお産〉に魅力を感じて実践しながらも、〈自然派ママ〉にはならなかった、その分かれ道はどこにあるのでしょう。

自然派出産のバイブルと出会う

「〈自然なお産〉というものを知ったのは、まだ妊娠もしていなかった頃です。結婚してそろそろ子どもが欲しいかなというタイミングで、たまたま大葉ナナコさんの『産んでよかった! 「高齢出産」』(祥伝社)を読んだんですよね。同書には著者が5人の子どもを生んだ体験がたびたび登場するのですが、5人とも会陰切開せずに産み、さらに〈自然なお産〉を取り入れた4人目の子ども出産時は、一度もいきまずスルスルと赤ちゃんが出てきた……なんてあったので、それっていいな~と興味が沸いたんです」

 ちなみに子持ちの友人にその話をしたところ、「そりゃ4人目だからだよ」とバッサリ切られたそうですが。そんな経緯から自然派への扉を開いたA子さん、その筋では超有名な「吉村医院」で出産したい! とまで憧れは膨らんだといいます。しかし実際に妊娠すると、知人縁者がいるわけでもない地方で産むのは現実的でないと悟り、自然なお産の目安のひとつである〈会陰切開をしていない〉という病院を近場で探し、受診。さらにその医院に、家から近い有名助産院を紹介してもらったそう。

※「自然派出産」の象徴となっている愛知県岡崎市の診療所。ドキュメンタリー映画やテレビ番組などで独自の倫理を語り、「自然分娩の神様」と呼ばれた吉村正院長は現在引退している。http://www.ubushiro.jp/

「助産院は仕事をしながら通っていたので、検診後に足をマッサージしてくれたりなどのサービスが嬉しかったですね。でも結局は、陣痛が来たタイミングで高熱が出てしまい、助産師に『病院へ行きましょう』と言われて提携の病院で出産したんです。分娩は子どもが大きかったのでなかなか出てこられなくて、最終的には吸引をかけてもらってやっと……という感じでした。私が自然派どっぷりにならなかったのは、そこでたくさん医療のお世話になったし、それで特別嫌な思いもしなかったということや、通っていた助産院が標準医療の悪口を言わなかったことが大きいと思います」

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山田ノジル

自然派、エコ、オーガニック、ホリスティック、○○セラピー、お話会。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のないトンデモ健康法をウォッチング中。当サイトmessyの連載「スピリチュアル百鬼夜行」を元にした書籍を、来春発行予定。

twitter:@YamadaNojiru

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