そうと決まれば目標に向かって猪突猛進するのが夢子である。成功したければ“PDCAサイクル”をまわす、それがセオリーだ。
PDCAサイクルでは、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の4つをくり返しつつ活動する。自分の行動の精度を徐々に上げることになるので、目標に達しやすい。夢子の立てた計画は以下のとおりだった。
Plan(計画):
・男性女性双方の視点から、子宮摘出手術前と後とで性的興奮に違いがあるか検証する
・手術前にセックスする。男性に感覚を覚えていてもらう。自分もどう感じたか覚えておく
・術後、再度同じ男性とセックスする。男性に子宮がなくなったけど感じは変わったかを聞き、自分の体感も違うかを検証する
だがPDCAのD(実行)を決める時点で夢子は早々に壁にぶちあたった。
Do:
・なにをDoすればセックスできるのかわからない!
夢子は焦っていた。子宮内膜症の進行を遅らせるために毎日服用している薬であるピルを、手術を受ける1カ月前からやめなくてはいけない。手術中に血栓ができないようにするためだった。
薬をやめて子宮内膜症の症状が出てしまうと、大量の出血が起こり、さらには破水後の妊婦が感じるに匹敵する痛みで、風呂や食事すらままならなくなる。外出などとてもじゃないが不可能だ。
手術の1カ月前ということはPlanを実現する活動期間はあと2週間しかない。
「ほんとにやるの? まじで? 無謀かつバカバカしすぎるPlanじゃありませんか?」
夢子は何度も自問するのだった。
* * *
夢子は10年のセックスレスからほんとうにちんぽと子宮をジャストミートできるのか? オレは、夢子がこれからたどるちんぽへの道をみんなとシェアしていきたいと思う。
これが夢子の元を去る、オレの最後の仕事になる。
オレは何者かって? そう、オレは夢子の子宮だ。