次の日も「いってきます」を言いに所沢へ行くべく5時起床した有島くん、思い出したかのように美都に「もう会いません。連絡もしません。ブロック削除していいですか?うちは絶対別れません。ごめんなさい」とLINEメッセージを送信。さらにマンションの玄関を出ると、隣人の厄介ママ友だった皆美(中川翔子)が待ち受けていて「奥さんが実家帰っちゃったの私のせいなんです。ごめんなさい、あのビラやったの私なんです。奥さんにだまって勝手に。すみません、幸せそうなのが悔しくて」と怒涛の告白をかましてきました。有島くんの反応は「あいつ、そんなの一言も……俺はいいけど、あいつ、つらかったろうなあ」。
我慢強くて芯も強くて冷静で正しい妻・麗華。彼女をどれだけ苦しめているか有島くんはようやく全貌を把握できた……のか? ともかくもその朝、有島くんは所沢の家へ着くや否や麗華に強引なキスをしてにっこり「気持ちいいね!」と微笑む、ふたりの交際のきっかけとなった初キスのワンシーンを再現してみせました。不意打ちに麗華も思わず(有島スーツのお香のニオイもあいまって)「優しくてずるい人」と許せる気持ちに至り、これにて有島家は修復の道を歩くことが決定付けられました。麗華は夫に聞こえない小さな声で「でももう、あのときほど気持ちよくはないかな」とつぶやきましたが。そう、それが元通りにはなれないということ。だけど不倫が発覚していなくたって、そもそもファーストキスと結婚してからのキスが同じだけ気持ちいいなんてことはありませんよね。時間とともに人は変わっているのだから。
別のシーンで美都の友人・香子が「(過去の彼氏と今の彼氏を)比べても仕方なくない? あの頃好きだった人はあの頃の自分が好きだった人。今は自分も相手も変わってる。もうこの世にはいない亡霊、妖精、まぼろし」と言うのですが、このセリフには激しく納得ですね。過去は蘇らないし“時間は不可逆”なので。
ちなみに皆美「うちは引っ越すことにしたと奥さんにお伝えください」だそうですが、第一話で引っ越してきたばっかじゃん。とんだ引越し貧乏だよ。
渡辺家の場合
生理が予定日より遅れ、有島くんとのセックスで妊娠したかもしれないと思っていた美都ですが、怖くてなかなか使う気になれなかった市販の妊娠検査薬をついに開封して確認したところ、判定は「陰性」。妊娠していませんでした~。傍から見れば良かったねでも本人は複雑な感情ですが、これでやっと有島くんへの執着が吹っ切れた感はあったでしょう。
不倫の記憶を「昔だってそれなりに幸せだったのに、知らずに終わらせることもできたのに、突然現れた曲がり角を曲がらずにはいられなかった。だってそこはキラキラ光ってたから」と回顧し、「だけど私、後悔なんかしてない」と宣言する美都はこの作品で唯一、最初から最後まで一貫して変化をしない登場人物だと思いました。
最終回ですったもんだした有島家と違い、前回までの時点でもう離婚が決定している渡辺家。離婚届も記入し終えて、あとは涼太が役所に提出するだけです。が、数日経っても離婚届が出されてないうえ、涼太のケータイも留守電のままつながる気配がないことに気付いた美都は、涼太の親友・小田原さん(山崎育三郎)を呼び出します。涼太のことがずっと大好きで、この気持ちを伝えるつもりはなかったのに、不運にも涼太本人にそのことを知られてしまい気まずさを抱える小田原さん。彼自身もまだつらいだろうに、「実はここ一週間あいつ会社を休んでる。一応病欠の連絡はあったみたいだけど。まあ涼太にとっては奥さんと友達いっぺんになくしたみたいなもんだからね。オレじゃだめだからさ、あいつのこと頼みます」と、美都の背中を押すんです。
美都が自宅を訪れるも涼太は不在で、ダイニングテーブルのうえには挙式の写真とワイン。思い出の写真を見ながらワインを飲んでたというあからさまな未練演出、最後に会ったときに涼太が「やり直したいなあ~でも無理だってことはわかってるから、いっそ生まれ直したい」「人生、長いなあ」と言っていたこと、謎はすべて解けた、涼ちゃんは自殺しようとしてる! そう早合点した美都は、心当たりの場所としてプロポーズを受けた丘へ走りました。予想した通りその場所に佇んでいた涼太。自惚れた美都はこの期に及んで……
美都「涼ちゃんがもし死んじゃったらあたし耐えられない。もし、もしだけど、今さらこんなこと言う資格ないけど、涼ちゃんがまだ望んでくれるなら」
さすがに美都一筋だった涼太も、この瞬間、彼女を嘲笑わずにはいられませんでした。
涼太「みっちゃんらし~~~(笑)。ぜーんぶ自分のためだ、これ以上ないくらいみっちゃんらしい。君は、自分を肯定することに関しては天才的だね。君が誰かに恋をしていたように僕も(君に)恋をしていたことに気付かなかった? 僕にも気持ちがあるんだよ。そしていま、僕の気持ちは、みっちゃんのことは、それほど。みっちゃんもそうでしょ、最初から。みっちゃんはまだ本当に人を好きになったことないんじゃない? 二番どころか一番も。かわいそうだね。ぼくでも、一番好きな人と結婚できたのに」
一気にまくしたてた涼太の勢いに圧され、「わ、わたしには、涼ちゃんの愛は、優しい暴力だった。わたし、これから、あなたのことを傷つけたことを忘れずに生きていこうと思います。本当に、ごめんなさい」と謝罪した美都ですが、いや絶対すぐ忘れるって。そーいうもんだって。涼太が右手を差し出し、握手をして微笑みあって彼らの関係は終わりました。美都が最後に思ったことは、「ああ、でも私、この手は本当に好きだった」。