連載

「ストッキングを履いてきてください」脚フェチ&クンニ自慢男との邂逅

【この記事のキーワード】
子宮にちんぽが届くまで

果たしてちんぽは届くのか。イラスト/大和彩

 先日会った男が「女は子宮で感じる」なんていってやがった。馬鹿いっちゃいけない。女は足を舐められりゃ足で感じるし、股を舐められりゃ股で感じる。そして子宮では……特になにも感じない。

   *   *

 よう、また会ったな。子宮だ。

「子宮とちんぽをジャストミート計画」の活動・初となる男性とのアポイントメントは、セックスなしという結果に終わった。性交前の居酒屋MTG(ミーティング)では、両者間のフェラチオに対する見解の食い違い、さらには「ちんちんを見てくれ」と主張するマコトと「見たくない」という夢子との対立が見られた。会は修復不可能なほど険悪な雰囲気に包まれ、マコトは走って逃げた。

 がんばったものの狙ったリザルト(結果)を得られず、夢子は半泣きだった。しかし、ただ家で寝ていた状態から、街へ出て男と会うというアクションを取ったことは評価できる。ははは、そう落ち込むなよ夢子。なんせ10年もブランクがあるんだから、一回目からうまくできなくて当然だ。

 むしろ失敗したことは、飛び上がって喜ぶべきだ。なぜならPDCAを回す材料ができたのだからな。

Plan(計画):
・子宮とちんぽをジャストミート

Do(実行):
・安全そうな婚活サイトに登録
・サイトで知り合ったマコトとMTG

 このPlanDoではセックスできなかったのはなぜか? さあ、いっしょに考えようじゃないか。

Check(評価):
・丁寧なメッセージ交換がとても嫌だった
・事前の飲みの席でいい争いになってしまった

 この評価に基づいて、今後の活動においては以下に気をつけることにした。

Act(改善)
・いま登録している安全が売りの婚活サイトよりも、出会い目的のサイトのほうが自分には合ってるのでは?

早くしないと…焦る気持ち

 歯科医での定期検診を相手にチェックすることは、もう夢子の頭になかった。虫歯のないマコトに対してもアレルギーが出てしまったのだから。もう歯などという枝葉末節を気にするフェーズは過ぎている。夢子が外出不能になるであろう、ピル服用停止の日まで2週間を切っていた。早く。早くしないと期限がきちゃう。

 夢子はネットを検索して見つけた即・出会い、即・セックスを謳った怪しげな出会い系サイトに登録することにした。インタフェースの黒い背景に、赤や緑の文字が毒々しい。前回使用したアプリは、男性がメッセージを受け取るには月額費用が発生していた。婚活を目的としておらず、ゆきずりのセックスだけを目的とした男女が集うこちらのサイトは年齢認証のための身分証明提出もないし、使用は男女ともに無料。「今日〇時からどこそこで会いませんか?」といったメッセージが飛び交っている。

 まさかこんな恐ろし気な見た目のサイトを自分が使うとは思ってもいなかった。だけどここなら、たいした手続きもなくパッと会ってサクッとちんぽを拝借できるのではないだろうかと期待できた。

 さっさとしなきゃ。この、こみ上げるような焦りはどこからくるのか、夢子には謎だった。ふと我にかえると「自分、なにやってんだぁ?」と思う。けど次の瞬間また「急げ急げ」という声に支配されてしまう。かつて感じたことのないような焦燥感に背中を押されて、サイトから感じる恐怖を飲み込み、登録した。

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大和彩

米国の大学と美大を卒業後、日本で会社員に。しかし会社の倒産やリストラなどで次々職を失い貧困に陥いる。その状況をリアルタイムで発信したブログがきっかけとなり2013年6月より「messy」にて執筆活動を始める。著書『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』。現在はうつ、子宮内膜症、腫瘍、腰痛など闘病中。好きな食べ物は、熱いお茶。

『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』