少子化の原因は恋愛結婚にあると論じる人もいたりしますが、ロマンティック・ラブ・イデオロギーに染まって育った私たちは、生涯を共にするパートナーは自分で決めたいし、できれば好きな人と結婚したいと願う人がほとんどでしょう。でももし、「好きになるべき人」「好きになってはいけない人」を国に一方的に決めつけられてしまう世界があったとしたら――?
7月からTVアニメが放送中の『恋と嘘』。ムサオ氏の同名漫画が原作の作品です。この世界では、満16歳になると政府から将来の結婚相手が通知される、超・少子化対策基本法(通称:ゆかり法)が施行されています。国は国民の遺伝子情報を分析・把握した上で、最良の組み合わせで結婚相手を決めているので、生まれてくる子どもの能力向上も見込めるとか。遺伝的に幸せが保証されている、というワケです。
でもこのゆかり法、国が決めた相手以外との恋愛が禁止されてしまっています。人権をまったく無視している制度ですね(とりあえずはスルーしましょう)。そんな世界の中で恋をしていく少年少女の姿を描いたのが、この『恋と嘘』です。
ゆかり法によって演出される禁断の恋
この物語の主人公男子・根島由佳吏(ゆかり)には、高校生になっても想いを寄せる初恋の相手がいました。クラスのマドンナの高崎美咲です。彼女に想いを伝えたいと思う由佳吏でしたが16歳の誕生日、すなわち政府通知の時が刻一刻と迫っていました。
物語のキモでもある政府通知ですが、16歳という年齢で結婚相手を通知されるのは、なかなか酷だなぁと思います。高校生といっても、中身はまだまだ子どもです。そして、個人差はあるにしても、恋愛を含めこれから楽しいことが待っている世代。この世界の高校生たちも国が勝手に結婚相手を決めることに「おかしい」と言っていました。
前述の通り、ゆかり法は「人権がなさすぎる」制度なのは確かです。現実世界でこんな法律があったら、筆者だったら日本から逃げますね。恋愛を禁止するってトンデモない。というか、16歳で知らない異性を結婚相手として押し付けられるって結構怖いですよね。
由佳吏もゆかり法については否定派です。だって好きな人がいるから。そんな彼は16歳の誕生日の前日、美咲に想いを伝えようとします。やっとのことで自分の想いを伝えると、実は美咲も由佳吏のことが好きだったと判明。めでたく両思いです。美咲は積極的で、自分からキスを提案します(キスシーンは糸を引いててなかなかエッチでした)。しかし、無情なことに政府通知にあったパートナーの名前は、別の女性でした。
両思いになったにもかかわらず、結ばれることも叶わないなんて、あまりにも可哀想すぎますが、このゆかり法があることによって、由佳吏と美咲は禁断の恋に突入。国家が介入した『ロミオとジュリエット』みたいな感じでしょうか。そこに2人の恋に協力的な由佳吏のパートナーに選ばれた真田莉々菜(美少女)や、なんだかワケありそうなイケメン・仁坂悠介が加わって、さらに物語がごちゃごちゃ絡み合いそうな予感です。
しかし、ゆかり法は同性愛者に対してどのような対応をしているんでしょうかね。結構気になるポイントです。この作品でも、由佳吏の友人である悠介が原作だとちょっと由佳吏のことが好きそうな感じな素振りを見せるんですよね。そんな彼にも国家は女性の結婚相手を押し付けるのでしょうか。というかゆかり法、違反をしたらどんな罰則があるのかとかまったく明らかにされていないんですよね。そのあたりも物語が進むうちに判明していくことを期待します。
この物語では、ゆかり法で結ばれることを“科学の赤い糸”と呼んでいました。科学でななく“運命の赤い糸”で結ばれたはずであろう由佳吏と美咲がどうなってしまうのか、見届けたい作品です。
■『恋と嘘』
http://koiuso-anime.com/