
果たしてちんぽは届くのか。イラスト/大和彩
子宮を取ったら、女じゃなくなるなんて思っていないか?
人は女に生まれない。
女になるんだ。
* * *
よう、また会ったな、子宮だ。
「子宮とちんぽをジャストミート計画」の活動2度目となる男性とのアポイントメントは、またしてもセックスなしという結果に終わった。「クンニが痛い」という夢子のフィードバックに対する男性のレスポンスは「怒り」であった。男性は奇声をあげホテルの備品を蹴り上げたのち、走って逃げた。デジャブじゃないぞ。
この計画が始まってから、夢子の膣には、いまだ誰のちんぽも入っていない。
まあ、俺の意見をいわせてもらえば、前回も前々回の男も、セックスパートナーを探す前にアンガーマネジメント講座と女性のエスコート講座を受けた方がいい。子宮としてセックスできなかったのはたしかに残念だけれど、あのようなちんぽと無理に性交する必要はないさ。
そう、我々の目標はいたってシンプル。セックスし、後腐れなく別れること。今回は我々の狙いとは真逆の結果になってしまった。いつもどおりPDCAを見直そう。
Plan(計画):
・子宮とちんぽをジャストミート
Do(実行):
・出会い目的のサイトに登録
・サイトで知り合ったQとMTG
Check(評価):
・セックスできなかった
・険悪な状態で別れたQがストーカー化したらとても嫌
10年間の引きこもりを超え、決死の覚悟をもって知らない男性と会ってきたわけだが、いまのところ結果は芳しくない。ただでさえ不安に駆られやすい夢子だが、今回の件はかなり堪えたようだ。Qに自分の居場所を突き止められたら嫌なので、ヤリ目サイトのアカウントも消してしまった。
「男の人怖い。出会い系も怖い。昨今では女性が女性にサービスするレズビアン風俗というものがあるらしい。そこに行こうよ」
布団をかぶったまま呻く夢子に俺は断固反対した。
「レズビアン風俗は社会的に意義のあるとてもよいところだが、お前にかぎってはちんぽじゃなきゃダメだ!」
「なによ、子宮のわがまま! 」
「消えてゆく俺の最後の願いだ。これだけは……頼む」
夢子は俺の言葉にちっと舌打ちしつつも同意した。ははは、泣く子と摘出される子宮には勝てまい。
初めて知った、女性向け風俗の実態
とはいえ俺も、出会い系サイト以外の方法を検討することには賛成だ。加えて、ウブな我々だけで計画を進めるのにもそろそろ限界が来ている。自力で行ったことをベースに、そろそろ外部コンサルタントの意見を募る時期だろう。我々は以下の改善策を実施することにした。
Act(改善)
・出会い系サイト以外のチン・ポテンシャルを探る(女性用風俗など)
・誰かに相談する
そのころ夢子は「舐め犬」という活動をしている人々の存在を知った。詳細はよくわからなかったが、どうやら「女性にご奉仕する」というスタンスでクンニをする人々らしい。女性に奉仕したい欲求のある人なら、男性アレルギーは発動しないかも? 夢子は期待した。
そこでネットで発信している舐め犬ひとり人にメールを送った。早々に返ってきた返事にはこうあった。
「アンジェリカさんの身長・体重はどのくらいですか? 僕はモデル体型の美人がタイプです。事前にお茶をご一緒して、その気になれないときはその場で解散しましょう」
モデルばりの美女でないかぎり「ご奉仕」する気にならないということか。この舐め犬さんはお金を取らない。個人の趣味として行っているだけとのことだった。それであれば仕方がない。自分はモデルじゃないから舐め犬さんには会ってもらえないだろう、とあきらめた。
一方、女性用風俗はどうだろう。調べてみたところ驚愕の事実が発覚した。