連載

【官能小説】セミダブル千夜一夜/第六夜 犯された寿司

【この記事のキーワード】
(C)河井克夫

(C)河井克夫

  一週間ほどして、またしぇー子は家にやってきた。驚いたことに、前回、らー子を連れて家にやってきたときのことを、しぇー子は全く覚えていなかった。泥酔していて、らー子を連れて俺の部屋に来たことまでは覚えているが、それからの記憶がなく、気がついたら自分の部屋に帰ってきていたという。その後らー子とも話をする機会があったが、らー子に至ってはもっとひどく、俺に会ったことなどはかけらも覚えてないとのことだった。

「しぇー子ちゃん、笹王さんと友達なの? いいなーって言われたよ。ホントに覚えてないみたい。笹王さん、印象薄いんだね。」

 俺は笑った。

「ねえ、あたし変なことした? 笹王さんに、お話してってお願いしたことだけ、なんとなく覚えてるんだけど…」

 そっちか、と思って俺は驚いたが、あの夜のことは、俺にとっても不都合なものなので、忘れていてもらってちょうどいい。

 しぇー子が本当に覚えてないようなので、俺は調子に乗って、言った。

「変なことは別にしてないけど、俺とセックスしたよ。」
「うそ。らー子は?」
「家ついてすぐソファーで寝ちゃってた。」
「えーまじで? それはやばいな…」

 しぇー子は顎に指をあてて考え込むポーズをとった。

「覚えてないの? じゃあ、思い出すためにもう一度しよう。」と、しぇー子を抱き寄せて、キスをしようとすると、それを拒んで

「いや、やっぱしてない! だって」と言う。

「だって何。」
「あたし処女だもん。セックスしたらそのあとしばらく痛かったりするでしょ?」

俺は仰天した。「え、そうなの? 嘘でしょ?」

しぇー子は俺に向き直った。驚いている俺の目をしばらく見据えていたが、やがて、ふっ、と笑顔を浮かべ、

「うん、嘘。でも今のリアクションで、笹王さんの言ってんのも嘘だってわかった。」と言った。

 唖然としている俺に「ねえ、また着替え貸して。その前にトイレ貸して。」と言うと、しぇー子はそのまますーっと、トイレに立つ。

 戻ってきたところに着替えのTシャツを渡すと、しぇー子は、「おなか空いたなー。でも寝る前だしなー。」と言いながら着替えを始め、いつものようにベッドに潜り込んだ。そして、いつものように「ねえ、お話して。」と言うのだった。

1 2

河井克夫

漫画家、イラストレーター。官能小説の挿絵を描くのが夢だったので、ご指名いただいて光栄です。近著「女神たちと」「久生十蘭漫画集」(ともにKADOKAWA刊)

twitter:@osuwari

バーキン滝沢

ライター。3度の飯より占いが好き。牡羊座、四緑木星の水星人マイナスです。