
(C)緑丘まこ
私がかつてヤリマン全盛期だった頃。
意外と私は、性病知らずだった。
これは二十歳くらいの頃だが、当時同じくヤリマンだった女友達の間では、クラミジアやらトリコモナス腟炎などの性病に感染しまくる人が続出していた。そんななか、私だけはなぜかセーフであった。それも現在にいたるまで。
そう。私は潔癖症である。
ヤリマンのくせに?
そう思われるかもしれないが……。
粘膜の接触がこわいのだ。
唇もまんこも粘膜なので、行きずりの男性と接触するなんてとんでもない!
なかにはセフレでも唇を許していた男性もいたが、そんなのはまれで、大抵はまんこ許して唇許さず状態を貫いていた。そのまんこも当然コンドーム越しでなければ許可は出さない。
私の豊富な経験人数やヤリマントークを聞けば、大抵の人は
「性病あるんじゃねーの?」
といったリアクションをとってくる。
しかしこういう「ヤリマン=性病持ち」と決めつける人の方が実は性病になってもおかしくないセックスをしていたりする。
「今までの彼女とは全員生だったぜー! ゴム気持ちよくないもん」
などとドヤ顔で言うのだ。わたしはすかさずつっこんできた。
「その今までの彼女全員と生でやってた方が危ないでしょー」
しかしまたもやおきまりのセリフで返ってくるのがこれ。
「付き合ってた彼女みんな遊び人じゃなくて超真面目で純粋な子しかいないから大丈夫ー」
おいおい、真面目だったらそもそも生セックス断るだろ、と心の中にとどめて
「じゃあ、その生セックスを許してくれてた彼女が以前付き合ってた元彼がヤリチンだったら? こわいよね〜」
と秒速でつっこんでおくと、KO、これでどんな男も反論なしだ。
私は、マイコンドームを必ず持っている。近所の薬局でもちろん自分で購入するのだが、常にマイコンドームを自宅にきらさない状態にしている。
ただやるためだけのお互い性欲発散したいだけの関係の男に
「フェラしてよ」
と言われようものなら
「いや、粘膜同士の接触はよくないから」
と全力で断っていた。もちろんキスも同じだ。
「ええっキスもだめなの?」
と言ってくるヤリチン男がほとんどだが、その度に
「キスだって唇が粘膜なんだから生セックスと同じくらいリスクあるのよ。お互いのためにやめましょう」
と空気がしらけそうな説明を平気でしていた。
「おまえ 、おかしい」
苦笑いする男もたまにいた。
しかし好きでもない男に変人に思われてもいいからセーフティセックスしかしたくない。その場の一瞬の雰囲気より、その先の安全を優先した、ただそれだけである。
実際、クンニされて性病になった女の子を知っているし、反対にフェラされてちんこが腫れた、という男性の話も聞いた事がある(なんの性病かまでは記憶にないが)。
唇だって立派な粘膜。
誰が許すか!!!
これが、私の恋愛じゃない男とやる時のセックスのルールみたいなものだった。
こんなムードもなにもないさめた機械的なセックスしかしない私が恋愛したらどんなセックスをするか……?
現在、付き合って一年半になる最愛の彼氏のサトル君がいる私だが……
愛する男の人とのセックスというのは、もう今まで遊びまくってきたゴミ捨て場みたいなセックスとは全く違う。
唇だって許すし、フェラだってする。
それにこんな時も………
サトル君はたまに早漏である。
数日間のセックスレス後、待ちに待った久しぶりのセックスにも関わらず、秒速でいかれた時には…………
「よしよし、それだけ私のおまんこが気持ちよかったのね。嬉しい♡」
と愛おしくて仕方なくなりサトル君を優しく頬ずりしてしまう。
反対に、なかなかいかずにセックスしている時は
(大丈夫かな? サトル君疲れて呼吸困難になって倒れないかな?)
と心配になり
「無理していかなくていいよ。休んでいいよ」
という気遣いまでもてる。
「いや、ただ気持ちいいからイクの我慢してるだけ」
と、その度私の心配とは裏腹の拍子抜けする返事がかえってきたりするのだが……。
ともかくも超性欲が強い私が最近は相手の事を優先できるようになったのだ。
付き合ったばかりの頃はやりたくてやりたくて仕方なかったのに、最近はセックスするよりセックスする前に裸で抱きしめあったりキスする時間の方が幸せで、かけがえのない時間に思える。
そしてこれからセックスする、という時にサトル君を抱きしめながら
「私の大切なベビ、ずっとずっと長生きしてね。一緒に仲良くおじいちゃんおばあちゃんになってもいようね。ううん、あの世へ行ってもずっとよ……」
みたいなセリフをならべ、幸せを噛み締める(文字にすると自分でもなんかこわい)。
ちなみに「ベビ」とはサトル君の呼び名である。身長182センチもあるサトル君だが、私にとっては赤ちゃんのように可愛いくて愛らしくて仕方ないのだ。
裸になってる時は、生まれた時の姿だからなお愛おしく思えて(生まれてきてくれてありがとう)と誕生日でもないのに感謝してしまう。
以前ヤリマンだった頃は、セックスする前に抱き合ったりキスしたり前戯などもあり得なかった。頭の中は、ただちんこちんこちんこ畑だ。
サトル君自身、驚いている。
「あれー?(笑)付き合ったばかりの頃はキスとか抱き合ったりするの嫌いって言ってなかったっけ?(笑)」
そうサトル君に言われる度に自分でも変化に驚くのだ。
今ではあの全身はまんこみたいな強欲女の私が、セックスの時に
「さて、そろそろ挿れようかな」
とカチンコチンのちんこを挿入されそうになると
「まだよ〜。もっとギュウして(抱きしめて)よう」
とちんこより抱擁をねだるのだ。
ほんのちょっと前までは
「早く挿れてよ」
の嵐だったのに。
サトル君を知れば知るほど、大好きになり愛が深まる。
ヤリマンだった頃、セックスは単なる性欲をはきだす行為にすぎなかった。
それが、最愛の人と出来るようになった今、セックスほど神聖なものはないのでは? とさえも思う。
お互い生まれたまんまの 姿で溶けてしまいそうなくらい抱き合って一番距離が近くなる時間だ。
ヤリマンだった頃の私に言いたい。
セックスは本当はゴミ捨てじゃないんだ。
捨てるのではなく、得るものだよ、と。
サトル君とセックスをする度に、愛を得て幸せになる。
サトル君に出会えて本当に本当によかった。
ずっとゴミ捨て場に埋もれていた私を綺麗に洗い流してくれてあたたかく包んでくれる。
サトル君ありがとう。そして………
…………セックス最高。

(C)緑丘まこ