
Queerライター・コウの「変態読本」
messy読者のみなさまは、ストリップという文化に親しみはおありでしょうか。
私は大学時代に、元踊り子さんの友人ができたことをキッカケに、年に数回しか行けてないですが、たまに劇場にストリップを見に行き、猛烈な感動を度々いただいております。また、劇場の雰囲気やしきたりなんかも分かり始めると面白い……そして、ストリップの起源や歴史を調べてみると、これまた面白いのですが、そこから書き始めると長くなるのでまた別の機会に書くとして(いや、それを先に書くべきか……? とは思いつつ)、今回はそんなことより、いつか記事にしないと! と連載を始めたころから思っていた「BLストリップ」について書かせてくださいませ。
最近、腐女子層にもすっかり固定客を獲得しており、ストリップ業界にも馴染んできたように見えて、いい頃合いなのです、BLストリップ。
そも、BLストリップとはなんぞや
これね、本当に見てみるまでは、何とも想像のしにくい矛盾だらけの単語ですわよね。しかし、内容は文字通り、男装した踊り子さん2人以上が絡み合うグループショーです。
具体的には、まず全体の流れにハッキリとストーリーがあります。BLの漫画しかり、アニメしかり、同人誌しかり、とにかく何らかのラブストーリーになっていないとB(ボーイズ)のL(ラブ)になりませんものね。そして、もちろんストリップなので“脱ぎ”の過程を見せていく場面はしっかりと用意されていて、“責め”が“受け”の服をネチッとエロく脱がせていくというのがその内実です。
ちなみにショーの間、“責め(の踊り子さん)”が終始脱がないという展開のものもあります(でもショーが終わったらちゃんと脱いで出てきてくれるのでご安心を)。これはある意味斬新。セリフはありませんが、ある種の演劇を観ているような気分になる方もおられるかも。
このBLストリップなるもの、本来「女性の身体」を資本に“色っぽい”“艶っぽい”魅惑のパフォーマンスを繰り広げるストリップというものに対して(男性のストリップもありますが、日本で普及しているストリップ=女性のストリップというテイ堤で、今回は話を進めさせていただきます)、色々と転倒している非常に不思議な文化だとは思いませんか? しかし、そこには抗えない魅力があるのですね。
まず、ストリップの雛形はしっかり押さえている
男装だろうが、BLストーリーだろうが、やはりストリップ。“きちんと”エロく見せるための鉄則がもちろん前提にあります。衣服を脱がせる(脱がされる)ことに時間を割くシナリオ、「照れる・妬ける・興奮する・絡む」というエロイベントだらけのストーリー、観客の欲情を煽ってくれます。
たとえストーリー性のない演目でも、ストリップ(だけでなく、パフォーマンスというのは基本的)には、山あり谷ありというか、起承転結というか、喜怒哀楽というか、分かりやすく見せ場が設定されています。例えば、最後の1枚を脱ぐ瞬間とか、その踊り子さんにしかできないポーズをとった瞬間(フィギュアスケートのデニス・ビールマン選手がビールマンスピンする瞬間に近いイメージ?)とか、アソコが見えた瞬間とかとか。
それらの見せ場は、観客の歓声や拍手はもちろんのこと、リボンさん(と呼ばれる、見せ場毎に、クラッカーの中身みたいなリボンの束を舞台の脇から一瞬で投げて一瞬で回収するプロっぽい一般人というかファンの方が、大抵の踊り子さんには付いています)の活躍シーンでもあります。BLストリップもしっかりそこは抑えているので、リボンさんも大活躍! できる演目なのです(グループショーの場合のリボンさんってどうやって決めてるのだろうか……というのは今度劇場に行ったときに是非リボンさん捕まえて聞いてみよう)。
次に、なんと言っても“トランス”という転倒の魅力
古くは歌舞伎、近現代においては宝塚など、長きに渡り日本では、ある種の“トランス”芸能が人気を博してきました。AV業界の友人と話していて「男性向けレズものが一定の人気を誇り続けているのは、男性視聴者がトランス(女性の登場人物に自己投影)して女性と絡む感覚がウケているのではないか」と聞いたのも、記憶に新しいところです。確かに、漫画などの二次元文化においても、男装もの・女装ものって人気ですよね。
かく言う私も、宝塚は結構好きで、男装萌えは非常に頷けるものがあります。
ちなみに、客層も新ジャンル
このBLストリップを目当てに来るお客さんの中には、20代~30代くらいの若い女性客の姿をチラホラ見かけます。これには劇場の常連客であるオジサンたちも、ちょっとタジタジ……(笑)。もちろん、私のように「元々ストリップ好きで、BLストリップも見ているうちに好きになった」みたいな客層もそれなりにいると思いますが、togetterなんかには「BLストリップがキッカケで劇場に足を踏み入れたけど、他の踊り子さんの興行も見ているうちにストリップ自体にハマった」というような腐女子たちの意見もまとめられています。
ストリップファン歴の浅い私のような観客でも、初めてのお客さんでも、エンターテイメントとして楽しませてくれる、BLストリップ。前述したように、新世代の女性たちが劇場に訪れるなど、新規ファンを開拓している画期的な試みであります。しかしそもそもBLストリップという演目、劇場常連のオジサンたちは楽しめているのでしょうか?
どうやら大丈夫なんじゃないでしょうか。BもLもチンプンカンプンな常連のオジサンたちですが、この演目を見るときも何だかんだでお目目キラキラな方がたくさん! 考えてみれば、普段一人でストリップの演目をこなす踊り子さんたちが、対人で乱れる姿というのはかなり有難いパフォーマンスでもあるのかもしれませんね。
私は自分が劇場に通い始めたころ(BLストリップが出てくる以前ではありましたが)、若い女性客がフロアにいることで、常連さんの肩身を狭くさせてしまっているかなぁと心配したものですが、劇場やストリップのこと、ポラ(公演後に踊り子さん単体or踊り子さんとのツーショットをポラロイドカメラで撮影できるサービス)の並び方やルールなど、色々聞いてみると、常連さんは楽しそうに色んなことを教えてくれます。
そんなこんなで、これまでになく幅広い客層を獲得しているBLストリップ、劇場の客席が老若男女入り混じっていて、独特の雰囲気になるのも、また楽しむポイントになるのではないでしょうか。
踊り子さんは変幻自在
さて、最後にオススメの鑑賞法といいますか、BLストリップをされている踊り子さんを、BLストリップ/一般的なソロパフォーマンスの両方で是非見ていただきたいというご提案です。
BLストリップを興行されている踊り子さんたち、もちろんソロパフォーマンスも現役でされています。ソロパフォーマンスでは踊り子さんたちの根底にある「ストリップ愛」みたいなものがBLストリップよりも分かりやすくダイレクトに伝わってきたりします。BLストリップでハマった踊り子さんがいたら、ソロパフォーマンスを見に行けば二人っきりでポラが撮れたり、いいことは沢山あります。また、なんと言っても、BLストリップのときとのギャップ萌え!! それはそれは、二度美味しい鑑賞法ですよ。
ストリップというカルチャーは、まだまだ廃れません。劇場に行ったことない人も、是非足を運んでみては?