連載

演劇ユニット「ブス会∗」による、谷崎潤一郎作品の男女逆転版朗読劇。若い男を愛でる女のギシギシした想い

【この記事のキーワード】

 しかしナオミは学習には向いておらず、音楽の専門学校へ進学しますが素行は悪くなるばかり。世話のやける息子だと思えばとナオミの望むままに贅沢をさせますが、収入も追い付かなくなります。慶應大学の音楽サークルで知り合った浜田(山岸門人)と渋谷の有名ライブハウスでバンドのライブをするからとねだられ涙を見せられると、母親の遺産から捻出することを約束。「僕の洋子ちゃん、かわいい洋子ちゃん」と顔中にキスしながら感謝を示されますが、衣装代もせびられてしまいます。

Erotic_Stage14b

写真:宮川舞子

 朗読劇は本を読む体裁ではありますが、共演者との目線のかわし方など演技も盛り込まれています。彼の女性関係、ときには男性関係に、母としての愛でもあるからと悩まされつつも、ナオミを見つめる安藤の上目づかいの色っぽさは、ナオミへの感情が多くの種類の愛を含んでいることを、なによりも雄弁に語っていました。

 洋子は、ナオミの周囲の女性のInstagramをチェックし、買ってあげたGUCCIの腕時計を身に着けた彼の腕が映り込んでいるのを見てナオミのオンナを特定。彼を家から叩き出すものの、恋しさに身を焦がします。

同世代だからこその共感

 原作のあらすじの本歌取りは非常に緻密ながら、唯一違うのはその後のラスト。原作が主人公・譲治の源氏物語的な男の妄想の果て、と感じてしまうのに対し、「男女逆転版・痴人の愛」の結末の、ナオミへの想いが心にギシギシとくるのは、筆者自身が洋子と同じ、独身生活に飽きがきて出産のリミット時期も近づいている世代の女性だからでしょうか。

 タライにお湯をはってナオミの手足を洗ってやるなど、一部の描写やセリフは約100年前の作品である原作の大正時代の香りを残したまま、違和感なく現代日本の地名や固有名詞を織り込む巧みさも、「最高!」の一言でした。

「男女逆転版・痴人の愛」は今年の12月8日~19日に、本公演として東京・こまばアゴラ劇場で上演予定。今回の朗読劇での得たものを生かし、さらにブラッシュアップさせた公演を予定しているとのことです。

Infomation

ペヤンヌマキ×安藤玉恵 生誕40周年記念ブス会*
『男女逆転版・痴人の愛』

脚本・演出:ペヤンヌマキ
出演:安藤玉恵 福本雄樹(唐組) 山岸門人
日程:2017年12月8日(金)~19日(火)
会場:こまばアゴラ劇場
詳細:ブス会*公式サイト http://busukai.com

backno.

 

1 2

フィナンシェ西沢

新聞記者、雑誌編集者を経て、現在はお気楽な腰掛け派遣OL兼フリーライター。映画と舞台のパンフレット収集が唯一の趣味。

@westzawa1121