今に始まった話ではないが、若い女優たちがドラマや映画などで「お色気シーン」に挑戦するたび、そのシーンについてだけとりわけ大きな注目を浴びる。最近だと、蒼井優(31)、佐々木希(29)、有村架純(24)などがその洗礼を受けている。
たとえば10月28日より公開される映画『彼女がその名を知らない鳥たち』に出演している蒼井優の喘ぎ声。<最低な女と男が繰り広げる共感度0%、不快度100%の愛の物語>を描いた同作で、蒼井は複数の男性との濡れ場を演じる。ここで、蒼井が相手に応じて喘ぎ声を変えるという演じ分けをして、試写会で絶賛を受けている……との週刊誌記事が目に留まった。蒼井は真剣にその役を演じただけだが、結果として取り上げられたのは「蒼井優の喘ぎ声がすごい」という感想でしかないのがなんとも……。
今秋よりHuluで配信されるオリジナルドラマ『雨が降ると君は優しい』で、佐々木希が“セックス依存症”の妻を演じることも、やたらと話題になっている。脚本家・野島伸司(54)が3年を費やして書いたという渾身のドラマなのだが、「“セックス依存症”の佐々木希」ばかりが取り上げられ、濡れ場の有無だけに視線が注がれる状況。
10月7日公開の映画『ナラタージュ』でも、強調されているのは有村架純(24)のラブシーン。この映画で有村は、坂口健太郎(26)や嵐の松本潤(33)と絡んで、喘ぎ声、恍惚の表情をみせ、背中の露出も“大胆”なのだという。
他にも、現在放送中のドラマ『僕たちがやりました』(フジテレビ系)では、元AKB48の川栄李奈(22)がメインキャストのエロ可愛い女子高生役として、彼氏とのセックスシーンや、主演の窪田正孝(28)のアソコを触るシーンなどが注目の的に。
17年1月から開幕したミュージカル『キャバレー』で主演を務めた長澤まさみ(30)が、肌の露出の多いセクシー衣装やセクシーな振り付けばかりが取り上げられたことも記憶に新しい。実際に観劇した人々からは「初挑戦とは思えない歌声と存在感に釘付けになりました」「長澤まさみさんの力強い歌声に心奪われました」「歌声が想像以上に力強くて驚いた」と、エロにフォーカスしない感想が上がるものの、マスコミに書かれ伝播していくのは“いかにエロいか”の部分に偏っている。
女優がフィクションの誰かを演じるにあたり、作品によっては下着姿や性行為の瞬間が描かれるものもあり、それを“女優として”演じるのは仕事柄あたりまえのことだ。さらに言えば、作中でどのような意味合いを持つシーンかによって、それが「エロなのか否か」も異なってくるのに、どういうわけか一律に「脱いだ=エロだ」と評される側面がある。たとえば性暴力被害に遭うシーンを演じた場合でも「衝撃的な体当たりのお色気」として宣伝されたり、だ。
恋愛映画であれば当然、恋愛の過程にセックスは入るものだし、恋愛描写に特化しない作品であっても生活の一部として性行為や裸のシーンを用意することもあろう。女優たちは特におかしなことをしているわけではないのに、服を脱いだり性行為関連のシーンを演じるとそれをウリにした宣伝がなされていく。「脱ぐ=演技派」というよくわからない基準もある。なかなか不思議なことである。
(ボンゾ)