
(C)緑丘まこ
クラブ。
ヤリマン時代の私にとってそこはオアシスのような場所であった。
飢えに飢えまくったまんこの渇きを潤してくれるイケメンのちんこを見つける場所、それがクラブである。
しかし、日によっては、イケメンを見つけるどころか、デリカシーのない最強にイタい男達の相手をしなければならない夜もあった……。
「クラブに何しにきたの?」
キモ男に、冷たい氷を投げつけるように言い放たれた夜の話をしよう。あれから何年も経つのに今思い出しても根に持つくらい怒りが込み上げてくる。
頻発するクラブ痴漢
私はあの頃上京したてでまだ友達がおらず、その夜は渋谷のクラブに一人で遊びに来ていたのだが……。
「ねぇねぇ一人?」
そう話しかけられ、振り向くとそこに立っていたのはブサイク芸人ランキング上位として有名なI氏に激似の男(Iと呼ぼう)と、いたって普通の可もなく不可もない容姿の男のふたり組。
(微妙だな)
即座にそう判断して、そっけない反応を返したのだが……
さわっ
「はっ……!?」
それは突然。暗闇のどさくさに紛れてIに思いっきり胸を揉まれる。
「何すんねんっ!」
思わず関西弁で声を荒げる私。キッとすごい形相でIを睨みあげる。
怒り狂う私に、Iが言った言葉がこれだ。
「クラブに何しに来たの?」
そう冷たく言い放って去って行った。
私ぽかーん。
今思うと追いかけて店員に突き出せばよかったのかもしれないが、あまりのショックで文字通り本当に固まってしまったのだ。
クラブは、痴漢がかなり多い。暗闇でそれも混雑した密室で、正直、誰に触られたか分からず一瞬の不快な出来事として片付けてきたが、あんなに堂々とそれもキモ男に痴漢されて、おまけに嫌味ったらしい言葉を言い逃げされたのは最初で最後である。
どういうパターンにしろ、クラブだろうと痴漢は犯罪であることを忘れてはならない。
私も、イケメンと出会ってちんこチェックする際は必ず了承を得てからで決して無理やり触ったことはない。
ドヤ顔VIP席の男
お次はドヤ顔でこう言ってくる男が多すぎる、という話。
「VIP席とってるからシャンパンご馳走してあげるよ」
何故に上から目線? そして何故にクラブに来てまでVIP席?
私は正直、ドヤ顔VIP客が苦手である。
「ドヤドヤ? VIPで席とってる金持ちやぞ?」
と言わんばかりの自信満々な態度。
もしもっと腰が低い低姿勢で
「あの、VIPに席とってるんでよかったら一緒にシャンパンどうですか?」
と言われるならそんな悪い気持ちはしない。
しかし上から目線の偉そうな話し方のVIP客にばかり声をかけられるのは、オラオラ系のノリで接したとしても「VIP」と「シャンパン」のキーワードにつられてなびく女の人が多いのか、私がそういう風に見られるのか……。
某クラブのVIP客は本当の金持ちしかいない、とか金払えばいいわけじゃなく金と権力のあるすごい人しかVIP客になれない、とか言われているが、ヤるだけの男の地位とか経済力とか本当にどうだっていい。
クラブはヤリマンの私にとってイケメンのちんこ狩りをする場所で決してホステスとして働きにきたわけではない。金や権力などどうだっていいのだ。イケメンのちんこはクラブというダンジョンの中で一番のお宝である。良い顔とちんこがあれば、お金なんてなくっていいのだ。
そしてこの夜。あまりにもVIP客フィーバーでうんざりしていた私の目の前に現れたのが浅越ゴ◯さんの気をかなり強くしたような顔の男性だった。そして
「VIPなんだ俺。あ、VIP来てもいいよ。シャンパンご馳走するよ」
ドヤ感たっぷりに言われてうんざり度がとうとうMAXに達してしまった。
「はいはーい金持ち自慢お疲れ様でーす!」
とパンパンッと両手をたたいて一応は冗談ぽく交わしたつもりだったが、その瞬間VIP男は漫画のようにぴたっとかたまった。
そして次の瞬間、近くにいたバーテンダーに私を指差しながら耳打ちをはじめる。
「おい、この女をつまみだせ!」
的な……?
結果、VIP男性、店員に相手にされずふらふらと消えていった。
正直、この件は腹が立つというよりなんかすごいもん見てしまった、という感じである。きっと彼はご立腹で仕方なかっただろうが。
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