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『an・an』セックス特集で展開された「男性を傷つけるな!」キャンペーン

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 ほかにも無理に潮を吹かせようとする男性は女性に不評といいながら、「でも、そこを否定すると傷つく男性もいるので、伝え方には気をつけてほしい」といい、男性の自尊心を満たすための腰使いを提案し……。これって、「俺を興奮させて気持ちよくしてほしい!」という男性より、「俺を傷つけずに気持ちよくしてくれるのがベストだよね」という男性のほうが主流になりつつあるということ? 前者もイヤだけど、なんだか「日本、大丈夫?」感が強いです。

「男のエロス vs 女のエロス」は、AV女優の紗倉まなちゃん、男優のしみけん氏、サブカルの杉作J太郎氏の3人による鼎談ですが、杉Jさん飛ばしまくってます。「男が浮気をしたら、セックスに何か不満があるということだと思ったほうがいい」「(女性は相手の男性に対して)浮気をしたことを怒る前にセックスを磨け」「(体位を変えるときに)もしそこで女性に『ちょっとやめて!』とかって拒否されたら、もう立ち直れないかもしれない」……。

 それに対して、ふだんはトガッた文章や、甘いルックスとミスマッチ感のあるクールな観察力を見せる紗倉まなちゃんが、なんかユルく受け流している感じなんですよ。私、「えええ、これは鼎談ではなく、まなちゃんがしみけんさんや杉Jさんを持ち上げるトークなの!?」とガッカリ感に見舞われましたよ。現場でほんとうにそれを言ったかどうかはわかりませんが、まなちゃんがかなり「さしすせそトーク」をしているのにも気になります。

※「さすが」「知らなかった」「すごい」「センスいいですね」「そうなんだ~」で相槌を打つと男性が喜ぶ、とされる会話術。

男性よりも、まず自分を傷つけないように

 浮気の是非はここでは問いませんが、女の不倫は徹底的に叩かれるけど、男の不倫は「しょうがない」になってしまうという、近年よく見られるようになった非対称性が、まんまここにも表れているようでした。これも結局は、男性が傷つかないための構図ですよね。女性誌で男性を傷つけないようにしようキャンペーンを展開するって、私からすれば奇っ怪な現象です。

 グラビアでは関ジャニの横山氏だけでなく、エロメン東惣介氏も濡れ場を演じていますが、ビジュアルで表現されるセクシーな男性像と、誌面に出てくる「傷つけられたくない男たち」とのギャップが大きすぎ。でもね、ちゃんといるんですよ、セクシーな男性。それはセックス特集とは関係のないインタビューページに登場するアラーキーこと荒木経維氏。

「例えば女だったら、美人じゃなくたってその人の個性ってものがある。だから俺は、全部受けて立つ」
「今は老いを撮りたいね。美容雑誌とかはすぐ、若返ろう若返ろうって言うけど、そういうことじゃなくて老いていく魅力を感じてほしいよね、女にも。年を取って魅力的になっているのに、なんであんなつまらない青春に戻ろうとするのかね。今のほうがずっといいじゃない。老いていくことは美しいんだから」

 ひと言でいうと、しびれます。傷つけられたくないと怯える男と、こういう考えで生きている男。どちらとお手合わせ願いたいかというと、私の答えは決まっています。

 という残念感は随所に見られますが、「実は知りたい、ホントのところ。SEXあれこれQ&A」などは、勉強になることも多い内容として読みました。いま求められているのは、このように女性の心身、そしてライフスタイルに添った実用的な情報であることはたしかです。

 コミュニケーションで相手を傷つけないようにすることはもちろん大事です。でもだからといって、誌面で必要以上に「男性を傷つけるな」とくりかえせば、それは呪いになります。男性を傷つけるときらわれる、セックスもできなくなる。そんなメッセージを暗に発しているのですから。それよりも、まずは自分を傷つけず身を守りながら、そのうえで気持ちよくなれる術を教えてほしいな。それが女性誌の役割ではないでしょうか。

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桃子

オトナのオモチャ約200種を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。

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