連載

出会い系なのに男性と出会えない…。次の一手を打つ前に考察する「妥協できないポイント」

【この記事のキーワード】
子宮にちんぽが届くまで

果たしてちんぽは届くのか。イラスト/大和彩

 俺の宿主・夢子は来月、俺を摘出する。けどなあ……俺は思うんだ。「子宮摘出」ってなんかものものしいだろ。摘出のことは「夢子からの卒業」ということにするぜ。

*   *   *

 よう、また会ったな、子宮だ。

 いままで俺・子宮と宿主・夢子の二人三脚で進めてきたこの「子宮とちんぽをジャストミート計画」だったが、前回はキャリーという外部セックス・コンサルタント(夢子の古い友人)の助言によりハプニングバーを訪問した。しかし残念ながら彼女やバーのマスターのお力添えをもってしても、俺はちんぽに接近できなかった。

 おいおい、いったい全体どうなってるってんだ!? 夢子のやつ、このままずっと、どんなちんぽも寄せつけないつもりか? いままで泰然としていた俺ですら、焦っちまう。

子宮摘出まで、時間がない。

 俺たちには時間がないんだ。手術に備えて今週から夢子は、10年間、毎日服用してきた低用量ホルモン剤を断たねばならない。いままでの経験では、薬を1日でも飲み忘れるとあいつのホルモンバランスは崩れる。そうなると出血過多や体力・気力の限界で布団から起き上がれなくなるんだ。

 急げ、大量出血でまんこが血塗れになる前に! 夢子が動けなくなる前に! 俺が夢子を卒業する前に! 一度、ちんぽの顔を見せてくれよベイベー!

 そこで今回は、この活動を始めてからの全体の流れをふり返りつつ、PDCAを見直そう。

Plan(計画):
・「子宮を取ったらセックスで感じなくなるのでは?」「子宮を取ったら性欲がなくなるのでは?」「子宮を取ったら性感帯であるポルチオもなくなってしまうのでは?」などの恐怖から子宮摘出をためらっている世の女性に自身の経験を役立ててもらえるように、手術の前後で性的感覚が変化したかどうかを検証する。
・手術の前後にわたって継続的にセックスできるちんぽを確保する

Do(実行):
・婚活アプリとヤリ目サイトに登録
・サイトで知り合った男性2名とMTG
・ハプニングバー訪問

Check(評価):
・ネットで知り合ったいずれの男性ともセックスできなかった
・ハプニングバーにいた男性ともセックスできなかった

オトコに見える男性」は無理

 「できなかった」というか、夢子が「生理的に無理」と判断しやがったわけだが。これって、俺たちが自分のことをよくわかってなかったせいで起こったんだな。

 俺も夢子も、女性用風俗で女性客がルックスや歳で足切りされる事実を知り頭にきてたのもあって、忘れちまってたんだ。異性の見た目に関しては、夢子のほうが激しいこだわりを持つ、ってことを!

 いいか、夢子はカフェでサラリーマンの格好をした中年男性が隣に座ってるだけで、頭痛・吐き気を催すトラウマガールだ。そんな夢子が、エリートサラリーマン風のマコトやリーマンスーツを着たQと密室に入るのがそもそも無謀だったし、セックスなんてできるはずもない。ハプバーにおいては、夢子が自分の父親を連想してしまう、“オトコに見える男性”しかいなかった。こちらも夢子には無理だ。

 夢子はいつもいっていたーー「私は見た目で人を差別しない」。

 自分がそのような人間だと彼女は信じたかった。だが現実には、テストステロンをあまり感じさせないプリティ・ボーイじゃないと閨(ねや)をともにするどころか、同室にいることすらむずかしいんだよ、あいつは! 俺たちは、その事実と充分向き合えてなかったんだ。

 人を容姿で差別しないという理念はそのまま持っていればいい。だが、「セックスする」という目的遂行においては、トラウマが出てこない男性をしっかり選ぶ必要がある。たとえそれが見た目で差別しているようで心苦しくあっても、だ。

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大和彩

米国の大学と美大を卒業後、日本で会社員に。しかし会社の倒産やリストラなどで次々職を失い貧困に陥いる。その状況をリアルタイムで発信したブログがきっかけとなり2013年6月より「messy」にて執筆活動を始める。著書『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』。現在はうつ、子宮内膜症、腫瘍、腰痛など闘病中。好きな食べ物は、熱いお茶。

『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』