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出会い系ではなくSNSで性のお相手を募集したら、男性からの応募が続々と!

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子宮にちんぽが届くまで

果たしてちんぽは届くのか。イラスト/大和彩

 俺は摘出されるのは怖くない……その瞬間に立ち会うのはゴメンだけどな。

*   *   *

  よう、また会ったな、子宮だ。

 夢子のなかで、あることへの考え方が変化していた。ゆきずりのセックスに対するものだ。

 これまでの夢子は、ものすご~くぼんやりとだが、いろんな相手との一夜限りの契りは、結んではいけないと思っていた。それは、知らない異性とたくさんの性的なことをするとこれまでとは違う自分に一気に変身してしまうかもしれないと思い込んでいたからだ!

 変身後の自分は、きっと露出度の高い服を着、色気の塊のような存在になる。胸のサイズはダイナマイト、ダンスフロアに出たら「フー!」などと叫びながらお尻を振って踊らずにはいられない。毎晩がwanna make love なパーティ・ナイト、バカラのグラスは使い捨て…… ※注:あくまでも夢子のイメージです。

 そんな人に変身するなんて怖い。そもそも変身するという発想自体がおかしいが、なぜだかそんな考えにとらわれていた。マコトやQと会うことになったとき、ネットからの出会いということもあり安全性などいろんな怖さがあったが、実は、一番の恐れは自分が今までとは別人になってしまうかも、というものだった。

セックスで、人は変わらない

 だがマコト会ってもQとのMTGから帰還しても、まったく自分が変わった気はしなかった。まじまじと己の体を見下ろしてみても、そこには彼らと会う前の冴えない自分がいるだけだった。変身、してない! 夢子はホッとした。

 さらに、いままでは知らない人とホテルに行くことに対しても、ほんのりとした罪悪感があった。しかしそれもよく考えたら、大人同士が同意の上でしていること、何も悪いことをしているわけではない。夢子には夫も彼氏も子どももいない。相手の男性も独身・彼女なしに限定している。自分のコントロールが及ぶ範囲では、誰も悲しませず、裏切ってもいないはずである。

 夢子はセックスによって自分は何も損なわれないし、罪悪感を持つ必要もない、と考えるようになっていた。

 その週からピル休薬を開始した。様子を見ながら恐る恐る生活しているが、なんとか動けそうだったから、いよいよTwitterでセフレ募集だ。

 ハプバーのマスターに教えてもらったことを胸に「セフレを募集している、応募したい者は顔写真を送付してもらいたい」とツイートしたら、たくさんの男性から瞬時にリプライがあった。自分でアップしたものの「応募してくる男の人なんていないだろう」と半信半疑だったのでびっくりした。さらにほぼ全員が顔のわかる画像をきちんと添付しているのにも驚いた。

写真をホイホイ送ってくる男性たち

 ネット上の知らない人からセックスのお誘いがあるなんて、怪しいと思わないのだろうか? しかも写真までホイホイ送ってくるなんて、もし私がそれを悪用したらどうするんだろう? などと、その「怪しい誘い」の主は自分だということを棚にあげて夢子は思うのだった。

写真を送ってくれた男性たちの年齢は多岐に渡っていた。未成年者からも来た。当然お断りする。「既婚者ですがいいですか」と問うてくる者もいた。いいわけないのでそれもお断りした。そもそもこのプロジェクトは「女性に役立つ夢子になる」のが目的だ。結婚している男性とセックスするなど言語道断。不倫の片棒を担いで奥さんである女性を悲しませるのは本末転倒なのだから。

 最終的には30人近くからからありがたいお申し出をいただいた。にもかかわらず、写真で判断する限り、ご辞退せねばならない男性がほとんどだった。男がオトコに見えるという当たり前の現象が、夢子にとっては生理的に無理なのだから先が思いやられる。

 もったいない……。夢子、お前が募集ツイートに自分のタイプを書かなかったせいだぞ。

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大和彩

米国の大学と美大を卒業後、日本で会社員に。しかし会社の倒産やリストラなどで次々職を失い貧困に陥いる。その状況をリアルタイムで発信したブログがきっかけとなり2013年6月より「messy」にて執筆活動を始める。著書『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』。現在はうつ、子宮内膜症、腫瘍、腰痛など闘病中。好きな食べ物は、熱いお茶。

『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』