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セックス特集は誰のもの? フェアなセックス観を見せたあの雑誌に拍手を

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 みなさん、事件です! 「GLITTER」のセックス特集が、非〜常〜〜にいい内容だったんです。ここ2年のウォッチングでは「an・an」を軽く上回るヒドい内容でした。日本人女性は自分の大切な何かと引き換えに、幼稚な男性にセックスして“もらう”しかないんだ。大切な何かとは自尊心だったり、主体的な性感だったり、快感だったり。男性の意に沿って、しかも男性にはそうと気づかせず先回ってサービスするのがGLITTER流セックス。

▼2016年
「GLITTER」でセックスについて熱く語るノンスタ井上に、絶望しか感じない
▼2015年
セックスのため女はここまでしなきゃいけないの!? もうひとつのセックス特集

 ……だったのに! 今年は読んでいて気持ちがいいんです。うれしい裏切り。たとえば「フランス人に学ぶ ベッドバディのマナー」では、フランス人男性2人にセックス観についてインタビューしています。これまでも同誌のセックス特集で唯一の救いが、海外セレブのセックストークでした。セックスなんてしていません、という顔をしなければならない日本の(特に女性)芸能人に対して、ハリウッドセレブが堂々と性について言及する様には惚れぼれしたし、励まされました。

 フランス人男性のインタビュー記事では、行間から日本のセックスの不自由感が漏れてきます。かの国ではセックスにおいて男女は対等だと認め合い、互いに性的関係を維持するための努力をしています。それがなくなれば、一緒にいる意味がなという潔さ。ライフパートナー=セックスパートナーというのが基本なんですね。どちらかが破綻すれば自分の意志でパートナーチェンジしていい社会だとわかります。

自分ファーストなセックス

 日本はいったん公的なライフパートナーとして登録されると(つまり結婚)、その人とのあいだに性行為がなくなっても簡単にそのパートナーシップを解消できないし、セックスパートナーだけを外に求めれば「ゲス」とされます。となると、ライフパートナーとの生活を維持するには、自分が性的人間でいることをあきらめるしかない……。悲しいかな、これが現状です。フランスにはPACSもあり結婚制度も結婚観も大きく違うなかで単純に比較するのはあまり意味がないとは思いますが、それでもシンプルに「いいな〜」と思いますね。こんな発言もありました。

「彼女とのSEXは、彼女のことがよくわかるので、彼女のことを考えてやりますが、セックス・フレンドとのセックスは、自分が気持ち良くなるためのセックスです。フランス人の女性も同じ考え方だと思います」

 って、すばらしい。これは、ひとりよがりとはまったくの別モノです。人によってはドライに聞こえるかもしれませんが、お互いが承知しているなら“自分ファースト”に愉しむセックスがあってもいいじゃないですか。

 続く「緊急集結! LOVE&SEX座談会」では性的にアクティブな7人の女性によるトーク(人数が多すぎてどれが誰の発言かはどうでもよくなるけど)ですが、読んでいて楽しくなるんです。自分が何を求めているのかわかっていて、気持ちいいことへの好奇心が強く、その実現のために自分から行動でき、イヤなセックスに出くわせばさっさと身を引く……。「an・an」における読者のセックス体験レポートはいつもストーリー仕立てて、セックスそのものよりそのシチュエーションに酔っているだけに見えます。しかもそのストーリーに現実味が薄く、絵空事感に満ち満ちていて「はい、すてきすてき〜(棒」以上の感想を持ちようがありません。それと比べてこの座談会は、恋愛の付属品ではなくセックスをセックスとして語っているから、すがすがしいのです。

「このぐらいならやってもいいかな」なテクニック集

 さて、セックス特集といえばテクニック紹介が定番。今年のGLITTERでは『セックスで男をとりこにする快楽解体新書』(幻冬舎メディカルコンサルティング)という、2年も前に発売された書籍からの抜粋で構成されています。本のタイトルと、著者の“ドクターM”の素性がまったくわからない点に警戒シグナルが点滅しましたが、いざ読んでみるとすごくフェアな印象なのです。

 どれもフィジカル面の解説に徹していて、指や口の動かし方をちょっと変えるだけで快感が高まるという内容です。要は、女性が負担を感じることなくできるテクなんですね。「このぐらいならできそう」「やってみてもいいかも」と思う女性が少なくないのでは。

 過去の「an・an」では、「口内発射された精液を口の端から垂らしてみせる」というテクが提案されていました。もやは伝説です。フィジカルなアプローチと見せかけて、しれっと女性のメンタルを削るようなテクを紹介するってコワい。そういう要素がひとつもないGLITTERの誌面展開に、元ネタの書籍への興味も促されました。

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桃子

オトナのオモチャ約200種を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。

@_momoco_

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