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出会いを求めることに疲れ果てた。思い切って性サービスを利用してみようか

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 今回の評価で夢子は「疲れた」とかんじている。この項目を軽く見てはいけない。死にもの狂いで会えそうな人を探しても、ふと我にかえると「自分、なにやってんだぁ?」と湧き上がる思いとの戦いが、まず、キツイ。それをなんとか乗り越え、根性で出会いの場に出かけたにもかかわらず、いまのところ連戦連敗を記録している。

 交互にやってくるアドレナリンと絶望感の落差が激しい日々だ。そんななか人生でたった一度っきりの子宮摘出が現実に迫ってきている。

「早く。早くしないと期限がきちゃう」

 苛立ちが夢子を追い立てる。これじゃあ疲れもするだろう。

 本当はなあ、医療畑の人にまんこにちんぽをジャストミート計画を検証してもらいたいんだ。そのうえで、「子宮がなくなっても、性生活にはなんの不具合も生じませんし、楽しさも変わりませんよ!」と発信してもらえたらベストだろう?

 だけど、少なくとも夢子がいままで出会った医師は、性のQOLの件はノータッチだった。

「だから私がこのチャンスをふいにするわけにはいかない」

 根拠のない使命感に夢子は急き立てられているのだった。

子宮と笑顔で別れたい。

 そしてこのプロジェクトを進める動機は、もうひとつあった。どうやら夢子としては、ずっと愛憎関係だった俺つまり自分の子宮と笑顔で別れたいと思ってるみたいなんだ。命を宿すこともなく、夢子の人生においてはなんの活躍もしていない臓器、俺。唯一の職務は子宮内膜症の原因となる内膜をたくさん溜め込むこと。

 子宮内膜は「赤ちゃんのためのふわふわのベッド♡」と形容されることが多い。だが夢子は自分に苦痛をもたらす内膜が、ジェラートピケのパジャマのような愛らしく柔らかいものにはどうしても思えなかった。子宮内膜症持ちの体では、内膜は病気を悪化させる。夢子にしたら内膜なんざ、自分の身を切り裂くトゲトゲした血だらけの悪魔の化身のような存在だ。

 俺は毎日のように出血させて、痛い思いをたくさんさせて、夢子に不便や不安な思いばかりさせてきた。しかも働かないくせに治療のお金は夢子にいっぱい使わせて。まるでヒモのような、DV亭主のような俺だった。

 子宮にちんぽをジャストミート計画が開始したのは、ひとりでも多くの女性が安心して子宮摘出に踏み切るための一助になりたい!と夢子が思ったからだった。この動機のほかに、卒業していく俺へのなむけとしてちんぽを味わわせたい!そんなモチベーションもあるみたいだ。

 そんな事情もあり、手術まで1カ月を切ったいま、継続的に会える関係じゃなくてもいろんなタイプの性体験を積んでもいいのでは? と思うように夢子はなっていた。

ものすご~く緊急ななにか

 これまで性感マッサージや女性用風俗は年齢・BMI制限に反発を感じていたし、値段も高いからやめておこうと思っていた。だけど、最近の夢子は手術が近づくにつれプロに頼んでもいいんじゃないかと思いはじめていた。

「ものすご~く緊急ななにかがあったとき用に」貯金してきたお金がある。たったひとつしかない子宮を切り取る手術は、その「ものすご~く緊急ななにか」に該当するんじゃないだろうか。万単位のお金を使ってもバチは当たらない気がしてきたのだった。

 何よりも、そもそも子宮内膜症の症状もそれなりにあるなか、自力で素人さんをスカウトするのに疲れ、気力も体力も限界だった。性的イベントが何もないまま、俺が旅立ってしまうのだけは避けたい。

 焦燥感が高まるなか、お金をかけて性サービスを受けることへの抵抗感は薄まってゆくのだった。

 とあるサイトに、女性用性感マッサージ老舗店がリストアップされていた。

 そもそも性感マッサージがなんなのかがはっきりとわからない。いろんなサイトに書いてあることを総合すると、まんこにちんぽを挿入することなく女性に性的な快楽を届けるマッサージらしかった。本来なら俺にちんぽをジャストミートさせてポルチオに対する理解を深めるのが目的だったが、まあ次善の策だな。

 夢子はリンクをつぎつぎと開いては、各ページを丹念に読んでいき、数時間のサーチの末、お願いしたいと思えるところを発見した。

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大和彩

米国の大学と美大を卒業後、日本で会社員に。しかし会社の倒産やリストラなどで次々職を失い貧困に陥いる。その状況をリアルタイムで発信したブログがきっかけとなり2013年6月より「messy」にて執筆活動を始める。著書『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』。現在はうつ、子宮内膜症、腫瘍、腰痛など闘病中。好きな食べ物は、熱いお茶。

『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』