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「あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛」絶叫俳優・藤原竜也。舞台の申し子である彼が、最新作で見せる静かな狂気

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 劇場へ足を運んだ観客と演じ手だけが共有することができる、その場限りのエンターテインメント、舞台。まったく同じものは二度とはないからこそ、時に舞台では、ドラマや映画などの映像では踏み込めない大胆できわどい表現が可能です。

 演技を見て楽しむという意味では同じ娯楽でありながら、映像作品と舞台では、主演だったり人気バイプレーヤーだったりの序列には、実は明確な違いが存在しています。映像では主演級とされる俳優であっても、舞台ではコアなファンからそっぽを向かれて評価されない、というのはよくあることですが、どちらの序列でも同じく主演として歓迎される俳優の代表格が、藤原竜也です。

 漫画原作の実写映画などでのエキセントリックな演技が時には賛否両論でもある藤原ですが、狂気をはらんだ人物の描写に定評があるのは、誰もが認めるところ。でもその演技力を本当に堪能できるのは、派手派手しく叫びのたうちまわる役ではなく、ジワジワと侵食され静かに思考が狂っていく役かもしれません。主演舞台「プレイヤー」では、スピリチュアルなカルト集団に引き込まれていく劇中劇との多重構造で、虚構と実像が入り混じった緻密な構成によるカタルシスとともに、残暑がふっと消えさるような怖さを、ほほ笑みひとつで引き出していました。

華々しいキャリアと実力

 物語の舞台は、ある地方都市にある公共劇場の稽古場。さまざまなキャリアの俳優やスタッフが集まり、新作演劇「PLAYER」のリハーサルが行われていました。遺体で見つかった行方不明の女性『天野真』の幽霊の意識や言葉が、生前彼女と親交があり選ばれた人間=『プレイヤー』を通して「再生」されるという戯曲の群像劇で、天野を死に導いた瞑想ワークショップの指導者『時枝』は、事件を追う刑事の『桜井』に、死者との共存は限界を迎えつつある物質文明を打開し世界を変える第一歩だと語ります。

 話は劇中劇「PLAYER」と稽古場を行き来しながら展開し、死者の言葉の「再生」と戯曲中の言葉である「再生」の重なりが、俳優たちを惑わせていきます。

「プレイヤー」は、脚本の前川知大が主宰する劇団「イキウメ」で2006年に演出とともに初演した作品で、今回の演出は劇団「阿佐ヶ谷スパイダーズ」を率いる長塚圭史が手掛けています。同年代で、ともに留学経験があり、劇作家と演出家とを兼ねる前川と長塚は、人間ではない存在を自作の主題に盛り込むことが多い点も共通しています。

 SFをモチーフにするのは、そのままの絵面を観客の目の前に取り出すことが困難な舞台にとっては、ちょっと難しいテーマでもあります。だからこそ、そのままではない方法でどう見せるか?は、作品の洗練性を左右するものでもあるのですが、前川の戯曲の構造の緻密さが、日常や情報は不変のものではなく、人と人とのかかわりの中で未知の存在や認識へ対峙するものという形で、淡々と描き出しています。

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フィナンシェ西沢

新聞記者、雑誌編集者を経て、現在はお気楽な腰掛け派遣OL兼フリーライター。映画と舞台のパンフレット収集が唯一の趣味。

@westzawa1121