連載

巨根とガラスのハートをあわせ持つ美青年との一戦を終えて、気づいてしまったこと

【この記事のキーワード】
子宮にちんぽが届くまで

果たしてちんぽは届くのか。イラスト/大和彩

 死んではいないけど、生きてもいない……。子宮内膜症持ちの夢子は、長らくそんな状態だったのさ。

*  *  *

 巨根・潮吹きなどのキーワードには不安しかなかったが、なによりもう時間がない。手術まであと1週間半くらいしかないぎりぎりのタイミングで現れた、貴重なグッドルッキングガイだ。

 出会いに感謝して全力を尽くし、掴んだチャンスを性交と成功に導く……それが我々のいまなすべきことなのだ。そう、ネガティブにフォーカスしている暇はない。現実的な対処法として潤滑剤を持って行けばなんとかなるだろう。夢子はネットで「ルブリカント」をポチった。

 それに、何度かすっぽかしをくらった経験から学んだが、ネットの出会いでは男性もすごく警戒している場合がある。会う前に「巨根怖い! 潮吹きとかヤなんだけど!!」と動揺しては、相手が逃げてしまうかもしれない。釣りと同じで、針がびくっとひいた瞬間に全力で引っぱったらいかんのだ。繊細なお魚ちゃんが怖がらないように、やさし~くたぐりよせねばならない。

第一関門、クリア!

「アンジェリカさんの写真見たいですー」とガチャ君からLINEがあった。

 来た! いつも「写真を送るか否か」のポイントで獲物を逃す。もうしょうがない。自分も写真を添付してない人とは会いたくないから気持ちはわかる。一度不安感を抱かせてしまったら、彼は二度と手中には戻ってこないだろう。ネットの出会いは儚い。そう、チャンスは一度キリなのだ。このコとのMTGを実現するために全力を尽くさねばならない。

「そっちから送ってくれたら送るよ」

 と伝えたところ、「えっ、こんなの送ってもらっていいの?」と驚いたのは夢子だった。

 ガチャくんからは数分もしないうちに写真どころか動画が送られてきたし、それには友人まで写っていたからだ。ムービーまで送ってくれた若者の軽やかさとは対照的に夢子は「個人情報流出ダメ絶対!」な、背景がなにも映り込んでいない上半身だけの画像をぺらっと送ったのみだった。

 前日にLINEしたら「明日会うの本当に楽しみです~」とうれしそうな返事が来た。なんとかすっぽかしは回避できそうである。写真を送った効果があったのかもしれない。明日への気合と潤滑剤をかばんに入れながら、夢子は胸をなでおろした。第一関門クリアだ。

あまりも好みのルックスで

 会ってみると、彼は人混みでもぱっと目立つほどのすらりとした高身長、かつ見事な顔面の持ち主だった。姿形が整っている。なんて尊いなのだろう。夢子はご満悦だった。夢子は満面の笑みでいった。

「ねえ、ガチャくれるの?」
「わすれたー」

 ガチャくんはぽかんとした無表情でいい放った。女をおびき出すために、軽い気持ちで書いただけだろ。わかっているはずなのに夢子はしゅん、となっている。

 そこで俺は気づいた。夢子はこいつに遊び以上のものを期待してしまっているのかもしれない。

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大和彩

米国の大学と美大を卒業後、日本で会社員に。しかし会社の倒産やリストラなどで次々職を失い貧困に陥いる。その状況をリアルタイムで発信したブログがきっかけとなり2013年6月より「messy」にて執筆活動を始める。著書『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』。現在はうつ、子宮内膜症、腫瘍、腰痛など闘病中。好きな食べ物は、熱いお茶。

『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』