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巨根とガラスのハートをあわせ持つ美青年との一戦を終えて、気づいてしまったこと

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 だけど、先方がそこまで打ちひしがれているのに、「あなたはイケなかったけど私は気にしてませんよ」というのもなんだか違うし。いろんな言葉を検討した結果、こういった。

……うれしかったよ? ガチャくん、かっこいいし」

 だけどガチャくんはぶつぶつ拗ねている。

「アンジェリカさんのが、せますぎるから……

 別に弁解なんてしなくていいのに。ホテルを出るとき、ガチャくんは死んだ目でこう嘆いた。

「えっちしたかったのにーー」

いつまでも、既読にならない

 今回「好きなタイプでクライマックスなし」vs「好きじゃないタイプでクライマックスあり」なら「好きなタイプでクライマックスなし」のほうが我々にとっては好ましい、と学んだ。

 これはあくまでも特異体質の夢子の考えなので、全女性には当てはまらない。夢子にとっては帰宅後の吐き気に悩まされなくて済む、それだけで最高の解放感だった。

 帰ってからガチャくんに

「今日はありがとう! よかったらまた会いませんか」

と夢子はLINEしたのだが、既読はつかなかった。ただの遊びだと重々わかっていたはずなのに、夢子は情緒不安定になってしまった。

(会う前はあんなにマメにLINEをやりとりしたのに。私のどこがいけなかったの?)

 会うためになら何でもする男なんだろ。どこがいけなかったというか、原因ははっきりしていると俺は思うがな。夢子にだってそれはわかっていた。

彼に伝えたかったこと

 なのに、自分でも理解できない衝動にかられ、読まれはしないメッセージをしつこく送りつづけた。

「私、実は病気なの」
「それで来週、手術するの」
「子宮摘出するんだ」
「それで今週が子宮ありでセックスする、タイムリミットだったんだ」
「それでね」

 それで……

 それで、なに?

 私は、一体なにをガチャくんに伝えたいんだろう。

 結局彼に何をいいたいのかをよく考えたら、単に「ありがとう」と伝えたいと思った。

 自分が「ありがとう」といっているのだろうか? それとも俺の意思が夢子をのっとって、ガチャくんにお礼を伝えたがっているのだろうか? 夢子にはわからなかった。

 そう気づいた瞬間、夢子の目からぽろっと涙が落ちた。思えば、俺の卒業が決まってから彼女は一度も泣いていない。正確には泣くどころじゃなかったんだ。だけど、本当はすごく苦しくて、心はパンパンだった。

 夢子は涙が出てゆるんだ胸の辺りをグーで叩きながら思った。

(そうか、私は挿入されたかったじゃないんだな。泣きたかったんだ。なんで今まで気づかなかったんだろう)

 夢子はLINEにこう打ち込んだ。

「とにかくお礼をいいたかったの。ありがとう」

 LINEにガチャくんからの既読がつくことは、なかった。

backno.

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大和彩

米国の大学と美大を卒業後、日本で会社員に。しかし会社の倒産やリストラなどで次々職を失い貧困に陥いる。その状況をリアルタイムで発信したブログがきっかけとなり2013年6月より「messy」にて執筆活動を始める。著書『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』。現在はうつ、子宮内膜症、腫瘍、腰痛など闘病中。好きな食べ物は、熱いお茶。

『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』