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リア充感あふれる「舐め犬」と会う。挿入ナシでただ舐めたい若者の真意って?

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 なんとか気を紛らわせたいとネットを眺めていたら、「きょう舐め犬の空きあります。興味ある方は連絡ください」という書き込みを発見した。以前連絡を取った「モデルばりの美女を舐めたい」と語った舐め犬さんとは別人によるものだった。

 いま発症しているPTSD症状から逃れるために、新たな性経験で記憶を上書きしたい。舐め犬をお願いしてみるのもいいかもしれない。

 その募集をかけていた舐め犬さんに年齢制限や体重制限、費用のことなどをメッセージしてみると、またたく間に返信が来た。女性の年齢・体重制限はなし、ホテルの費用は舐め犬もちだとのこと。

「ではお願いします!」ーー夢子は「鉄は熱いうちに打て」とばかりに返事をし、部屋から出る支度を始めた。夢子は痛み止めの座薬をアナルにぶち込んだ。多少痛みはあっても、これで数時間は動けるだろう。

 おいおい夢子、舐め犬さんの年齢も名前も顔もわからないぞ? ネットで「犬になりたい」と言っている男性なんだから、都会の闇に紛れて生きるちょっと妖しげなヤツなんじゃないか? 大丈夫なのか?

「子宮とちんぽをジャストミート計画」全体をとおしていえることだが、夢子は詳細を確かめないままにいつもアクションしてしまう。アプリでの出会いがどういうものなのか、ハプバーがどういうところなのか、性感マッサージでどういったことが行われるのか事前に知ることのないまま、現場第一主義で走り抜けてきた。これぞOJTというかんじである。

 舐め犬さんと会ったらどうなるのか。ホテルではどういうことが行われるのか。今回だって、漠然としかわからない。

 それでもこれまでは俺と一緒にPDCAを回して可能なかぎりベストな選択をしてきたつもりだ。論理的に、冷静に。だが今回はちょっと無鉄砲がすぎないか?

 しかし夢子には俺の声はとどかなかった。shit! だからトラウマ持ちはやっかいなんだ。逸脱した性行為に走らなければいいが……

川原でBBQしてそうなタイプ

 だが思いのほか夢子は運の強い女だった。

 待ち合わせ場所に着いたころには夜もふけ、卵管がもげそうなほどの寒さである。それでも夢子は緊張のあまり汗びっしょりで、保温機能のついた肌着がべちょべちょして気持ち悪い。

 ダウンジャケットを開けたり閉めたりして換気していると、舐め犬さんが現れた。

 彼は、偶然にも夢子の苦手なおじさんタイプではなく、おしゃれな若者だった。こういう若者、裏原宿で見たことあるぞ。相手がごく普通の、むしろイケメンといっていいような若者だったので、体のこわばりは少し解けた。だが、想像していたような影のあるタイプではなかったため「YOU はどうして舐め犬に?」という疑問で頭のなかがいっぱいになってしまった。

 ホテルまで歩くあいだ、舐め犬さんは明るく話しかけてくれる。

「お仕事帰りなんですかー?」
「あっ、ハイそうです……

 生霊になりそうな痛みでのたうちまわってました、ともいえずに夢子は嘘をついた。

「なんてお呼びすればいいですかー?」
「アンジェリカでお願いします……

 不安気に答える夢子に、よいタイミングでにっこり笑顔を向けてくれる。舐め犬さんは接客慣れしていた。

 コミュ障でも、人見知りでもない。笑顔も服装もさわやかだし、趣味が「川原で男女入り混じった大勢の友だちとのワイワイBBQ」でも違和感ない。いくらでもモテそうなのに、なぜ知らない女とホテルに行く必要があるのかますます謎だった。

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大和彩

米国の大学と美大を卒業後、日本で会社員に。しかし会社の倒産やリストラなどで次々職を失い貧困に陥いる。その状況をリアルタイムで発信したブログがきっかけとなり2013年6月より「messy」にて執筆活動を始める。著書『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』。現在はうつ、子宮内膜症、腫瘍、腰痛など闘病中。好きな食べ物は、熱いお茶。

『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』