2008年のクリスマスイブ。東京都渋谷区のマンションでタレント・飯島愛(36=当時)が死亡しているのを親類の女性が発見した。その後の警察などの調査によれば、死亡推定日は同年12月17日前後。死亡後、1週間は経っていたとみられている。死因は肺炎と発表された。
著書『プラトニック・セックス』(小学館)によれば飯島は、六本木のキャバ嬢から銀座のクラブに移るなど夜の世界で活躍した後、AV女優としてデビューした。その後1990年代前半に『ギルガメッシュないと』(テレビ東京系)でのTバック露出で大ブレイク。バラエティタレントへとして一気にお茶の間へ躍り出た。しかし腎盂炎を理由に2007年3月、引退を宣言。この引退に際して、強く反対したかつての所属事務所との間で衝突が起きたため、以降の表立った活動に支障がでたのではないかとも言われている。
引退後は、引き続き公式ブログで近況を綴っていたが、そこでの発言がたびたびネットニュースに取り上げられるなど、注目度は衰えることがなかったようだ。また、時折、どこかの病院に通院していると思える記述もみられ、精神的、肉体的な健康状態も不安視されてきた。引退宣言直後の2007年5月には『バイトしようっと。』と題した記事をアップ。「PCでする作業の限界を感じたので、デザイン事務所でバイトしよおうと思うの…ケド面接って何着ていくの? 何を聞かれるのかなぁ… 軽く嘘付いちゃおう…」(原文ママ)とのことであるが、アルバイトはお金のためでなくPCスキル向上のためと見られるものの、一方でその経済状態が心配にもなる内容ではある。また同月の別記事には「『早く寝なさい』と、医者に言われたので、『寝てますよ』って、言ったら、『朝方にブログを書いているでしょう?』と、切り返されたので『あんたも早く寝ろ!!!』と、言っといた。」といった内容も。何らかの症状を抱えて医師と関わりがあり、そのうえ医師に生活リズムを心配されている状況が見てとれる。
結局その後アルバイトをしたのかはブログに記述がなく定かではないが、同年9月22日の明け方にはブログ閉鎖を宣言し、また騒動に。「只今、脳の半分以上をしめているのは、悩みや問題なので… 何もかけないのです。(中略)遅くても今月終わりには、一瞬、閉鎖していいですか?!このままでは、このブログはダメだ意味が無くなる。これまでの皆の参加には凄い意味があったんだから、ムダにしたくはないです。日記をつけたい。今日は…から始めたいんだ。」と綴られているが、これには200件以上ものコメントがつき、閉鎖を惜しむ声が多数寄せられた。ところが同日夜、彼女は「あの…まだ、少し続けていいかな?!」と題した記事をアップ。「一時、閉鎖しますが 今月、もう少し、続けるつもりで… いました。」と、ある時期からの期間限定の閉鎖であることを明言した。これにまたコメント欄には多数の喜びの声が書き込まれている。事実、同年10月はほぼ更新がなされていないが、最終日、飯島の誕生日である10月31日に更新を再開している。“閉鎖”と言わず“更新お休み”などと言っておけばこんなに騒動にならなかったのではないか……と思ってしまうが、天然なのか、それとも引退後の寂しさからそう言ってしまったのか、今となってはわからない。しかしとにかく、飯島のブログに注目が集まる理由は、人気タレントの引退後の生活を垣間みたいという興味だけでなく、次に何を言い出すか分からないハラハラ感によるところもあっただろう。
死亡から約2週間前、2008年12月4日に開かれた「ニコニコ大会議2008冬」に行ったことを記していると思われる記事が、最後の記事となった。今見返しても、その時期は何ということのない日常を気楽に綴っているためか、また更新されそうな気すらしてくるが、そんな日はもう来ることはない。
更新された日付を見て、もう5年も経つのかと感慨深くもあるが、よく見るとコメント欄がえらいことになっていた。12月19日夜の時点で69,916件もある! 更新から1週間経った時点では「放置しないでどうにかしてー!」「早く更新して~~~~」「いい加減更新して下さい」など、飯島が単にブログを放置していると思っている読者からの書き込みが目立つが、死亡推定日時とされる同年12月17日の時点では「愛さん…レスないけど大丈夫かなぁ?元気ないの?」など、さすがに飯島の体調を心配する声もチラホラ現れ始めた。とはいえ、有名人ブログにつきものの「辞めちゃえば! 過去の人なんだよ! 貴方は!」といった批判もまだまだ見られる。しかし死亡が報じられたと思われる12月24日の17時台からは一転、「ご冥福をお祈りします」のコメントの嵐に。
ところが当時の“お祈り”書き込みだけでコメント数の大半を占めているのかと思いきや、2008年が終わるまでのコメント数は30,470と半分にも満たない。この頃から「愛ちゃん、年が明けちゃったよー」「また遊びに来るねぇ」といったように、飯島へ語りかけるタイプのコメントが目立つようになっていたが、そういったコメントが現在までも続き、もう来年にも7万件に届きそうな状態なのである。今年11~12月に寄せられたコメントでも「すっかり寒い季節になりました。愛チャンはどうされていますか?」「昨日、初雪が降ったよ。一年って早いなぁ~って思っちゃった」と、語りかけスタイルのものがほとんど、というかそのスタイルのコメントしか見当たらない。時折自身の近況や悩みを報告するものもある。あるブログ記事で飯島は「うのの結婚式があったね。最高に可愛かったよ。 あーーーーーー、青木おめでとーーー 梨花、またリッツでお互いの恋の話しようぜ!!!! 紗理奈、熱なおせよ 光浦も元気になってよかった。千秋ごめんな。中山ヒデがボーリングに夢中。テリーさんからさっき電話ありがとう。…(以降続く)」と、芸能界にいる友人と思われる人物たちに語りかけていたりもした。こういうところから感じられる飯島の優しさや姉御肌的キャラが、いまもコメント欄に集う読者が絶えない理由なのかもしれない。
■ブログウォッチャー京子/ 1970年代生まれのライター。2年前に男児を出産。日課はインスタウォッチ。子供を寝かしつけながらうっかり自分も寝落ちしてしまうため、いつも明け方に目覚めて原稿を書いています。