大乱闘の中で生まれる、チームを超えたカップリング♡
「HiGH&LOW」世界の軸となるのは、「SWORD」と呼ばれる地域をめぐる争いです。「山王連合会」「ホワイトラスカルズ」「鬼邪高校(おやこうこう)」「ルードボーイズ」「達磨一家」という、この地域に存在する5つのチームの頭文字から、この名がつけられています。ドラマシリーズでは、5グループがそれぞれの理由から抗争を繰り広げました。それが前作『HiGH&LOW THE MOVIE』では「SWORD地区をヤクザに渡さない」という目的から共闘するのです。「敵対からの共闘」というだけでもおいしくいただけるのに、大人数での乱闘の中で、ドラマシリーズでタイマンを張った幹部同士が手を貸し合って戦うとあっては、チームを超えたカップリングが生まれるのは不可避です。
今作では、山王連合会の総長・コブラ(岩田剛典)が、ほかの4チームに対して協定を結ぶことを提案します。でも、ホワイトラスカルズのリーダー・ROCKY(黒木啓司)はそれをはねつけてしまう。因縁の宿敵・蘭丸(中村蒼)が出所し、おそらくラスカルズを狙ってくる。ここで協定を結べば、SWORD全体を巻き込んでしまうと危惧しての判断でした。
山王連合会は寂れた商店街を守るヤンキーチーム、対するラスカルズは「女を守る」ことを信条とする、夜の街でクラブを経営するスカウト集団です。ドラマシリーズではヤクザの謀略によって直接対決していますが、その後コブラはわけあって保護しなければならなくなった女を、ROCKYのもとに預けるという描写がありました。コブラはROCKYのことを、ある面では信頼しているわけです。
「人はすぐ誰かを頼ろうとする。自分で立てるうちは、自分の足で立つべきだ」とあくまで協定を断るROCKYに、コブラは「わかった」と言いつつ、「ただ、立てなくなったらいつでも呼べよ」と告げます。
そしてクライマックス、蘭丸の卑劣な攻撃に崩れ落ちたROCKYのもとにコブラは山王連合会を率いて駆けつけ、拳を傷つけられたROCKYに自分のバンダナを差し出します。ROCKYはそれを掌に巻き、再び立ち上がる。コブラは「随分やられてんじゃねぇか」と言い、ROCKYは「うるせぇ、バーカ」と応じる。『ドラゴンボール』の悟空とベジータさながらに、言葉は少なくとも、2人の関係がビンビンに伝わる名シーンでした。
鬼邪高校は“現実”でも楽しめる
コブラについてはもうひとつ、鬼邪高校の番長・村山(山田裕貴)もいい組み合わせです。山王と鬼邪高校は、ドラマシリーズ1の冒頭で直接対決しました。そこで村山はコブラとタイマンを張り、惜しくも敗れます。それ以降、村山はコブラにある種の信頼と尊敬を抱くようになるのです。映画『クローズZERO Ⅱ』の源治と芹沢を彷彿とさせる関係性が生まれてくるわけです。
村山は番長としてのあるべき姿に迷ったときはコブラに相談しに行き、『HiGH&LOW THE MOVIE』のラストでは「鬼邪高卒業したら山王入れてくんねぇ?」と申し込むなど、何かとコブラに懐いています。今作では、ラスカルズはじめほかのチームのリーダーたちがSWORD協定を断る中で、ひとりだけ「俺はコブラちゃんに一票」と賛意を示し、そう言われたコブラは、珍しくちょっと微笑んでいるように見えます。嬉しかったんだね、コブラちゃん。
村山はハイローシリーズの中でも屈指の人気キャラクターです。鬼邪高校は、「拳100発の荒行に耐えたヤツが番長になれる」「5回留年すれば一流」というヤンキー学校。村山は史上初の100発に耐えきった男であり、生徒たちは彼を敬愛し、慕っています。外見は一見ひょろっとしており、喋り方も飄々としていますが、殴られるほどに輝きを増し、ゾンビのように立ち上がって相手を打ちのめす。両サイドにはいつも、オールバックの長身・古屋(鈴木貴之)と、スキンヘッドのピットブル犬のような男・関(一ノ瀬ワタル)が立っています。
ちなみに、LDH所属ではないこの役者3人はプライベートでも仲良しで、SNSにはしょっちゅう3人で遊んでいる写真がアップされており、一部ファンの間では「鬼邪高は現実」と呼ばれています。LDHにはぜひ、鬼邪高を主人公にしたスピンオフ作品を作ってほしい。心から待っています。