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ウサギ用オリに子どもを閉じ込め…鳥居みゆきが「虐待母」を演じることで生まれた説得力と問題提起

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有罪、無罪。あなたはどう思う?

 真田は、保護責任者遺棄致死罪で起訴され、世間の注目度の高さから裁判員裁判が実施されます。裁判員は観客全員で、入場時に渡されている有罪か無罪かの紙を提示。裁判長から客席番号で指名されたら理由を述べ、「無罪」を選んだら貴島からの「異議あり!」のセリフも飛んできます。

 このような客席参加型の作品は、ワハハ本舗などコントをメーンに行うカンパニーではよくありましたが、近年は大劇場で行う演劇公演でも増えています。昨年春に上演されたトニー賞受賞ミュージカル「エドウィン・ドルードの謎」は、観客の投票により結末が288通りに変化し、今年夏の歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」第二部「歌舞伎座捕物帖(こびきちょうなぞときばなし)」も、観客の拍手の大きさでその日の作品の結末が変わるという演出でした。

 「モンスター」はおそらく、観客がどう反応、投票しても、物語の結末は同じだったと推測されます。真田は「有罪」。そこにどんな事情があっても、結果は社会の声に左右されてしまう、では本当のモンスターとは誰で、何なのか――。強制的に考えさせるとともに、その自分の意思表示は、台本=世間の声の前では無意味であるというダブルミーニングの仕込みなのではとまで思わされてしまうのは、簡単に真意を測ることのできない鳥居の芸風とその存在に、けむに巻かれているせいなのかもしれません。

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フィナンシェ西沢

新聞記者、雑誌編集者を経て、現在はお気楽な腰掛け派遣OL兼フリーライター。映画と舞台のパンフレット収集が唯一の趣味。

@westzawa1121