・凜音(りおん)くん
名盤「LIFE」で知られる元王子様・オザケンこと小沢健二とアメリカ人写真家のエリザベス・コールさんとの間に産まれた第一子となる男児の名前。今年6月に公表された。漢字にも「音」が入っていることから、小沢の音楽への強い思いを感じるとともに、現在ニューヨーク在住であることや妻がアメリカ人であることから、海外での暮らしにもなじむ名前をつけたのかも……という憶測が働く。しかし、フリッパーズギターからの流れでオザケン、小山田圭吾の動向を追いかけ、「LIFE」も当時1,000回は聴いたかもしれない……というサブカル崩れ現在アラフォーの筆者は2010年、NHKホールで行われた「ひふみよコンサートツアー 二零一零年 五月 六月」のチケット争奪戦に勝利し会場に足を運んだ1人であるが、かつての名曲たちの英語の歌詞部分をムリヤリ日本語に替え、それによる間の手を観客に促したオザケンの姿に、アメリカ人との交際を経ての改めての自分のアイデンティティの確立というか、日本語回帰みたいなものを見た。
今さらの歌詞変更は当時アルバムを聞き込んだファンに強い戸惑いを与える行為だと重々認識していただろうが、敢えてそうすることにオザケンの、何が何でも日本語を大事に、という強い意志を感じたのである。それなのに長男の読みは「リオン」ってなんだか海外風だし……。あのライブを見た人間として、もっとオザケンは硬派な日本風の名前をつけるだろうと思っていたので多少ショックを受けてしまった。しかも今日本で「リオン」といえば歌舞伎役者に暴行を働いた反グレ集団のひとりを真っ先に思い浮かべるが、それを気にすらしていない名付けにオザケンと日本との距離を感じ、また戸惑う元ファンであった。
・百(もも)ちゃん
2004年にセミヌード写真集『叶々(かなかな)』(竹書房)を発表した元グラドル、小島可奈子と一般男性との間に11月に誕生した第一子となる長女の名前。読みはかわいらしいが、漢字を見ると老婆になってもいけるかもしれない。意外と汎用性のある名だろう。
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今年に限らず芸能界・スポーツ業界における子どもの名はDQN寄りであるものが多く見られる。アン・ルイス&桑名正博夫婦の長男「美勇士」を筆頭に、現在は改名しているが、服役中の押尾学と矢田亜希子の息子「りあむ」、先日離婚した鈴木紗理奈の長男「利音」など、個性の強いものが多いようだ。
この傾向は一般人にも見られる。ベネッセコーポレーションは11月29日、今年産まれた赤ちゃんの名前ランキングを発表した。1月1日から10月31日までに産まれた赤ちゃん3万372人を対象に名前や読みなどを調査したのだという。
それによると男の子の一位は「大翔」と書いて“ひろと”。女の子の一位は「結菜」と書いて“ゆいな”。二位、三位は男の子で「蓮(れん)」、「悠真(ゆうま)」。女の子で「陽菜(ひな)」、「葵(あおい)」……と続く。読みランキングでは一位が「はると」で、その漢字の組み合わせは人数の多い順に、“陽斗”、“陽翔”、“遥斗”、“晴翔”、“大翔”……とエンドレス。気が遠くなるほどである。「大翔」は、名前ランキング一位の“ひろと”につけられた漢字でもあり、「大翔」は“ひろと”とも“はると”とも読むようだが申し訳ない、筆者は一度見ただけでは全然読めなかった。女の子は「結」「愛」を使った名前が相変わらずの人気だという。
こう見ると一般人のランキングでも、一発では読みが分からず「愛」や「空」「斗」といった漢字を用い、ややDQNネーム寄りになっている傾向がわかる。
またスマートフォン向けアプリ「赤ちゃん名づけ」を手がけるリクルーティングスタジオが、利用者の投票で反響が多かったものをランキング化して「2013年ベスト・オブ・キラキラネーム」を発表しているが、それを見ると「泡姫(ありえる)」「姫星(きてぃ)」「心愛(ここあ)」「本気(まじ)」「頼音(らいおん)」などいかついDQNネームがひしめいている。これはもう「愛死天流(あいしてる)」「仏恥義理(ぶっちぎり)」など昭和ヤンキーのセンスに共通するといってもいいだろう。UFOキャッチャーでゲットした七人の小人のぬいぐるみを後部座席の後ろにあしらった軽にDQNネームの我が子を乗せ田舎道を爆走するジャージ姿の母親の姿を想像してしまう。
名前は両親から子どもへの最初のプレゼントである。そこには親の思いやこういった人間になってほしい、という強い思いが込められるのも当然だ。しかし無理矢理な当て字による名前は今後、その子を取り巻く周りの人間が困ることも多いだろうし、結果的に本人がその名前による息苦しさを感じることもあるだろう。就職で不利になるという話も耳にしたことがある。親の思いを込めつつも、今後子どもが日常生活に困らないような、また年齢を重ねても違和感のない名前が、子どもにとってありがたい名前なのではないだろうか。
■ブログウォッチャー京子/ 1970年代生まれのライター。2年前に男児を出産。日課はインスタウォッチ。子供を寝かしつけながらうっかり自分も寝落ちしてしまうため、いつも明け方に目覚めて原稿を書いています。
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