
(C)河井克夫
その夜、しぇー子は今までにも増して泥酔した状態で、俺の家にやってきた。
玄関のインターフォンで「開けて~」というのでロックを解除してやったが、それから音沙汰がなくなり、10分くらい経ってもまだ俺の部屋のドアに到着する気配がない。仕方がないので部屋を出て探しに行くと、俺の家の3軒隣のドアの前にへたり込んでいた。
揺り起こすと「あー笹王さん、こんばんわー。」と、妙に嬉しそうに言った。
抱き起こしてようやく部屋まで連れてくると、そのまま台所に入って水道の水をぐびぐび飲み、コップを置くと「おしっこ」と言って、トイレに入っていった。
トイレに入ったきり、また10分くらい出てこない。ノックしながら「しぇーこ、しぇーこ、」と呼んでみたが反応がないので、試しにドアを開いてみると鍵はかかっておらず、しぇー子はパンティをストッキングごと下ろした形のまま、便座に座って寝ていた。
便座に浅く座って、開けた蓋にもたれるようにして、足を少し開いた形で寝ているので、しぇー子の股間周りがはっきり見えた。俺はその時初めてしぇー子のそれを見たのだった。
陰毛は薄く、いわゆる「上付き」の相のようで、その位置からでも、薄いピンク色のクリトリスの位置がはっきり確認できた。俺はそのままドアを閉め、仕事机に座って仕事を再開しようとしたが、手が動かないので、そばにあったメモ用紙を引き寄せ、今見たばかりのしぇー子のクリトリスを思い出しながらスケッチした。
しばらくするとしぇー子が「寝ちゃった。」と言いながらトイレから出てきた。
「笹王さん、さっきトイレに入ってこなかった?」
「入ってないよ。」
「うそ、入ってきてたよ。ねえ、あたし、寝る前にちゃんとおしっこした?」
「知らないよ。」
「してないかもしれないけど、念のためちゃんと拭いたからね…。笹王さんち、ウォシュレットつけないの?」
意味のないことをくどくど言いながら、しぇー子は勝手に Tシャツ一枚になると、どこからか俺のスウェットを見つけ出し、ゆるゆる履き替えてベッドに潜り込んだ。その晩はしぇー子はお話をねだらずに、そのまま寝てしまった。
俺は机の上のメモ用紙に描いたしぇー子のクリトリスに、そばにあった蛍光ペンでなんとなく色を塗ったりしながら、しぇー子がねだったら話したであろう話を考えていた。

(C)河井克夫
「こっちを見なさい、ハンス。」
姫の、高いよく通る声が、部屋に響いた。畏まってひざまづいていたハンスは、顔を上げて姫のほうを見た。
長い絨毯の道が、ハンスがひざまづいている端から部屋の奥に向かって伸びており、その先で、バロック風の少し小さめの椅子からはみ出すようにして、豪奢な生地でできたドレスの裾が膨らんでいるのが、まず目に入った。そして、そこにちょこんと乗っかっているかのような姫の上半身が、次に目に入った。大きく結ったポンパドゥールの下の、姫の小さい顔と、長いまつげに縁取られた大きな目が、最後に目に入った。
「なぜここに呼ばれたのかわかる? ハンス。」
ハンスはかぶりを振った。子供の頃からずっと城で下働きをしていたが、姫に、じかに拝謁するのは初めてだった。今朝いきなり台所付きの侍女に「姫が直接お前にお目にかかりたいと申しておいでだ。」と言われ、それから衛士に抱えられるように、この部屋に連れてこられたのだった。姫がなぜ、自分のような末端の下働きの存在を知っているのかもわからなかった。
「この城の下働きの中でお前が一番若いそうね。お前は、女を知っているかい?」
ハンスは再びかぶりを振った。しかしそれは嘘だった。昨年、市場へ買い物に行かされた時、好色で知られる両替屋のおかみさんに誘われ、童貞を失っていたのだが、叱責されるような気がして、城の誰にもそのことは秘密にしていた。ましてや姫様にそんなことを知られてはならない。
「そう。良かった。じゃあ、今日はあなたに、女がどういうものか、見せてあげる。」
そう言うと、姫は、大きく膨らんでいたドレスの裾を乱暴にたくし上げた。金で縁取られた黒い小さい靴と、白いレースの靴下に包まれた細い足が目に入った。そして靴下の向こうにもレースと同じくらい白い素肌の足が続き、その根本の部分に、姫は何も身につけていなかった。
両替屋のおかみさんのその部分は真っ黒い毛でもじゃもじゃと覆われていたが、目の前の姫のその部分は栗色の淡い茂みが、白い肌に添えられるようについているだけで、茂みの下にピンク色の陰裂が垣間見えた。
「どう?」
ハンスは思わず、顔を伏せた。目をぎゅっとつぶって、ハンスは消え入るような声で答えた。
「恐れ多くて、見ることができません。」
「そんなこと言わないで。もう一度、目を開けて、こっちをごらん。」
ハンスは恐る恐る目を開け、再び姫のほうを見た。
姫は優しそうに微笑んでいるように見えた。足の間も再び目に入った。ピンクの陰裂に、ひときわ色の濃い部分が挟まっているのが見えた。ハンスは再び目を瞑った。
「ちゃんと見なさい、ハンス。」
姫の声が、優しい中にも幾分かの強さを持って響いた。
「私のようなものが姫様のそんなお姿を見るのはもったいのうございます。」
「いいから。目を開けて。」
ハンスは目を開けた。
姫はたくし上げたドレスの裾を左手で抱きかかえるようにしていて、空いた右手の指が唇にもたれかかるように当てられていた。大きな目は少し潤んでいるようで、頰も紅潮していた。
足の間の肉の突起は、先ほどよりも存在感を増しているように思えた。質量も増しているようで、紡錘状の形がはっきり見てとれた。股間にピンク色の大粒の空豆が生っているようにハンスには見え、また顔を伏せた。
「ダメよ、ハンス。顔をあげて。」
姫の声に吐息が混じっている。
ハンスはまた、恐る恐る顔をあげた。
姫は先ほどのポーズのままだったが、明らかに息が荒くなっていた。そして、股間のピンクの突起は先ほどより明らかに膨らんでおり、空豆から花豆のサイズに変わって、栗色の茂みから顔を出していた。
奇妙な罪悪感にかられてまた目を瞑ったハンスの耳に、吐息交じりの姫の声が絡みつくように届いた。ハンスは汗だくになっていた。
「…大きくなってるでしょう?」
ハンスは黙っていた。
「あなたが見ているからよ。あなたの視線で大きくなるのよ。」
姫の声がだんだん近づいてきた。ハンスの背中を汗がつたった。
「さあ、ハンス、目を開けて」
姫の声が頭上から響いた。
ハンスの鼻を隠微な匂いがくすぐった。目を開けると、すぐそばに姫の股間があり、大きめのマスカットのようなサイズの、ピンク色の肉塊が、股間の裂け目の上から大きくぶら下がっていた。
(もう観念しなくては。)
それが正解かどうかはわからなかったが、両替屋のおかみさんに教わったことを試すしかないと、ハンスは思った。
「姫様、失礼します!」
ハンスはまた、さらに、ぎゅっと目をつぶり、思い切り舌を突き出すと、4センチほどになっていただろう、その肉塊をぺろんと舐め上げた。肉塊がビクッと痙攣し、収縮するような気がした。
「…あんっ…」
頭の上から姫の小さい喘ぎ声が聞こえた。ハンスは目をつぶったまま、懸命に舌を動かし、その肉塊を舐めまわし始めた。
「あん…あ…、あんっ、」
肉塊は、その下から滴り始めたぬるぬるした液体と、ハンスの唾液とで滑り、ハンスの舌からすり抜け唇や歯にぶつかった。その度に、肉塊は痙攣し、収縮するようだった。
「ああっ…ああっ、ああ~~~!」
姫が掴んでいたドレスの裾を離したようで、厚手の布の重なりがハンスの頭上に落ちてきた。姫の両手がハンスの頭をつかんだのがわかった。
肉塊はどんどん小さくなっていっているようだ。ハンスは小豆大になったそれを唇に含み、吸うようにした。
「ああ、それ…。そうよ、そのまま…そう…、んっ!」
ハンスの頭をつかむ姫の手に力が入った。ハンスの唇に包まれていた肉の豆が、口の中で溶けていくようにしぼんでいった。対象を失ったハンスの唇がそこから離れると、頭の上のドレスの裾が取り払われ、足音とともに遠ざかっていった。
そのあともハンスはしばらく、目を瞑っていたままだった。
「ハンス、目を開けなさい。」
また姫の美しい声が遠くから届き、ハンスは目を開けた。姫は絨毯の奥のバロック調の椅子に姿勢よく座っていた。
今までのことがすべて夢だったような気がして、ハンスは呆然としていた。
そのハンスに、姫はたおやかな笑顔を投げかけると、またドレスの裾をたくし上げた。栗色の茂みとその下の陰裂が目に入った。
ハンスはまた顔を伏せた。
「さあ、また最初からよ、ハンス。顔を上げて。」姫が言った。