連載

摘出を控えた子宮にちんぽを届けたくて突っ走ってきた女性が、ついに実感できた“愛”

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 しかし王子は「ああっ気持ちいい」と息を漏らしている。彼が楽しんでくれているようだったので安堵した。ガチャ君に「狭すぎる」と文句を言われた夢子のまんこに喜んでくれる者もいるのだ!

「これ痛い? 大丈夫ですか?」

 丁寧にひとつひとつ確認してくれる王子の心遣いが沁みる。

「痛くないよ。気持ちいい。幸せ」

 苦痛さえなければ夢子としては何も文句はない。それも含めてこの瞬間を味わいつくすのみだ。だが同時に彼と政略結婚するであろうどこかの姫君(夢子の中では決定事項)に思いを馳せずにはいられなかった。

(もし私が王子としか肌を合わせたことがなかったら「自分は不感症に違いない」と悩むだろうな。王子の結婚相手も、毎回これではさすがに欲求不満になるのでは)

「彼のことは大好きだけど、性的な満足が得られない。でも言えなくて……」という悩みはネットにもよく掲載されている。これまでは大好きな人と一緒で気持ち良くないなんて、あり得るのだろうか? と不思議だったが、今ならよくわかる。

どこに射精したらいい?

 気持ち良さがなかったわけではない。王子がぎゅっと抱きしめてくれたのは心地よかった。持病のせいで常に体が冷えている夢子には、彼の体温はうっとりするほどだった。

 王子がくり返す賞賛の言葉にも恩恵を受け、心を開きリラックスすることもできた。性的技術はさほどではなくても、それ以外の部分が優れていればぬくもりのある経験になるのだな、ということも夢子は同時に知ることとなった。

「気を抜いたらイキそう」

とのことで王子が尋ねた。

「どこに射精したらいいですか?」

 意味がよくわからないまま、夢子は答えた。

「ん? 普通に……
「普通にゴムの中でいいですか? 『お腹にかけてー』とかご希望あれば言ってください」
「ええー? そんなこと言う子いるの?」
「はい、時々いますよ」

 王子は優しい目をして教えてくれる。

(それはさすがに女性がAVに影響されすぎなのでは?)

という気がしたが、今はそれを論じる時ではないと考え、夢子は黙った。

帰宅後、痛みに襲われる。

 無事に完遂した王子が息を切らしている。

5分くらい休憩させてください」

 これは輝かしい成功だ! ぐったり横たわる王子の体温で暖をとりつつ、夢子は満悦しきって伸びをした。

(そんなに気持ち良くなれる男の人が羨ましい……

ともちょっぴり思いながら。

 ホテルの支払いを済ませた王子に夢子はお礼をいった。

「どうもありがとうございます」

 王子は最後までパーフェクトなプリンスだった。

「いえいえ、お礼を言われるようなことは何もしてませんから」

 なんてスマートな返答だろう。男がホテル代を四の五の言わずに払ってくれる、それだけでもこのご時世、貴重だというのに。王子はひらりと白馬にまたがると、軽やかに去っていった(ように夢子には見えた)。

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大和彩

米国の大学と美大を卒業後、日本で会社員に。しかし会社の倒産やリストラなどで次々職を失い貧困に陥いる。その状況をリアルタイムで発信したブログがきっかけとなり2013年6月より「messy」にて執筆活動を始める。著書『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』。現在はうつ、子宮内膜症、腫瘍、腰痛など闘病中。好きな食べ物は、熱いお茶。

『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』