連載

摘出を控えた子宮にちんぽを届けたくて突っ走ってきた女性が、ついに実感できた“愛”

【この記事のキーワード】

 家に帰ってパソコン机に向かったら突然お腹が痛みだした。苦痛の波に合わせて「ギャッ、ギャッ!」という声が出る。夢子はつっ伏し、痛みを逃そうと机をドンドンとこぶしで叩いた。かろうじてトイレに辿り着き確認すると、出血していた。

 出血が始まると夢子のそれは容易には止まらない。これから入院まで、痛みにのたうち回るのかと思うと夢子は気が重かった。痛みと出血は、さっき圧迫された刺激で子宮内膜症である俺が収縮しているせいだ。すまんな夢子。痛いだろ?

「大丈夫……私と子宮が協同作業した結果だし、むしろこの痛みはスウィート・メモリーズ……

 無理するな。痛み止め使ってくれ。で、夢子、どうだったんだ。お前としては、目標達成できたのか。

「王子が性的に興奮してくれたみたいだったから良かったよ! ホッとした! 普段みたいに家にひきこもってたら知らずにいたようなこともたくさん知れたし!」

 不況を実感したことのない若者や、クンニは嫌うのにお腹にかけて欲しがる女性がいる等の情報は、確かにパソコンに向かっているだけでは得られない。

子宮の力を試したかった!

 お前の性的興奮はなかったようだが、いいのか?

「性的興奮はなくても良い時間を過ごせたよ。今日は性愛というより博愛、人類愛を感じたなぁ。やっぱり大事なのは、セックスハウツーより人間性なのかねぇ。ずっとスマイルでいてくれて、こっちもモチベーションがあがったしね。私も見習わなくちゃ」

 夢子は慣れた様子で痛み止めを入れながら続けた。

「このプロジェクト、私は快楽を得るというところまではいかなかったし、ポルチオの検証もできなかった。だけど、これをやることで、私は病気や手術に呑まれるだけじゃなくて、こっちからも一矢報いたかったんだよね。病気に対して受け身で終わるんじゃなく、最後くらいは主体的に攻撃する側になりたかった。いままで子宮エリアの潜在的な力を引き出してあげられない人生だったじゃん? だからせめて最後くらい、子宮の力を試してみたかったんだ」

 もがいて、あがいて、みっともない姿をたくさん晒したし、このやり方が正しかったかもわからない。けど、自分の目標のために必死で自分の頭で考えて、100%の努力を注ぎ込んだっていう事実は、誰も私から奪えない。

 もうタイムアップだし、ここで一旦検証は終わるけど、最後に子宮との思い出を作れたことを、私は誇りに思える……それが良かったよ。この経験を活かして、ゆくゆくは、他の女性を助けてあげられるような人になれるよう頑張ろうと思う」

もうすぐ、お別れ。

 そういうことだ。

 これにて夢子と子宮である俺とのまんこにちんぽをジャストミートの旅はおしまいだ。夢子は確定申告と入院・手術の準備をしなきゃならないし、俺だって忙しい。残されてゆく卵巣さんたちと膣さんが開いてくれるお別れパーティに出席しなきゃいけないからな。

 この旅のあらましを子宮生の最後に皆とシェアできたことを俺は光栄に思う。「子宮を摘出したらポルチオのあれこれはどうなるのか?」「子宮がなくてもイケるのか?」「摘出後、夢子の性欲はどうなるのか?」「子宮摘出しても夢子の心は女のままなのか?」「子宮を取ってよかったか?」など、数々の疑問は残されたままだが、それらの件については、また機会があったら話せるだろう。

 それまでの間、女性疾患を抱えたすべての女性たちが、心安らかに過ごすことを祈る。いつか笑顔で再会したいもんだな。それができたら上出来だ。

摘出を控えた子宮にちんぽを届けたくて突っ走ってきた女性が、ついに実感できた愛の画像2

1 2 3

大和彩

米国の大学と美大を卒業後、日本で会社員に。しかし会社の倒産やリストラなどで次々職を失い貧困に陥いる。その状況をリアルタイムで発信したブログがきっかけとなり2013年6月より「messy」にて執筆活動を始める。著書『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』。現在はうつ、子宮内膜症、腫瘍、腰痛など闘病中。好きな食べ物は、熱いお茶。

『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』