
藤本美貴Instagramより
10月7日放送の『俺の持論』(テレビ朝日系)にゲスト出演した、藤本美貴(32)の発言が波紋を呼んでいる。
『俺の持論』は10月14日よりレギュラー放送開始予定のバラエティ番組で、藤本が出演した10月7日放送分はパイロット版である。公式サイトに記載されている番組概要には「今夜『俺の持論』を大発表…キレ者タレントたちが己の意見・主義・主張を“持論”としてプレゼン!!果たして“俺の持論”は今までの常識を覆し新たな価値観を生み出すのか!?」とあり、登壇したタレントが持論をプレゼン形式で語るのが見どころのようだ。先日放送を終了した『しくじり先生 俺みたいになるな!!』と同じスタッフが制作を手掛けているという。
10月7日の放送でも、ゲスト出演した藤本、伊集院光(49)、中田敦彦(35)がそれぞれの持論を発表しており、藤本が主張した持論は「女はちょっとブスが一番得する」というもの。しかし今回、注目されているのは、藤本の持論そのものではなく、むしろ藤本が持論を発表する直前の発言にある。
MCを担当するハライチの澤部佑(31)から、今までにこのようなプレゼンを行った経験はあるのかと尋ねられた藤本は「ないです! ないです! アイドルは持論を押し殺してなんぼですから」と回答し、「着たくない衣装も着、なんじゃこらってやつも歌い、中には『なんだろこれ』って思い過ぎて楽しめた部分はありましたけど」と続けたのだった。いわゆるぶっちゃけトークというやつだ。
藤本の発言に、『ガールズちゃんねる』などのネット掲示板やSNS上では批判的な意見が相次いでいる。「歌作った人に失礼じゃない?」「そのおかげで芸能界にいるだろうに」「アイドルになりたくてなったくせに」「過去の事なら何でもぶっちゃけていいと思ってるんだろうか 当時あなたを応援していた人の思い出を汚す真似をして、一体何が楽しいんだろうか」などなど、藤本に対して自己責任やモラルを問い、さらにはファンを裏切りがっかりさせているといったニュアンスの声が目立つ。また、かつて藤本がモーニング娘。のリーダーに就任して間もない時期に現夫の庄司智春(41)との交際をスクープされ、グループを脱退したことを持ち出し非難の目を向ける書き込みもあった。
芸能界デビューした当時、藤本は17歳。自分で選んだ道だったとしても、どのような路線でどのようなパフォーマンスを行っていくかの方針は、彼女が一人で決められるものではない。決定権を持っているのはプロデューサーや上級スタッフだ。といってもアイドルを演じるのは中身が空洞の人形ではないので、自分自身の意見と相反するような活動内容に躊躇いや疑問、あるいは反発を抱くことは当然あるだろう。自分の力だけでメジャーなアイドルをやれる仕組みなどなく、事務所やプロデューサーといった協力者が必要不可欠なのもまた事実で、その辺りの“価値観の擦り合わせ”に苦心している、かつてしていたという芸能タレントは少なくないのではないか。
そんなことはファンも承知のうえで応援しているものだと思いきや、案外そうでもないのかもしれない。アイドルは「持論を言ってはいけない」暗黙のルールに納得して、ファンと共同でファンタジーを作り上げているにしても、「イヤイヤやっている」と悟られてはいけない。悟られてしまうと途端にバッシングを浴びる。だからアイドルとして歌ったり踊ったりしている当時、彼女たちがそのような自分の本音や葛藤を表出させることは基本的にない。
しかし自分で納得できないまま仕事をすることも、共感できない歌を歌うことも、一度アイドルとして(プロジェクトが)走り出してしまえば勝手に止まることはそう簡単にできないのだから仕方がない。「イヤイヤやられていたなんて悲しい」とショックを受けるファンも出てくるが、そもそも活動内容の全部に納得し、やりたくてやっているアイドルなんているだろうか。決して素顔ではない、お客さんに相対しての笑顔に“心から”を求めるのは、あまりに期待が大きすぎはしないか。
そして「アイドルは持論を言ってはならない」という暗黙のルールについても、本当にそうなのか、そろそろ検証が必要だろう。自分の主張を持つアイドルは生意気で小賢しい女だと判断されて人気が出ないのか、それともそう思いこんでいるだけで実際には大衆にウケるのか。アイドルとして求められている女性像は一種類ではないはずだし、自己主張も裏表もない透明な女性など存在しない以上、今、現役で活動するアイドルには、藤本美貴のような諦めを捨ててほしいと思うのである。