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子の病気=母親に原因あり! 「母原病」の源流をたどるとトンデモ医師にたどり着く

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 では、母原病を治すには何をすればいいのか? 久徳医師が現場で行ってきたというぜんそく治療の実例も見ていきましょう。

●2歳でぜんそくの発作が始まったというK君(小学3年生)

 親はお風呂屋で忙しいという背景があることから、「自分の子の相手をして、イキイキさせ、たくましい子にすることを忘れていたのです」と分析する久徳医師。そんなT君が久徳医師の元に連れられてきた時は、小学校3年生。病歴や生育環境から推察し、「医者の誤った指導と母親の無知との合作」で難治性になるのだ! という結論を導き出していますが、それ思いっきり後付けっぽ~い。治療では、親から離すことを目的に入院させてもなかなか改善の兆しが見えず、それならばと祖母の雑貨屋での手伝いを提案。「大人の自覚を深めてやれば、発作は消えるはず!」と考えたのだとか。

 その結果3カ月で発作が消え、「もう、無気力消極性にさようならです」と久徳医師大満足。母親の育児で〈体質〉が決定づけられると語っているのに、イキイキとたくましさを身につけるとあっさり病気が治るとは、摩訶不思議ですね? 症状がピークとなる年齢を過ぎ、年齢とともに自然と治まってくるケースも多いと言われる小児ぜんそくの〈自然治癒〉……という言葉も頭をかすめるエピソードです。

自己中で子どもっぽい母親を持つT子さん(5歳)

 お次は2歳から発作が始まり、特に土日月末になると集中的に発作が起こっていたことから、母原病の疑いをかけられたT子さん(5歳)です。アレルギーもあるけど、それ以上に心理的な問題が影響していると指摘し、彼女のことを「不幸を約束されて生まれてきた」と表現。こんな未熟な母親のもとに生まれて、あなたは不幸決定! と短絡的に決めつけるのです。

 治療では、「知能は低いわけではないが、たくましさの脳に故障がある」という(しかしすごい表現!)母親自身を成長させるため〈行きつけの店で借金して買い物をしろ〉と指示。当然戸惑う母親に久徳医師は、「それができないのはお母さんの心がたくましくないからだとはっきり狙いをいいました(原文ママ)」。〈お母さんの心の訓練〉とのことですが、これってもうぜんそく治療の範囲を超えてやしませんかね~。これがまかり通る時代の、大らかさよ(悪い意味で)。人間として成熟していない母親を〈病原体〉呼ばわりしていた久徳医師こそ、この国の子育てしにくい空気を作った、病原体のように思えます。

 ちなみにT子さんは、その後ぜんそくの症状は治まったものの、こじれた母子関係は改善されず、15歳になると登校拒否、家庭内暴力とトラブルが続いたとか。久徳医師にSOSを求めてきた母親も相変わらずのキャラなようですので、ぜんそくは治ったものの〈母親をたくましくさせる〉治療の効果はなかったって話!?

食欲不振の子ども

 相談にきたガミガミ系のお母さんに、「男の子があんまり怖いお母さんに育てられると、青年になって同性愛者になりやすいことを知っていますか」とアドバイスしたというエピソードもありました。これもしみじみと同性愛者に理解のなかった時代を感じさせます。

保育センターで自閉症と診断された子

 「お母さんが異常に気付いていれば、K君は普通の男の子に育っていたはずです」とぶった切り、インドのオオカミ少女(後年作り話だったと判明)の例を引き合いに「人間がことばを身につけていくいちばん大切な時期に、根本的に誤って育てられてしまっているためです」と解説。普通に育児しているお母さんたちと、世界のびっくりニュースを同列にされてもなあ~。

父親主義と母親主義の二項対立

 さらにバカバカしさも最高潮となるのが、次のお説です。久徳医師は、母原病が蔓延し始めた原因をこう考えているとのこと。

・経済的に貧しい社会は父親主義。全体的に勤勉で、節約することが良いという価値観。すると無意識のうちに団結力が強くなる。大家族制度が維持され、子育ても上手くいく。

・経済が成長して豊かになると母親主義になる。勤勉よりも楽しいことが良いことで、節約よりも浪費が良いと考えるようになる。団結が少なくなり、反抗反発が多くなる。そして地域の絆が弱くなり、大家族制度が崩壊する子育て失敗!

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山田ノジル

自然派、エコ、オーガニック、ホリスティック、○○セラピー、お話会。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のないトンデモ健康法をウォッチング中。当サイトmessyの連載「スピリチュアル百鬼夜行」を元にした書籍を、来春発行予定。

twitter:@YamadaNojiru

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