
(C)shiqchan
あの日、あたしはmessy編集長に「しQちゃん、アウトレイジ観ました?」と聞かれ、「今公開中のは観てないけど、しゃべくり007に出てた白竜の笑顔にはズキュンときたキュウ」と軽く答えたキュウ。
「では、笑顔が可愛い元ヤクザの人の話聞いてみましょう!」
え? ちょっと待てキュウ。何の覚悟も出来てないのに、あれよあれよという間に元ヤクザの人にインタビューをする流れになっちまったキュウ……!!!
笑顔が可愛いからって、“元”が付いてるからって、ヤクザに今まで接触したことなんてないから怖いキュウ!!! 殺されるってか沈められたりまんこズタボロにされたりしないキュウ!? でも、ヤクザの実態って何にも知らないから、何をして稼いでるとかは、気になるは気になるキュウ……(ゴクリ)
あれこれ考えているうちに、インタビューを行う部屋に着いてしまったキュウ。
「こんにちは、よろしくお願いします」
そこには、ガタイのいい長身の男性が。長袖を着てても首や手の甲から見えるタトゥーは、きっと全身にあるキュウ……髪型はツーブロックで、パッと見はただのオシャレな(ちょっとタトゥーの量が多い)お兄さんぽいキュウけど、でも、でも……
「元ヤクザのSです」

この男、極悪人キュウ…。(C)しQちゃん
――キュキュウ~~~~あんたが元ヤクザキュウ~!! は、初めまして。今日はSさんが元ヤクザということで、ヤクザの実態を聞きたいと思うキュけど、本当に聞いちゃって大丈夫キュウ……??? 元幹部に追われたりしてないキュウ?
「全然いいっすよ、大丈夫」
――さ、さんキュウ……。Sさんは現在はおいくつキュウ? 出身は?
「46歳です。東京の品川出身です」
――シティボーイ。ヤクザ歴はどのくらいだったのキュウ?
「ん~約20年くらいですかね」
――に、に、20年! ベテランヤクザじゃないかキュウ!!! じゃあ、若いときからヤクザ生活に入っていたってことキュよね? 生い立ちからヤクザに入るきっかけまでを聞きたいキュウ。
「ヤクザになったきっかけは……、ちょっと話すと長くなるんですけど。元々、小さい頃から渋谷で遊んでたんです。父方のおばあちゃんが、渋谷のマルイってわかります? あそこの土地を所有していて、そこでペットショップと熱帯魚屋さんを親父がやってたんです。それで、子供のときはしょっちゅう渋谷で遊んでて」
――資産家じゃねぇかキュウ! お坊ちゃまだから小学校から慶應幼稚舎みたいな?
「いや、俺は慶應じゃないし中卒ですね。でも、俺以外の家族はみんな慶應出てるみたいな優秀な家系で。両親の方針で、幼稚園からアメリカンスクールに行ってたんですけど、小学校3年のときに両親が離婚して、急に公立の小学校に転校することになったんです。それが馴染まなくて、素行が悪くなって、手に負えないからって中学の時に茨城のばあちゃん家に預けられたこともありますね」
――離婚して急に貧乏になってグレたキュウ?
「いや、そういう感じでもなかったかな。父方のばあちゃんに『あんたは強いんだからお母さんを守ってあげな』と言われて。ばあちゃんと母親の嫁姑関係は良好だったんですよ。親父が勝手にばあちゃんの土地を売ったりしてたもんで、ばあちゃんは息子である親父のことを嫌ってて、母親の方を好いてたんです」
――公立の学校で同級生と合わなくてグレたキュウ?
「学校のヤツらより渋谷の不良連中と遊んでるほうがずっと楽しかったんでね。中学出てからは、当時の関東連合と敵対してたグループに入って、バンドやったりしてました」
――渋谷でバンド。オシャレ系キュウ? でも関東連合と敵対してたグループって……要するにチーマー的な?
「まあ時代的にはそんな感じですね。バンドやってるし、クラブで暴れちゃうし、みたいなメンツで。すぐ人を刺しちゃって少年院に入った奴もいましたね」
――すぐ刺さないでキュウ……! そこでSさんはリーダーだったキュウ?
「リーダーではないんですけど、1軍でした。1軍2軍3軍とあって、『バンドをやってて女にモテてる』『喧嘩強い』『ギャグセンスがある』の2つ以上に当てはまる奴しか1軍にはなれないんですよ」
――すぐ人刺しちゃうようなグループなのにギャグセン重要視するキュウね。そのカーストは学校と似てるキュウ。チーマーからヤクザに?
「10代のときは全然ヤクザに興味はなくて。よく誘われてはいたんですけどね。渋谷のセンター街で露店を始めることになって、ちょっと縁が出来たというか。渋谷って住吉会系のシマだったんで普通は露店とか開けないんですけど、当時すごい勢いがあった山口組傘下の組(※ヤクザの事務所ってことキュウ)に俺の先輩が入ることになり、それで無理くり渋谷に露店開く場所を作ってもらったんです。そこで俺は先輩から2店舗くらい露店を任されて」
――露店って、何を売ってたキュウ? 謎のシルバーアクセとか?
「その頃は携帯電話がパカパカ(2つ折り)の時代で、ケースとかなかったんで、外側に貼るシールを自分たちでデザインして刷って売ってました」
――懐かしキュウ~、それあった、あったキュウね。
「それと、合法ドラッグを売ってました。GHBというのが流行ってて。早稲田大学のスーパーフリー事件で話題になったドラッグなんですけど、当時はまだ本当に合法だったんですよね。レイプドラッグとも呼ばれてたかな。柑橘系のお酒に混ぜちゃえば分からないし、飲んだらテンション上がって身体が言うこと聞かなくなる。それがアホみたいに儲かっちゃって。目薬みたいな少量で3000円くらいの値段にして、原価は2Lで2000円なんで儲かる儲かる」
――レイプドラッグを買う人がそんなに大勢いるから儲かったわけキュウよね。怖すぎるキュウ……。
「10代の時はそんな感じで金を稼いで、バンドもやって、DJもやって、ヒステリックグラマーのショーのモデルとかもやってましたね」
――こんな不良なのに人気ブランドのファッションモデル!!! ヒスグラおいおいキュウ~~~! てかSさんのそのタトゥーって、いわゆるTHEヤクザな和彫りではないキュウけど、ヤクザになってから彫ったキュウ?
「10代でバンドやってる頃にいれ始めましたね。今はもう全身入ってますよ。最初は自分で彫りたいなと思って独学でやってたんですけど、上手くいかないので知り合いの彫り師に教えてくださいって頼んで教えてもらったんですよ」
――彫り師に弟子入りしたキュウ?
「弟子入りっていうか……タトゥーのデザインって1からやるのは難しいじゃないですか。お店には下絵がたくさんあって、トレーシングペーパーで下絵を(肌に)貼って彫れば、絵が下手でもある程度できちゃうんですね。これイケるんじゃね? と思って、そこの彫り場にある下絵を勝手に全部コピーして、機械を1つ盗んで、勝手にバンドマン相手に彫りの仕事を始めちゃったら、すんごい怒られましたね~」
――窃盗だから怒られるの当っったり前キュウ!!! 弟子入りさせてやった彫り師、恩を仇で返されまくり!
理不尽な監禁生活とシャブ常用で組員確定
――不良ってバイクで暴走するイメージだけど、それもやってたキュウ?
「いや、バイクは乗ってなかったですね。車は乗ってたけど、すぐ人を轢いちゃうんで免許取消になっちゃって」
――すぐ人を轢かないで~~~。不注意すぎキュウ!
「いや、不注意とかじゃなくて人を轢こうとしてして轢いてるんで。そいつを狙って轢いてるんでね」
――故意!! そんなんやってて、少年院や刑務所に入ったことはあるキュウ?
「少年院はないですね。10代の頃から何度も逮捕されてますけど、鑑別所が3回、少年院の一つ手前の試験観察委託っていうのにも入ったことあります。その時は静岡で農家の仕事をさせられたけど、脱走しました(笑)」
――ヒィ! 脱走! なんか、あたしの悶々とした根暗な10代とは180度違いすぎて、世界観がわからないキュウ。なるべくしてヤクザになったというのはすごい伝わってくるけど……20代になって本格的にヤクザの事務所に入ったキュウね?
「ですね。まあいろいろ俺も渋谷で悪いことをやってるもんだから、山口組系の人がずーっとずーっとスカウトをしてくるんです、組に入れと。『ウチの事務所にSを呼べ』って名指しでスカウトしてくる。入る気はなかったので、ずっと断り続けてましたけど」
――断り続けていたのに、なぜ入ることになったキュウ?
「俺の24歳の誕生日パーティーを友達が開いてくれて、ヤクザの事務所に入ってる先輩がお祝いに来てくれたのが直接的なきっかけですね。二次会で渋谷センター街の居酒屋を貸し切って飲んで、居酒屋を出て路上で三次会に行くか~ってなってる間に、ヤクザの先輩が通行人と喧嘩を始めちゃったんです。あちゃ~と思って、俺は後輩に『(止めに)行け』って言ったのに、後輩たちが『(加勢に)行け』だと勘違いしたせいで、乱闘騒ぎになっちゃったんですよねえ。で、警察が来まして、俺は騒ぎにも入ってないし殴ってもないのに警察署に連れて行かれ。喧嘩の発端になった先輩がヤクザだっつーことで、俺も準構成員だと思われて警察署で20日間拘留されたんですよね」
――なるほど。それで……?
「20日後、先輩と一緒に解放されて、『親分が怒ってて謝りに行かなきゃいけないんだけど、Sも連れて来いって言われてるから来て』と頼まれた。そんなの嫌だから断ったけど、よくよく話を聞くと、俺の可愛がってた後輩たちが喧嘩騒ぎの日から家に帰ることも許されないまま、組の事務所で当番させられてるというんですよ。そいつらを解放してやらなきゃかわいそうだし、仕方ないのでいったん事務所に行くことになりました」
――ふんふん。それで……?
「いつも俺がそこの事務所に行くと歓迎ムードだったんですけど、その日ばかりはピリピリしてました。後輩たちが俺の誕生日パーティーの時に着てた服のままで仕事をさせられてて、俺の顔を見るなり『Sさぁーん!』って、泣きながらすがりついて来ました。その事務所の親分に呼ばれて個室へ行ったら、『どうするんや?』と聞かれて。俺のせいで迷惑をかけられたというんですよ。どうするも何も自分は喧嘩もしてないし、むしろ先輩の喧嘩を止めに入った方なので……と、怖いながらも正直に言いました。そしたら親分じゃなくて幹部みたいな人に思いっきり殴られて。『お前は喧嘩してなくても喧嘩に参加したお前の後輩はどうするんだ? お前は逃しても、あいつらは貰うからな』と通告されました。『それは出来ません。どうしたらいいんですか?』と聞くと、『あいつらを解放してほしかったら、お前が組に入れ』と言うんで……」
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