
Photo by Ellie Nakazawa from Flickr
人がトンデモ沼にハマった時、最も困惑するのは、簡単には縁を切ることのできない家族です。トンデモさんはネタとして距離を置きながら冷やかしで観察する分にはいいけれど、身内となるとそうはいかないのが現状でしょう。トンデモを信じ、常識クラッシャーな言動に心と体が蝕まれ、時には家族断絶へ……。
そんな実体験をお届けする新シリーズ「身内がトンデモになりまして」を、当連載にて始めさせていただきます。第1回目は、「〈義妹〉がトンデモになりまして」を、お送りしていきましょう。
〈義妹〉がトンデモになりまして
「義妹のような人が医療に携わり、また子供を育てていることが、同じ母親として恐ろしくてたまりません」
そう連絡をくれたのは、夫の妹(以下、義妹)が超ヘビー級の〈自然派ママ〉になってしまったというM子さん。「義妹の発信する自然派育児の情報が原因で、いつか被害者が出るのでは」と、ここ2年ほど悩み続けているのだとか。M子さん自身は、現在1歳の子供を育てている20代主婦。友達には子持ちが少なく、一番身近な〈ママ友〉的存在が、半年ほど先に出産した義妹だったといいます。
M子さん(以下、M)「私は妊娠中つわりがひどく、後期には切迫早産で要安静、不安だらけの毎日でした。そんな時、義妹からこんなLINEが来るんですよね。いろいろな情報を知って気持ちが落ち着いた今あらためて見ると、どれも完全にトンデモです。でもその時は“このツラさから解放されたい”という一心で、信じてしまっていました。義妹は准看護師として働いていたこともあるので、医療関係者の言うことだから信頼できる気持ちもあったかもしれません」
こんなものを信じていいの?
義妹からM子さんに送られてくるLINEの内容は、次の通り。
「あなたの体調が悪いのは、界面活性剤が入っているシャンプーを使っているせい」
「冷えは体に悪いよ。今度、重ね履き用の靴下をあげるから使ってみて」
「もしかして、牛乳とか砂糖とか食べていない? 毒だから絶対にダメ!」
「乳製品を食べると心が死ぬ。野菜をたくさん食べて心をよみがえらせないといけない」
「子供が生まれたら絶対に母乳。母乳で育てないと自閉症や発達障害になるし、親を愛さなくなる」
こんなLINEが、多い日は1日に10件以上送られてくるのだといいます。
M「産後は母乳育児をしていましたが、私に何かあった時のためにと、粉ミルクも常備していました。そのことに対しても、『ありえない。人工的に作ったものほど体に害なものはない。それを使ったら、子供はもうM子ちゃんを愛さなくなる』と言われてしまいすごくショックで、絶対に母乳じゃなきゃなんて思い込んだりして。今考えると、一体何を言っているんだ!? と、面白くなってくるくらいなんですけどね。義妹は直に会うと物腰の柔らかい可愛らしい人ですし、『つらいよね。わかるよ』と同調してくれるので、つい話をしてしまうんです」