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子宮内膜症持ちの女性が考える「いつか子宮を摘出するかもしれない日」

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 Hysterectomyを英語でネット検索してみれば、なるほどこのように書いてある

Hysterectomies also are used to treat……endometriosis.
(子宮摘出手術は、子宮内膜症の治療に使われる)

 内膜症の治療としての、子宮摘出。日本語ではなぜかあまり目にすることのない情報だが、良心的な本になら載っているし、英語圏のものになら当然のこととして記載してある。結果として、夢子の中にはごく当然の情報としてインプットされていたのだった。

 今の医療で、子宮内膜症は閉経まで完治しない。子宮内膜症女性にはツラい現実かもしれないが、みんな安心してくれ、大丈夫だ。

 自分の病気が治らないという切なさは、たしかにずっと胸に存在し続けることだろう。だがそれを脇に置いて次のステップに進むことは、子宮内膜症女性なら誰にでもできる。

完治よりも、QOLの向上

 夢子も初めて内膜症が治らないと知った時は、さすがにショックを受けた。だが時間とともにそれを受け入れることができた。病気とどう折り合いをつければ心地よく生活できるのか、ということに心が占められるようになったからだ。

 なおかつ、喜ばしいことに、子宮内膜症は生活を送れなくする恐ろしいものではあるが、死に至る病気ではない。だから日常生活の質さえあがれば、完治したかどうかなど些細な問題なのだ。

 どれだけ嘆こうと、病気が完治しない事実は変わらない。OK、ならば最適な対処法は? 悲しむ時間を、病気を研究する時間に回す。そうやって病気と戦う術を身に着けるのが一番だ。夢子はそう考えた。

 何を工夫すれば痛みが軽減する? そもそも痛みを起こさないためには? 自分にとって鎮痛剤やピルを飲む最適なタイミングは? 子宮内膜症医療は今、どんな状況にある?

 病気の真実(たとえそれが不都合なものであっても)と向き合えば、生活は少しずつ改善する。そうやって過ごすうちに、病気も日常の一部に溶け込んでゆく。生活の質が少し上昇するたびに、夢子は少しずつ自信と力を得ていった。

摘出を選ばなかった理由

 ピルを使い、自分で工夫しただけでこんなに過ごしやすくなった。最終的な治療である子宮摘出に思いが及ぶのはごく自然の流れであった。そもそもの痛みの原因である出血をもたらす子宮の摘出を選んだら、どれだけ私の人生は生きやすくなるだろう。

 夢子にとって子宮摘出を「自分の人生を前向きに生きるための有効な選択」と捉えることは、しごく当然のことだったのだ。

 にも関わらず、これまで摘出に踏み切らなかったのにはワケがあった。

 やはり臓器ひとつ摘出するとなると、おおごとだ。俺(子宮)を失えば、子供を妊娠・出産する能力も失う。薬や生活の工夫のおかげで徐々に内膜症の症状は落ち着き、生活や仕事もこなせるようになってきた。なんとか日常が送れているうちは「時間稼ぎ」と捉え、人生を頑張ろう。今はそんな気なくても、いずれ私にも結婚・出産したくなる時もあるかもしれない。どんな人生展開にも対応できるように、子宮は一応、温存しておこう。

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大和彩

米国の大学と美大を卒業後、日本で会社員に。しかし会社の倒産やリストラなどで次々職を失い貧困に陥いる。その状況をリアルタイムで発信したブログがきっかけとなり2013年6月より「messy」にて執筆活動を始める。著書『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』。現在はうつ、子宮内膜症、腫瘍、腰痛など闘病中。好きな食べ物は、熱いお茶。

『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』