
(C)緑丘まこ
わたしはオナニーが大好きだが、男性もまたオナニーをする生き物である。
頭では理解していても、自分の彼氏に限っては嫌だ、と心の中で拒否をしている自分がいる。
先日、妊娠中の姉から電話があり、世間話や姉の愚痴を延々と聞かされていたのだが、その話の中で姉がこう訴えてきた。
「旦那の精液まみれのティッシュがゴミ箱に捨ててあった。こんなの初めて」
……わたしも、交際中の彼・サトル君がゴミ箱に捨てたであろうソレを発見した経験があった。その時は、めちゃくちゃ発狂した記憶がある。
「ああ、あるある。嫌だよね~、共用のゴミ箱に捨てるとかデリカシーないよね。隠してくれたらいいのにね~本当!」
相談してきた姉よりヒートアップするわたし。だが姉は拍子抜けすることを言ったのである。
「いや、そうじゃなくてさ、旦那、もうすぐわたしに赤ちゃん産まれるし、他にも色々あってお金かかるから、とうとう風俗行くの我慢しだしたんやわ(笑)。だからとうとう自分で処理するようになったんやわ」
……そっちかい!!(笑)
義兄がオナニーしてることへの愚痴ではなく、風俗を我慢して自分で処理する義兄に感心するような口ぶりだった姉。実際、話してる時の機嫌もものすごくよかった。 義兄が妊娠前風俗通いをしていた、という証拠はないらしく、姉の仮想であるが……。
彼氏のオナニーを許せない理由

(C)緑丘まこ
わたしは、なんとなく姉とわたしの価値観に距離を感じてしまった。 いや、価値観というより、心の余裕の差かもしれない。だが、姉に限らず、わたしの友人も「彼氏のオナニーは仕方ないし受け入れる」といった意見が多数だった。
知り合いの主婦の場合、奥さんが夫婦共用のパソコンの検索履歴から旦那さんがオナニーのおかずにしたと思わしきAV動画をこっそり観ているという。その奥さんいわく「旦那さんの好みまで知れるから、いい~!」そうだ。旦那さんのおかずまで見る上級者も存在するのだ。
今付き合っているサトル君とは、交際歴1年8カ月になるが、最近は付き合ったばかりの頃よりも、男性のオナニー事情を理解できるようになったと思っていた。
しかし、それでも関西や北陸の実家に何泊かで帰る際、一人東京に残してきたサトル君のオナニー事情を心配してしまう。
ぶっちゃけオナニーはいい。だけど、自分以外の女性の裸を見て興奮している彼の姿を想像するだけで嫉妬で頭がおかしくなる。オナニーするなら、わたしを想像してくれ!
……分かっている。現実はそんなに甘くないと。そもそもわたし自身、オナニーする時、別に愛するサトル君をおかずにするわけでもないし。そして、男性からに「彼女とセックスするのとオナニーは完全に別物」とさんざんよく聞かされてきた。
いわば、食べ物に例えるとイタリアンと中華くらい別のものなのだろう。
男性がオナニーするのは一種の生理現象にすぎない。
そうとわかっていても、サトル君が他の女をおかずにオナニーするのは、想像するだけでめまいがする。
なので、わたしが家を空ける前夜はなるべくセックスをしておく。サトル君の精子をできるだけしぼり出しておくのだ。
そうすると、少しは安心できる。
一方、矛盾しているが、わたし自身はオナニーを毎日の日課のようにする。
ただ、わたしのオナニーのおかずは女性の裸なので、サトル君以外の男性でオナニーすることがないため、罪悪感(?)は一切ない。
もし、サトル君がゲイポルノを観て興奮してオナニーしていたとしたら、多分わたしは嫉妬しないだろう。自分と違う性別なのだから。わたしがオナニーするケースと同じだから。
わたしには無理だったのだ。「彼氏のオナニーに理解ある寛容な彼女」になることも、それを演じることさえも。
貴重な精液、オナニーで出すなら、わたしのまんこに出してよ
例えば、わたしが何泊か家を明ける際、サトル君にこう言っていた。
「しばらくわたしがいないからオナニーするんでしょ?」
サトル君の答えは決まってこうである。
「してません。同棲してからオナニーなんてしたことないから」
嘘つけー! じゃあ、あのゴミ箱の精液まみれのティッシュはなんだ!? んんー? あの精液特有のツンとした匂いでばれてらー!
……という心の叫び声を押し殺して、余裕の笑みを浮かべてこう言っていた。
「いいのいいの、もう隠さなくてもいいのよー! 男の子だもん、オナニーするのは当たり前! 健康な証拠よっ」
と、サトル君の背中をポンポン優しく叩いた。
そう口にすると、わたしはいかにも自分が男性を理解できるいい女になれた気がした。
しかし、やっぱりどうしてもソワソワしてしまうのだ。
例えば、サトル君が休みでわたしがバイトの時
(ああっ、もしかしたらサトル君、今頃家でエッチな動画を観ておちんちんシコシコしてるんじゃ……)
(いや、いや、いやー!! その貴重な精液、オナニーで出すなら、わたしのまんこに出してよー!!!)※もちろんコンドーム越しに。
結論、わたしはなれなかったのだ。彼氏のオナニーを受け入れる女に。
このもどかしい気持ちはどうしたらいいのだろう。
いまだに答えはわからない。
だけど、ヤ○ー知恵袋で「彼氏 オナニー 嫌」と検索すると、わたしの気持ちを代弁するかのような彼氏(旦那)のオナニーが嫌で仕方がない同志たちの投稿がわんさかヒットするので、心が救われる。
そして、その投稿を読むたび、安心する一方、心の中の“冷静なわたし”が「ふふふ、もう、男性がオナニーするのは健全なことなんだから受け入れなさいよ」と言うのであった。
まるで自分自身に言い聞かせるように。