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子宮摘出手術前に楽しく見送ろう! 「子宮さよならパーティ」を開いてもらいました

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 キャリーがお茶を出してくれた。

「今日はめでたいな。自宅だと思ってくつろいでくれ」

 いやそれはさすがに無理だと思いつつ茶をすすると、美味しいがちょっと変わった香りがする。

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 聞くと、キャリーが自分で葉を摘んで手作りした柿の葉茶だそうだ。そんなもの一体どこで摘むのだろう、そしてお茶とは手作りできるものなのか。茶摘み女の格好をしたキャリーを想像して、夢子は吹きだした。

「ちょうどよく発酵した味噌もある。これも私が仕込んだ。3年ものだ」

 絶品だから手作りみそも試食しろしろとキャリーがうるさい。美味しそうなお料理やケーキが並ぶ前で、夜景を見ながら、なぜ、こうじ菌による発酵食品なのか。キャリーに遅れてやってきたロハスブームか。しかしこれがキャリーである。長時間勤務の合間に柿の葉を摘んだりハプバーに通ったり味噌を仕込んだり、彼女は謎を極める。

手術を決めたことを、尊重してもらえた

 夢子は、ケーキ入刀の前に子宮摘出にかける思いや今後の展望を語った。招待客たちに受け入れられるのだろうかという夢子の心配は杞憂だった。フレンズのみなさんからは「そういう決断をしたのね。頑張ってね」という空気しか感じなかったからだ。

 先ほどの警戒心はどこへやら、夢子は心が和み「みんなだいすきー!」という気持ちになっていた。ひさしぶりに人から受け入れられたような気がしたからだった。夢子が求めていた、カラッと呼吸しやすい空気がキャリーの部屋には確かにあった。

 ケーキに描かれた俺をみんなが「かわいい、かわいい」と絶賛してくれる。俺はおおいに良い気分だ。夢子が怪しんだ柿の葉茶と味噌にも、セクシーたちは積極的に手を伸ばし、舌鼓を打っている。

「ハプバーの人々は意識が高いからな。無添加食品はむしろ好まれるのだ」

 キャリーが教えてくれた。ロハスフレンズでもあるんだな。

「やっぱハプバーに通う人たちは、洗練されてるんだね!」

 夢子は感心した。

手術に向けて、決意を新たに。

 深呼吸させてくれたキャリーに夢子は感謝した。思えば子宮内膜症とわかってから、友人だけでなく、これまでいろんな人たちに支えられてきた。子宮内膜症に関する貴重かつ膨大な情報を無償でネットにあげてくれる患者団体。医療関係者にだって、たくさんの恩恵を受けている。保険診療が効かない時代からピルを処方してくれた医師もいた。今回の手術につながる紹介状を書いてくれた医師もいた。

 孤独を感じるなどと拗ねたりもしたけど、ここまで来れたのはいろんな人たちに情報をもらったり、支えてもらったりしたおかげだ。ひとりじゃない。感謝して、つらかった経験も社会に還元できる人になろう。夢子は決意を新たにしたのだった。

摘出を控えた子宮にちんぽを届けたくて突っ走ってきた女性が、ついに実感できた愛の画像2

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大和彩

米国の大学と美大を卒業後、日本で会社員に。しかし会社の倒産やリストラなどで次々職を失い貧困に陥いる。その状況をリアルタイムで発信したブログがきっかけとなり2013年6月より「messy」にて執筆活動を始める。著書『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』。現在はうつ、子宮内膜症、腫瘍、腰痛など闘病中。好きな食べ物は、熱いお茶。

『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』