インタビュー

早めの閉経だけど、楽になった。46歳で閉経した久美子さんの充実した毎日

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更年期

向き合います。更年期世代の生と性

 「セックスに関する話は苦手なの」――久美子さん(53歳・芸能事務所マネージャー・未婚)はインタビュー開始早々にそう切り出した。更年期の症状や心境、そして性生活について話を聞かせてもらうこのインタビューだが、久美子さんは性生活のことは詳しく話せない、ということだ。

 中学・高校の頃、いわゆる性の目覚めと言われる時期でも、仲の良い友達ともセックスに関する話をすることは一切なかったという。そうなった背景はおそらく幼い頃からの母の徹底的な教育が影響しているのではないかと久美子さんは自身を分析する――。

性に関する情報を完全にシャットアウトされていた少女時代

――お母様はどのような教育方針をお持ちだったんでしょう?

「たとえば家族でドラマを観ているとするでしょ? キスシーンになったとしたらすぐに『お風呂に入ってきなさい』って言うタイプ。あとね、家にある雑誌類で性に関する情報が載っているページは、子供が手に取る前に母がすべて切り取っていました」

――事前に全部ですか!?

「そう、徹底して。小さい頃は『お母さん、ここになんかこぼしたからページを破ったのかなぁ』とぼんやり考えていたんだけど……成長するにつれ知恵がつくから目次で確認するようになるの。それで『あぁそういうことか』と」

――性に関する情報を遮断されていたんですね。そうされることに疑問を感じたりは?

「まったく。5歳下の弟がいるんだけど、彼が思春期に入る頃には私も母と一緒に新聞や雑誌のそういう記事をせっせと切り取ってた。弟の目に入ったら大変だ、って(笑)。だから弟もいまだにそういうことにあんまり知識がないかも……」

――まさか! 弟さんは40代で会社にお勤めなんですよね。もう十分知り尽くしていらっしゃるかと。

「でも彼女もいたことないし、同僚との付き合いもないから……。私自身も、中学3年まで子供はどうやってできるのか詳細を知らなったし」

――中学で性教育の時間があったかと……。

「セックスについて自分は完璧に理解しているつもりだったから、なぜか。だからあまり真剣に聞いてなかったのかも。とにかく裸で抱き合いさえすれば子供ができると思ってたんです。でも中学3年生のときかな、誰かが『初体験は痛いらしい』って話してるのを小耳にはさんだのね。それで疑問がわいたの、抱き合うだけなのになんで痛いの?って」

――当時はインターネットもないですからね、自分でササっとは調べられない。

「そう。で、そのときは女友達に詳細を聞いて真実を知ったのね。あのときぐらいかなぁ、そういう話を自分からしたのは。だからいまでもその手の会話は苦手。セックスに関する専門用語っていうんですか? そういうのもあまり知らないから話もはずまない」

――これまで男性と交際されたことはありますか?

「はい、もちろんありますよ~」

――それは肉体関係のあるお付き合い?

「ええ、そうです」

――今はお付き合いしている方はいらっしゃらない?

「……ふふふ(笑)。いませんけど、そうですね、ときめきはあるので、その話はまた後で」

――では話を変えて。閉経が早かったと事前におうかがいしていますが。

10年前。43歳のときです」

――たしかに平均閉経年齢より少し早いですね。

「私、それまでは生理が順調で一日たりとも遅れたことはなかったの。生理痛は酷いタイプだったけど。それで43歳で止まったときは、おかしいなと。その頃は彼もいなくて妊娠の可能性はない。それなら思い当たるのはただひとつ。当時、うちの事務所主催で初めて舞台を企画することになり、仕事がめちゃくちゃ忙しかったということ」

――仕事のストレスで生理周期が乱れたと思われたんですね。

「そう思ってすぐに婦人科に行きました。そしたら『子宮筋腫があるから、すぐ切りましょう。子宮も全摘出しましょう』と言われたの。『その年じゃもう子供を産むこともないでしょ?』って言われて」

――なんて乱暴な! 医者にあるまじき暴言です。

「ね~。いま思い出しても腹が立ちます。その人、界隈では有名なお医者さんだったのに……でもホント暴言だらけだった。あとね、エイズ検査も強引に勧められたから『必要ないです、大丈夫です』って断ったら、『過信しちゃだめだ、実はこのエリアのご婦人方の7割はエイズなんです』って言いだしたり……もう言ってることがめちゃくちゃ」

――いきなり子宮の全摘出しか方法がないと言われたら、ショックですよね。

「その頃はまだ結婚して子供産んで、ということも考えていたし。だから頭が真っ白になって。母のアドバイスで実家の近くでセカンドオピニオンを取ることになり、今度は女医さんがいる婦人科に行ったんです」

――そこではどんな診断でしたか?

「前の病院で言われたことを先生に話して血液検査をしたら、『まだホルモンいっぱいあるし、子供だってバンバン産めるから子宮とっちゃう必要なんてないですよ』って言われたんですよ」

――43歳でバンバン産めるっていうのもまた極端ですが……。そこでは女性ホルモンの値を調べたんですね。子宮筋腫はエコーでチェックを?

「その病院は血液検査だけでエコーはやらなかったんです。血液検査の結果をチェックして数値に問題はなかったから、生理が止まったのは仕事のストレスで、気持ちの問題だと。もっと私生活でワクワクすること、たとえば社交ダンスとか始めるといいですよ、って勧められました(笑)」

――う~ん。なんだかその先生はその先生でちょっと診断が安易というか……。子宮筋腫ってほかの病院で言われたのにエコーもしないってどうなんでしょうね。

「たしかに。でも前の病院で子宮全摘出と言われてショックだったから、そのときの私には心強く感じてしまいました。それで先生の提案で漢方治療をしてみようという話になったんです」

――更年期治療で出される漢方だと、加味逍遥散が代表的なようですが。

「たぶんそれです! 漢方を言われた通りに服用したら、すぐに生理が来ました」

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日々晴雨

都内在住フリーライター、独身。いくつかのペンネームを使い分けながら、コラム、シナリオ、短編小説などを執筆。コピーライターとして企業のカタログやHPなどのライティングに携わることも。