〈マイ・3大トンデモドキュメンタリー〉が、ついに出揃いました。1本目は、2010年に公開された『玄牝(げんぴん)』。〈自然なお産の神様〉と呼ばれた吉村正医師(現在は引退)と、その産院の光景を追った作品です。2本目は、2013年に公開された池川明医師の主張する胎内記憶研究を紹介する『かみさまとのやくそく』。
そして3本目、現在〈自主上映募集中〉という『甦れ命の力~小児科医・真弓定夫~』です。真弓定夫氏とは、自然派ママの間でもトンデモウォッチャーの間でも有名な〈自然派育児〉を推奨する小児科医(現在は講演活動のみで診療所は引退)。
「院内にはクスリも注射も置かない」ーーそんなナレーションで映画が始まり、真弓医師の活動をサポートする娘さんや、診療所に通うお母さんにより、人物像が語られていきます。診療所というよりは書斎といった雰囲気漂う雑然とした部屋に座る真弓医師の姿は〈穏やかな空気をまとった、おじいちゃん先生〉。
冷暖房が子供を病気にする!?
しかし作品内で語られるトークは、さまざまな媒体のインタビューなどでも繰り返し発信し続けてきたトンデモとほぼ同様のものでした。ブレがないのか、新ネタがないのか。「必要があれば薬も処方する」と言いつつ主張するお説は次の通りです。
・自分が医師になった当時と比べると、人口は2倍になったが医療費は180倍! これは医者、保健所、教育委員会が間違った育児を広め、さらにお母さんたちがちゃんとした育児をしていないから、病気が増えたから。
・健康でいるためのお手本は、野生動物。加工したものを食べず、自分の手で集めたものを食べるべし。
→でも、加熱や下処理はよしとするのって不思議~。
・他の動物の血液(=牛乳)を子供に与えてはいけない。
→真弓氏が「お手本とすべし!」という野生動物は、血をすすりながら生肉を食らい、異種間で授乳するケースも報告されておりますが? ちなみに同作品では登場しませんでしたが、真弓医師は牛乳を「日本の素晴らしさに恐れをなしたアメリカが日本人を劣化させるために、アメリカが売り込んできた食品」であると訴え続けています。
・加工した空気も病気のもと。病院で生まれると、新生児のうちから空調で加工された空気を吸うから、自律神経がおかしくなり病気が増える。自然な状態から遠のけば遠のくほど子供は病気になる。
→極寒&灼熱の地に住む新生児にとってはどうなんでしょ? 自然素材で温度を調節する昔ながらの知恵があるとはいえ、過酷な環境下では〈自然〉より人工の環境下のほうがよっぽど体に優しそうですが。
・今は子供の低体温が大問題! 0~2歳の赤ちゃんは38~39度、2~6歳なら37~38度あったっていい。38度ない赤ちゃんは、低体温である。
→39度が平熱って大丈夫なのか~!?
トークのすべてにツッコミを入れたくなるのですが、そんな人はもちろん登場せず、カメラはお説に賛同する人たちを追い続けます。