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薬を使わない医師が提唱する「育児ドキュメンタリー映画」が冷や汗モノ!

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 このパートで一番怖かったのは、出産直後の〈母子同室〉を重要視するという取り組みの中、母親が子供の顔色の異常に気づき、結果、心臓にトラブルがあったため提携の病院に搬送されたエピソードです。助産師はこの出来事を、

「吉村先生は、初めから病気がわかっていた。でもかけがえのない母子の時間を優先して、ギリギリのところまで待っていた!」

と壮大なドラマのようにそれを解説。現場にいたわけでもないし、いたとしても医療の素人である自分にはわかりようがありませんが、どうしてこれを美談として解釈できるのか……? お母さんは〈ギリギリのタイミングまで待ってくれてまで、貴重な時間を過ごさせてもらったこと〉を感謝しているようですが、それって子供の命よりも自分の満足度が優先されていますよね。巷で〈自然なお産〉が叩かれるのはまさにこの部分であるのですが、わざわざこのエピソードを持ってくるとは、まさか監督もアンチ自然派!?(いやいや)

続々登場するトンデモ有名人

 終盤では、真弓医師が高齢になったことにより、小児科を閉鎖するという流れで映画も終わりへと向かいます。麦っ子畑保育園への往診も、いよいよ引退。するとやってきた後任が……いやあ、前知識なく見ていたので「うお!」となりました。ホメオパシー推しの自然派医師として、これまた有名な豊受クリニックの高野弘之院長が登場したのですから(こっちがラスボスだったか)。

 画面に次々と現れる、その筋の有名人たちの姿は、猛者たちが続々と集う天下一武道会(byドラゴンボール)のごとし。上映中、思わず「うつみんと池川医師マダー?」と口走りそうになりました。

 唯一好感が持てたエピソードは、娘さんの語る〈家庭内でのゴキブリ騒動〉。自然界のものを人間の都合で良し悪しを決めるなという真弓医師は、菌に善玉菌も悪玉菌もない、菌は菌だ! 虫も同様! と主張し、ゴキブリを殺すこともよしとしないのだとか。いざ家族が殺そうとすると、ゴキブリに向かって「たけし、逃げろ!」と叫ぶそう。たけしとは、勤務医時代に8カ月で亡くなってしまった長男の名前。そう言われたら、仕留められませんよねえ……。ご本人は大真面目なのかもしれませんが、ブラックユーモアも感じさせるこの感覚は、ちょっと好きかも。

 結局作品全体は、自然派育児に賛同する人たちがそれぞれの視点から褒め言葉を口にした〈証言集〉という印象。うーん、ドキュメンタリーとしてはものたりない。タイトルにもある「生命の力が甦る」ということを、実践者たちの言葉ではなく、客観的にも納得できるよう映像で見たかった。強いて言うなら、自然派育児の素晴らしさは、たくましさたっぷりの麦っ子畑保育園の子供たちが証拠でしょ? ってことでしょうか。でも、あの姿が素敵かどうかは、子供たちの健康状態を知りようがない以上、完全に〈趣味〉の問題のような気がします。

現代医療は薬漬け、という信念

 上映後、会場にいた人たちと少し話をする機会がありました。すると、この映画を観に集う人たちの、〈薬=悪〉と思っている率の高いこと高いこと。「極力薬を使わない医師」という点が集客のポイントだったようです。

「真弓先生の存在を知ってはじめて、自分が子供たちを〈薬漬け〉にしてしまったことを理解して、本当に後悔している」

 そう話していた若いお母さんは、今は子供が病気になっても真弓医師のお説に従い基本的には病院に行かず、ハーブなどの自然派お手当で乗りきっているそう。

「薬を使えば使うほど症状が悪化して、断薬してからようやく日常生活が送れるようになった」

 というOLさんは、経皮毒の怖さも実感しているとのことで「真弓定夫氏のような医師がもっと増えてほしい」と語っていました。その他の方の話でも、「薬漬けになる現代の医療、怖い!」と、似たような意見が次々と。確かに処方された薬が合わない場合や、高齢者の薬漬け問題もあるでしょう。でも子育てというジャンルでそれを語るのは、ちょっと違うよな~と思いながら、帰路についたのでした。

 帰宅後何気なく「麦っ子畑保育園」の「口コミ」を検索してみると……やっぱり出た。「夏は熱中症で倒れる人(園児?)が出る」。だ・よ・ね~。真弓医師のお説を取り入れたご家庭のQOLも、心配になってきました。自分の過ごした〈古き良き時代〉でかたくなに〈ひとり鎖国〉をしているオモシロ先生の記録として観るにはオススメですが、この作品を日々の育児の参考にと思って観ると、「なんじゃこりゃ!」となること必至でしょう。

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山田ノジル

自然派、エコ、オーガニック、ホリスティック、○○セラピー、お話会。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のないトンデモ健康法をウォッチング中。当サイトmessyの連載「スピリチュアル百鬼夜行」を元にした書籍を、来春発行予定。

twitter:@YamadaNojiru

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