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子宮摘出手術の直前、子宮内膜症やチョコレート嚢胞を放置するリスクをあらためて考えた

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 医師がさらなる手術の説明を書類から読み上げた。

「もし腹腔鏡での手術開始後、子宮周辺がひどく癒着していたら腹腔鏡から開腹手術に途中から変更になる可能性があります。周辺臓器の癒着がひどいと、子宮摘出の際、腸や膀胱に傷がつくこともあります。その場合、人工肛門にしたり、排尿に問題をかかえる可能性もあります」

 夢子はびっくりした。

(そんな可能性があるなら、子宮内膜症のもっと早い段階で忠告してよ!?

  人工肛門とは、おおごとだ。夢子の祖母は晩年、人工肛門で過ごした。その様子を見た夢子が子どもなりに理解したのは「人工肛門になると生活を根本から変えないとならなくなるし、精神的にも肉体的にもとても大変だ」ということだった。

人工肛門のリスク、だと!?

 夢子はずっとピルを服用して腹腔内の癒着を最小限に抑えてきたつもりだし、事前の検査でもそういわれているからいい。

 だが、日本にピル治療をためらう女性は多い。さらに医師から子宮内膜症や付随してできるチョコレート嚢胞がまだ小さいからといわれ、なんの治療もせず様子を見るにとどめるのだ。

 子宮内膜症はピルを服用していても進行する。なんの薬も使わなければ当然お腹の中の状態は急速に悪化する。それがわかっているのに医師はなぜ何もいわないのか。

「子宮内膜症でお腹の中の癒着がひどくなってしまうと、まず不妊の可能性が高まります。のちに手術で治療しようと思っても、人工肛門や排尿に問題をかかえるリスクがありますよ」

という一言があれば、初期段階から進行を抑えるためのピル服用を決心できる女性が増えるかもしれないのに。その結果、子宮内膜症、チョコレート嚢胞や子宮腺筋症(子宮内膜症が子宮壁の中にできる症状)が原因の不妊に苦しむ女性も減るであろうに。この国の少子化も食い止められるかもしれないのに。

術後に下っ腹が出る問題

 また、5060代で筋腫ができて子宮摘出する女性はめずらしくない。だがもしその女性が子宮内膜症を放置していて腹腔内が炎症や癒着だらけだったら、本来の摘出手術よりもずっと複雑な工程になるだろうし、排便・排尿に問題をかかえるリスクまでついてくる!

「死ぬわけじゃないんだから」と手術を断わった病院の医師の顔が夢子の脳裏をよぎった。これまでピルを処方してくれなかった医師たちの顔もだ。彼らはなぜ夢子が将来人工肛門になるかもしれない可能性について考えてくれないのだ!

 これでわかった。子宮内膜症は、「まだガンじゃないから」「すぐに死にはしないから」などといって、余裕ぶっこいていていい病気じゃない。もしあなたがいま子宮内膜症やチョコレート嚢胞の初期段階にあるなら、早めに薬物治療で病気の進行を食い止めることを全力でおすすめする。

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大和彩

米国の大学と美大を卒業後、日本で会社員に。しかし会社の倒産やリストラなどで次々職を失い貧困に陥いる。その状況をリアルタイムで発信したブログがきっかけとなり2013年6月より「messy」にて執筆活動を始める。著書『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』。現在はうつ、子宮内膜症、腫瘍、腰痛など闘病中。好きな食べ物は、熱いお茶。

『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』