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根拠なきスマホ育児叩き、「自分の思い通りの子に育てる」思想が蔓延。育児系トンデモを医師たちが追及する【新春座談会!Part2】

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親が信じるべきことと、そうでないこと。Photo by CIA DE FOTO from Flickr

 アンチワクチンに肛門にカテーテルを挿入するという赤ちゃんの夜泣き対策など、育児系トンデモについてあれこれ語り合った前篇に続き、後編もまだまだ「それってどうなの⁉」という謎物件が盛りだくさん。

▼前編:アンチワクチン、過剰な自然派育児…子育てのトンデモ医療&健康法を信じる人たちが無視する矛盾点【新春座談会!Part1】

 座談会メンバーは前篇同様、以下4名でお届けさせていただきます。

・小児科医ママである森戸やすみ先生 @jasminjoy
・かるがもクリニック院長の宮原篤先生 @atsushimiyahara
・さまざまな育児本を手掛ける、ママ編集者Oさん
・当連載「スピリチュアル百鬼夜行」担当ライター・山田ノジル

スマホに助けられるママたち

山田ノジル(以下、ノ):なんだか〈育児耳年増〉が増えていると思いませんか? スマホ育児も、根拠なく叩かれている印象がありますがどうでしょう。スマホ育児について、患者さんから相談されることなんてありますか?

ノ:スマホ育児について、患者さんから相談されることなんてありますか?

森戸やすみ先生(以下、森):皆さん当然のように〈スマホ育児はダメ〉と思っているので、私の前では口にしないですよね。診察中、お子さんが「動画見たい」と言い出しても、お母さんが慌てて「ダメでしょ!」みたいな。私としてはお母さんと落ち着いてお話できますから、スマホを見てていただいても全然問題ないんですけどね。ツイッターで育児中の孤独から救われたみたいなお母さんは、いっぱいいますし。

ノ:親が育児中にスマホを見るのもダメで、子どもに見せるのもダメって言われても、実際は難しいですよ。時間を有効に使いたいから、軽く30分は子どもに吸い付かれている授乳中はメール処理とかできることをしちゃいたいですし、電車の中だって子どもが退屈して騒がないように本やおもちゃを持ち歩けと言われても、ただでさえ荷物が多いのに、そんなに持ち歩けません。せっかく便利な道具があるんですから、フル活用したいですよ。

森:ですよね。車内だったら周りの乗客も煩くなくていいし、お母さんも気が楽だし、子供も楽しい。

ノ:この間知り合ったお母さんは、「やっぱり本物に触れさせなくちゃ」ということで、スマホどころか家からテレビもなくしたと話していました。バーチャルなものを見せるより、実際に紙などの〈本物〉を触って遊んだほうが、〈脳が活性化する〉んだそうです。

母親は一刻も楽しむな!

森:アピタルの私の記事にコメントをくれた人がいて、電池が入っているおもちゃも使わせないってお母さんがいたんですよ。でもさらに昔になると、絵本すらも〈本物じゃない〉って言われていたそうですよ。〈話を聞かせるのが、本物の物語〉って。絵を見せるのが、想像力を削ぐという話。

ノ:果てしなくどうでもいい〈本物合戦〉!

宮:小児科医会の中でも、スマホ育児を強硬に反対している先生がいるんですよね。そういった一部の先生が、スマホ育児に警鐘を鳴らすポスターを作ったり。

ノ:かの有名な〈スマホに子守をさせないで!〉ですね。それに乗っかるのぶみ氏の『ママのスマホになりたい』(WAVE出版)なんて絵本も、どうかしていると思います。

森:感情的ですよね。「母親は一刻も楽しむな!」「すべてを子供に捧げろ!」みたいな。

宮:ポスターの内容、すごい断定的に書いてありますしね。これ小児科のメーリングリストでも問題になったんですよ。実際はどうなんですか? と質問が上がっても、スマホ反対派の人たちは根拠も出さないし、答えない。

森:参考文献もありませんよね。

ノ:そもそも子供がどれだけスマホを見るとどう影響が出るかのデータってとれるものなんですか?

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山田ノジル

自然派、エコ、オーガニック、ホリスティック、○○セラピー、お話会。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のないトンデモ健康法をウォッチング中。当サイトmessyの連載「スピリチュアル百鬼夜行」を元にした書籍を、来春発行予定。

twitter:@YamadaNojiru

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