先日、日本家族計画協会と、コンドームメーカー「ジェクス」が主催する「第二回 知っているようで知らない ~性の健康セミナー~」を聴講してきました。医療関係者も多く参加するカタめの講義でしたが、私のような一般人にとっても役に立つことばかり!
衝撃的だったのは、泌尿器科の男性医師による「膣内射精障害」についての講義です。最近、「女性の膣でイケない男性が増えている」というのはよく聞いていましたが、実態は驚くべきものでした。その先生はもともと男性不妊が専門で、「妻を妊娠させられない」と病院を訪れる男性のなかに、「妻の中で一度もイッたことがない」という男性がちらほら……という現実を目の当たりにしているそうです。
原因は、主にオナニーです。間違った方法でオナニーをしている人が、この障害に陥りやすいんだとか。代表的なものは「床オナ」。私も床オナの存在は知っていましたが、「床にペニスをスリスリする方法」だと勘違いしていました。そうではなくて、「床にペニスをぎゅーっと押し付ける」刺激でイッちゃうことを指すそうです。
セックスで女性のなかに挿入したとき、男性が腰をピストン運動させるとペニスは前後に動いて、膣内で摩擦されますよね。ぎゅーっと押しつぶされるわけではありません。そっちのほうがキモチイイんだったら、そりゃイケないわ~と、呆れてしまいました……が、これが自分の彼氏だったらどうなんだろう? 想像するとゾッとします。「私がユルいからだろうか?」「私に気持ちがないからイケないんじゃないか?」と自信喪失してしまいそうです。
でも、先生は「女性が自分を責める必要はない」ときっぱり! どんなに愛情があっても、女性に魅力を感じていても、イケないがゆえの“障害”なのです。……そんなセックスってツライですよねぇ。いくら彼のことを好きでも、毎回、気まずい空気が流れるんだから、そのうちセックス自体が嫌になりそう。男も女もイクことにこだわりすぎて、「イカなきゃ」「イカせよう」と思ってするセックスは貧乏くさいですが、「そもそもイケない」というのは次元が違う話です。愛情でカバーするにも限度があるし、居心地が悪い関係ってきっと長く続きません。
おもちゃでアソコがバカになる?
ほかにも、刺激が強すぎる「オナホール」なども膣内射精障害の原因として紹介されていましたが、ここで私、ギクッとしました。男性にとってのオナニー道具がホールなら、女性にとってはバイブやローターです。そして私は「おもちゃばかり使っていると、アソコがバカになりませんか?」という質問をよくいただきます。男性がそれで射精障害になるのなら、女性もイキにくくなったりするのでは? 誰もがそう考えますよね。
私はこれまで、この問いに対してきっぱり「NO」と答えていました。気持ちいいと感じる範囲でおもちゃを使っているかぎりは、バカになるということはない、というのが、その理由です。でも最近、立て続けに「電マで、しかもいちばん強いモードの振動でないとイケない女性」の話を聞き、ちょっと認識をあらためないといけないなと考えるようになったのです。講義でも、そのような現象は起こりうるという指摘がありました。パートナーの手や舌による愛撫でまったく気持ちよくなれないのなら、膣内射精障害と同様、セックスにマイナスの影響しか与えません。
でも、このような女性が増えて、「バイブやローター=よくないもの」というイメージができてしまうと、愛好家の私としては悲しいかぎり。電マはたしかに刺激が強すぎます。ほかにも、形や動き、素材に問題があるおもちゃも世の中にはたくさんあります。でも、そんな中から何を選ぶか、どう使うか……は、個人の裁量に委ねられているんですよね。
ハサミだって生活になくてはならない道具ですが、使い方によっては凶器になるので、小さな子どものいる家庭では、彼らの手が届かないところに保管します。それと同じく、使い方を知っていて、安全に使えるオトナの女性がおもちゃを使うぶんにはノープロブレムです。たとえば電マも、「生理中だけどムラムラするときに活用する」という提案を当連載の第1回目でしました。夜用の分厚いナプキンを通しても、しっかり振動が伝わるからです。月に数度こうして使う程度なら、イケない身体になるということはないでしょう。
きっとオナホールも同じなのでしょう。ただ強い刺激だけを目的とした商品があり、それをさらにギューッと強く握って使うとなると、膣内射精障害まっしぐらです。でも、ソフトな刺激のものを適切な力加減で愉しむぶんにはOK。泌尿器科の先生も、TENGAを利用した膣内射精障害の治療法を披露されていました。最初はハードタイプを使い、徐々にソフトタイプへとならしていくことで、弱い刺激でもイケるように訓練するんですって。
オナニーは100%、自分の快感のための行為。でもそれが、あまりにひとりよがりすぎるとNGということなんですね。本来は快感や官能の幅を広げられるはずなのに、「これでしかイケない」というふうに幅を狭めることになりかねない。セミナー、とても勉強になりました! 第一、ただ強い刺激を求めるって、ちょっとバカっぽいですよね。それよりも、かすかな刺激でも感じる身体になったほうが、お得感がある。今後は、おもちゃのそんな使い方を追求していきたいと思う次第です。
■桃子/オトナのオモチャ130種以上を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。ブログ、twitter