
(C)緑丘まこ
ヤリマンだった頃のわたしのオアシスはクラブだった。
2年前のわたしは、まんこの渇きを潤す泉(イケメンのおちんちん)を探すアラサー独女ヤリマンだった。
といっても、わたしはクラブデビューして間もない二十歳の頃からすでにヤリマンだった。当時は、一日三人のセフレと朝昼晩わけて会ってはヤりまくっていた。過去最高にヤリマンな時期だった。
年齢を重ね、少しは落ち着いたが、アラサーになってもまんこの欲望はおさまらず、現在の彼氏・サトル君に出会うまでずっとクラブ通いしていたのだが……。
クラブでのお世辞は鵜呑みにするべからず
「こんばんは~。何歳?」
暗いクラブの中で聞いてくる推定二十歳前後の男たち。 若い、若すぎる、若さがまぶしすぎる……それがクラブである。
「何歳だと思う?」
こう返すアラサーの女友達もいるが、その度わたしはやめてくれ、と心の中で叫んでいた。
「えー? 俺らと同い年くらい? 俺らは二十歳」
暗いクラブの照明効果で若く見えているのか、それとも単なるお世辞なのか。そもそも男性は初対面の女性に「何歳だと思う?」と聞かれると見た目年齢よりマイナス五歳の数を言うんだとか。
それでも「きゃ~、やっぱりうちら若く見られるね~」と喜ぶ友人もいれば、その友人に毒を吐く友人もいる。
「暗いからやろ。クラブ出て明るいところで顔見られるのはこわいわ」
……と。そう、クラブでのお世辞を間に受けてはいけない。
そしてお世辞以上に間に受けてはいけないのがこれ。
「クラブ今日初めてだよ。ナンパも初めて」
クラブで出会う男性人の大半が、クラブもナンパも初心者を装いたがるのだ。
ヤりたいがための嘘に溢れたクラブ。ワンナイトセックスのために、自分の本当のことなど話す必要なんてない。わたしもそうだった。
年齢も友人とあわせて適当な嘘を言っていたし、時と場合により、クラブ初心者を装ったこともあった。
そのしわ寄せなのだろうか……わたしも友人も「クラブで出会った人の嘘」に翻弄され、悲劇を経験することになる。
自称メン○クのモデル男に遭遇
数ある中から一番印象に残っている実体験をご紹介したいと思う。
<俺は人気モデルだ! 自信満々な男の真実>
あれは、渋谷のクラブだったっけ。今から数年前、ちょうど桜が世界をピンク色に染める春の頃だった。
わたしは、一人クラブでワイン片手に若いイケメンを漁っていた。
その夜は不漁で、なかなかタイプのイケメンがいない。しかし、わたしはクラブ閉店の朝方まで粘っていた。朝方なんて男も女も残りカスしかいないイメージがあるが、ごくまれに“残りものには福(イケメン)がある”場合もあるのでネバーギブアップなのだ。
その粘りが功を奏して、閉店間際の朝方、運命の出会いを果たすことになる。
後に超ホラ吹きだと判明した自称人気モデル・A男に。
A男は雰囲気イケメンだったが、泥酔していたわたしには華やかに見えて、気づいたら一緒にいた。

(C)緑丘まこ
「俺、モデルなんだ。メンズ◯ックルとかそっち系の雑誌に毎月出てるよ」
聞いてもいないのに、自分から言ってきたA男。今なら冷めた視線を送りそうな男だが、当時のわたしはギャル男が大好きで、まさにメンズ◯ックル系の男性がドタイプ。「きゃー! スゴイ〜!」と、目を輝かせた。
しかし、A男はメンズ◯ックルモデルというわりに、ギャル男としては垢抜けきれていない雰囲気が漂っていた。だが、これはこれで新鮮なのかも、と自分に言い聞かせた。
クラブを一緒に出る頃は朝日がすでに眩しかった。A男は、22歳の大学生モデルと言っていたが、明るい場所では年齢より落ち着いているように見えた。若いわりに透明感がなく肌がくすんでいた。
そんなA男の家に行くことになったのだが、最寄り駅からかなり遠い。
「すぐだよ、すぐ」
と言っていたのに、かれこれ二十分は歩いている気がする。
「もうタクシー使えばよくない?」
わたしが痺れを切らしても
「もうすぐ! もうすぐ!」
とA男。さらに10分ほど歩かされる。駅から片道30分ほど。正確に時間を計ったわけではないが、実際はオールの疲れもあって、もっと長く感じた。
やっとたどり着いたA男の家は、旅行者向けと思われるシェアハウスだった。しかもボロボロで築年数がかなり経過していると思われる。
ん? 東京在住で、毎月レギュラーで色んな雑誌にモデルとして活躍しているのに、旅行者向けのシェアハウスに住んでるのか?
自称メン○クモデルのチンカスは黒かった
A男の部屋に入ると、かなり狭く、さらに壁が薄いため他の部屋にいる人たちの声が筒抜けである。日本語は一切聞こえず、英語や聞いたことのない外国語が耳に飛び込んできた。
その度に、壁をドン、と迷惑そうに叩くA男。 いやいや、そんなに強く叩いたら壁が崩壊しそうなくらいボロいし、嫌なら引っ越せばいいのに。
もうA男自身に違和感がありまくりだったが、酔いがさめきってないわたしはとりあえずヤりたかった。憧れのメンズ◯ックルモデルと。
布団に入り、すぐにヤる雰囲気になった。
A男はベロン、と勃起したちんこを出してきたので、優しく手コキした。
ん? んん? えーーーーー!?
A男のちんこをちょっと手コキしただけなのに、ボロボロと真っ黒なチンカスが出てきた。
き……汚ったねーーーーーーー(汗)。
生まれて初めて、手コキで出てくるチンカスを見た。
一気に萎えたわたしは
「ごめん、なんかめまいするから寝ていい?」
と途中で中断。そのまま眠りについた。
数時間後、目覚めたもののセックスを再開するわけもなく、代々木公園まで花見をしに行くことに。チンカスの件があったが、満開の桜が見れるのは嬉しかった。
次々と暴かれるA男の嘘
チンカスの件は忘れて、わたしはすっかりデート気分でA男と腕を組みながら代々木公園でのお花見を楽しんだ。
そして花見の後、渋谷に。
「あ、そうだ、本屋行こうよ! A男が出てる雑誌見に!」
わたしがそう言うと、それまで笑顔だったA男の表情がくもる。
「あれ? どしたの?」
「いや、本屋は止めとこう」
「何で?」
「そういえば、今月は俺は出ていなかったから」
「え? 毎月レギュラーでモデルしてるって言ってたのに?」
シーン……。
気まずい空気が流れた。
何かが変だ。
「ねぇ、A男って雑誌で何て名前で活動してるの?」
「……えーっと、ほ、本名でだよ。市川A男……」
わたしはすぐさま、携帯でググった。彼の名前を。
「…………嘘ついたね。A男、モデルなの嘘でしょ」
A男の名前は検索をかけてもまったくヒットしなかった。
「う、嘘じゃない。今月はたまたま雑誌に出なかっただけなんだ!」
彼はそう言うが、わたしは問いただした。
「ネットでもA男の名前一切出ないじゃん。A男、何でモデルって嘘ついたの?」
A男はもう逃げられない、という表情でこう言った。
「だって、俺、本当にメンズ◯ックルモデルになりたいんだもん」
はぁぁ!? 知るかー(汗)。
その後、さらに判明したA男の嘘。22歳と言っていたが、本当は28歳なこと、大学生というのも嘘で本当は高校を卒業後ずっとフリーターなこと。そして東京在住も嘘で、彼は旅行で東京を訪れているだけだった。
でも、わたしはA男を責めることは出来ない。
わたしも、クラブで出会ったヤリ目の男たちに適当な年齢や職業を言ったことがあるから。所詮、クラブで出会った男たちだ、という程度にしか思っていなかったからである。
A男もきっと同じである。
所詮、「クラブで出会った女」のわたしには、嘘をどれだけ並べても良心など痛まなかったのかもしれない。わたしが気づかなければ、彼は自称モデルを名乗り続けていただろう。