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「意識高い系ママ」になってしまった実妹…食材にはこだわるもののマナーはガン無視!

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「食」へのこだわりが免罪符? Photo by brianna.lehman from Flickr

 家族が荒唐無稽な主義主張を振り回し始めたら……!? その困惑を赤裸々に語ってもらう〈身内がトンデモになりまして〉シリーズ、第3回目は「〈妹〉が意識高い系ママになりまして」をお届けします。

▼1回目:(前篇)異臭がする子供、ワクチン拒否…義妹が「自然派ママ」になりまして
▼1回目:(後篇)過激な自然派育児は誰のため? 自己肯定のレベル上げに執心、医療全否定で子供の健康を守れるか
▼2回目:「子宮系女子」になった母、その原因が自分にもあるのではないかと悩む娘

 今回お話してくれたのは、公務員のOさん。キャリアにまい進するワーママである妹が、〈ひとり息子の食事〉に関してのみ、異常なほどのこだわりを持つようになったと言います。Oさんが妹一家と会うのは、年に数回。中国地方の実家へ帰省し、久しぶりに家族と過ごすひとときを満喫するものの、妹が実家にも課す〈食ルール〉が凄まじく、心が削られると嘆きます。

Oさん(以下、O)「妹が異常にこだわるのは、食材の産地です。子供の口に入るものは東京以南で採れた国産のものを厳選し、それプラス無添加、無農薬、オーガニックであることを重要視。帰省中に子供へ食べさせる食材を、あらかじめダンボールで実家へ送ってくるんですよ。それに加えて実家の冷蔵庫にもチェックが入り、肉野菜はもちろん調味料にまで口出しします。母は『そんなこと言われも、今どき国産のエビなんて売ってないのよ?』とオロオロ……。厳しく頑固な父にも、止められない勢いです。妹の主張を受け入れないと、孫に会わせてもらえなくなるというのもあると思いますが。完全に、孫が人質ですよね」

きっかけは、東日本大震災

 子供の口へ入るものは、妹基準で〈安心〉と思うもの限定。その一方、妹夫婦はといえば、地のものやお土産のお菓子などごく普通のものを食べるのだとか。そうしていながら子供が〈大人の食べるもの〉に興味を持ち始めた段階から「これは大人用で、辛いから! 食べると痛いの!」と遠ざけたそうですが、それも今となってはすっかり見慣れてしまった光景。法事の席などで外食をする際も、子供だけ持参したお弁当を食べさせる妹。

「アレルギーなど健康上の問題があるならともかく、甥の場合は違います。食事って、文化体験でもあるじゃないですか。甥は、私たちの実家でも地のものを食べさせてもらえないから、土地によっていろんな食文化があることも恐らく知らないし、そもそも母親がいいというものしか食べちゃダメというのが染み付いています。食を制限することは、いろいろな体験を奪うことにもなると思うんですよ。実際、甥自身から『あれ食べたい』『これがいい』と言うことはありません。帰省時に母がひどく疲れていた時があって、その時はさすがに妹も外食をしぶしぶ許したんですが、甥は初めての外食に大興奮してしまい、結局何も食べられなかったんですよ。その姿が不憫で不憫で」

 仕事熱心で家事全般にあまりこだわらない様子だった妹が豹変したきっかけは、東日本大震災。地震発生当日、妹親子は夫の赴任先である九州地方にいたため、幸運にも〈被災〉と呼べる経験はまったくしていなかったものの、極端に放射能を気にし始めたそう。

やはり乳児を抱えていたので不安が募ったのでしょうか。しばらく子連れで実家に滞在していたのですが、インターネットで放射能の情報を必死に集めていました。もう、論文まで読む勢いです。そのうちテレビに東電の社員などが出てきたり、原発を否定しない識者が話したりすると『国からお金をもらって、嘘の情報を話してる!』とか言い出すようになったんですよね。その時です。『あれ? この子おかしくなった?』と気づいたのは」

せっかくの食材を雑な料理に

 イギリスへの留学経験もあり、かつてはジャンクな食べ物も抵抗なく楽しんでいたという妹が憑りつかれてしまったのは、〈食品が放射能に汚染されている〉〈子供の健康が壊される〉という恐怖。そこから、農薬や添加物なども気にするようになり、今では1リットル1500円のジュースなど、高価なオーガニックブランドを常用するように。

妹には、世界が汚染されているように感じてしまったのでしょうね。そして自分たちはもう手遅れだけど、せめて子供には安全な食事をというところでしょうか。でも、そこまで食材にこだわるなら、料理も頑張ればいいのに、正直おいしいとは言い難いんですよ。いかにもオーガニックショップで売っていそうな細くて歪な形のにんじんを茹でただけのコンソメスープとか。私も帰省時に食べましたが、すごく泥臭くて、はっきり言っておいしくない。その他も、野菜を茹でて塩とか、炒める、というごくシンプルなメニューが多いようです」

 妹の食材信仰は、〈安心できる食材を使いさえすれば、その他は多少アバウトでも大丈夫〉という〈免罪符〉にもなっているのではと、Oさんは指摘。

料理の件だけでなく、食事のマナーなども考えさせられるものがあります。甥は今、小学1年生なのですが、家ではまだ手づかみで食事をしているんですよね。学校給食ではちゃんとお箸で食べているようなので、お箸が使えないわけじゃないんです。それに対し妹は、食事前に『手で食べるんだから、ちゃんと手を洗って!』と強く注意。注意すべきはそこじゃないだろ……と。無農薬を食べさせる前に、家でもお箸を使えるようにしてあげてほしいです。雑なんだけど、信念だけは固いというか」

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山田ノジル

自然派、エコ、オーガニック、ホリスティック、○○セラピー、お話会。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のないトンデモ健康法をウォッチング中。当サイトmessyの連載「スピリチュアル百鬼夜行」を元にした書籍を、来春発行予定。

twitter:@YamadaNojiru

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