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紗倉まなは「AV女優」だけど「セクハラしていい女」じゃない AV女優の職業差別に見る「#Me Too運動の本質」

【この記事のキーワード】

 他の女性共演者にはこんな会話を絶対にしていないこともわかっていて、職業も含め下に見られているんだなぁ……と最初は純粋に腹が立ち、この人の犠牲者になる人はこの先もいるのだろうなと思っていたら、職業的に差別されている私とこの人とどちらのほうが人間的に害なのだろうか、と思考を巡らせたこともありました。

 私の頭の中で「人として無理」と思った瞬間、確実に距離を取るようにするのですが、大体そういう人って、向こうからわざわざ近づいてきては、誰にも聞こえないような小さな声で囁いてきて、本当に悪どい……。さらに奴の化けの皮を剥がし、醜く切り刻んで己に食わせてやりたいと憤慨する時の、自分のあのエネルギーったらもう、すごい嫌だ……。

 この仕事をしていると、何を言っても別にオッケー的な扱われ方をされるのも慣れてくるし、「AV女優だからってなめんな!」なんてことを言う気もさらさらなく、悪意がない下ネタは“楽しめるキーワード”として談笑したいと思っているし、見境もなく常に怒っているわけではありません。

 この人は誰にもその悪辣さを指摘されないし(立場的にも)、指摘されたところで理解できないだろうなと思うのです。人を傷つけて、どれほど不快な思いを与えているかも知らぬまま枯れ果てていくのだろう、と哀れな目で見ている時点で、加害者は、ある意味での犠牲者なのかと思ってしまうところが大きいのも、反抗せず無気力になってしまうひとつの理由です。

 自分の身の回りで、自分のことをとことん不快な気分にさせる人というのは本当に極わずかなのに、褒め言葉よりも気分を害された時のほうが、頭を鈍器で殴られたかのようによりずっと重く鳴り響くし、怒りの火は弱まることなく、ずっと静かに燃え続けて、心の芯を溶かしていく。家に帰ってからふと振り返る“不快”な時間が、なんともったいないことか。

 私にとっての社会人デビューはAV業界ですが、これがもし一般企業に就職していて、上司やクライアントなどに“不快モンスター”が出現したとして、逃げ場もなく、止まり木として心を休められる場所もなければ、どれほど苦しかっただろう……。修復不可能なほどに傷口がえぐられ、心が壊死してしまっている人も世の中にはたくさんいるわけで、ないがしろにされていることへの訴え=#Me Too運動の発展は、来るべき日がきたという、ただそれだけなのだと思います。

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紗倉まな

高等専門学校の土木科出身。18歳の誕生日の翌日に事務所に応募し、所属が決定。2011年にイメージビデオデビュー、翌年2月にAVデビューするや否や人気沸騰! SOD大賞2012では最優秀女優賞、優秀女優賞、最優秀セル作品賞、最優秀ノンパッケージ作品賞などなどを総なめで6冠を達成する。『ゴッドタン』キス我慢選手権でも「かわいすぎる」と話題☆

紗倉まなの工場萌え日記