連載

チェック模様は恋模様…ネクラ女のバレンタインエピソード「ディプロマットケーキ」

【この記事のキーワード】

kazuyosan1203top

こんにちは。みなさまいかがお過ごしでしょうか?
自意識和代でございます。
さてさて。もうそろそろバレンタインでございますね~。
友チョコ・逆チョコ・自分チョコ。
もともと日本独自だと言われてきたバレンタインイベントですが、さらに多様化してきましたね。

先日TVを見て「逆チョコ」「自分チョコ」の存在を知りました。
「逆チョコ」は男の子から女の子にあげること。
あら♡ それ嬉しいわね……。
「自分チョコ」とは。
バレンタインの時期にしか買えないチョコを食べたいから自分に買う……のだと的場浩司が力説していました。
あらま……ただの純粋なチョコ好きだよ……。
以前、女性が自分にバレンタインチョコを買うニュース映像を見ても驚かなかったのに、この時は的場浩司に驚いてしまいました。
そう。驚いてしまいました。
……コワモテの男性が美味しいチョコを追求したって良いではないか!!
そうだね! ごめんよ!!

 

(チョコレートフォンデュ)ザッパ~ン(チョコレートフォンデュ)

 

……え~。話を戻します。
それでもバレンタインデーは女の子からの告白イベントという位置づけはまだ鎮座しているようですね。

バレンタインねぇ……

いろんなバレンタインデーがありましたが、エピソードと言えば? と聞かれたら、まず思い出すのは初バレンタインです。

初バレンタインの時に焼いたのがこのディプロマットケーキでありましたのよ。
今思うとケーキまるごと1個渡すなんて、人との距離感が掴めていないからできたことだなぁと苦笑いです。
でも当時は必死でございましたよ。
初バレンタイン。それは中学時代のことじゃった……。

 

(オクラホマミクサー)

 

~~~回想~~~

 

中学1年生の時から密かに好きだったSくん。
野球部でしたが、オラオラしていない愉快な男の子でした。
私は中学1年の秋まではソフトボール部にいたので、グラウンドでチラチラとSくんを見ることができました。
Sくんは投げる時は左きき、打つ時は右ききだということを発見。
小さな発見に何だか嬉しくなりました。

しかし、私は自分で打ったボールを踏んでアウトになったり、
速い球をグローブをしていないほうの手でうっかりキャッチして脱臼しかけたり、
……と、センスのなさを発揮。
いたたまれなくなって水泳部に転部。黙々と泳ぎ、背筋がつき、うっすら逆三角形になりました。
今となっては、なぜソフトボール部に入ったのか思い出せません。

そんなわけで放課後のグラウンドでは会えなくなってしまいましたが、同じクラスだったので毎日会うことはできました。
しかも私は運良くSくんの隣の席をゲット。
席の決め方はクジなのに3回連続・3カ月間もSくんの隣の席にいられました。
ズルはしてないわよ!!
幸せ……

Sくんは誰に対しても明るく、優しく接していました。
クラスの中で「風景」と言ってもいいほど暗く大人しい私に対しても同じでした。
「……Sくんといると楽……しい……な……」(湯気)

好意はつのるものの、月日だけが過ぎてゆき……。
さらに中学3年になると別々のクラスになってしまい、高校受験シーズンに突入。
バレンタインどころではありません。泣く泣くスルーしました。

しかし。
もう中学も終わりです。……どうにか……どうにかしなくては。
「受験が終わったら告白してみようかしら……」
と思い至りました。

バレンタインデーから随分とズレた2月終わりにプレゼントしようと決意。
しかし、ろくに人と口をきけていなかった当時の私にはなかなか勇気のいることでした。
いきなり声をかけたら、
「公園の銅像が口をきいた!!」
「壁の肖像画が口をきいた!!」
みたいな感じで不気味に驚かしてしまうんじゃなかろうか。
どう声をかけていいかわからないよ……

……と。
ある日の放課後、Sくんと仲良しなガタイのいいIくんに廊下で遭遇。
周りに誰もいなかったので呼び止め、思い切って相談してみました。

「(略)……実はSくんにバレンタインのお菓子を渡したいんだけど……(略)」
するとIくんは、
「なんと……神聖なっ!」
というコメントと共にSくん呼び出し役を引き受けてくれました。
IくんがSくんを呼び出すけどもIくんではなく私が来る、というわけです。

自分の友達を好きだと言うネクラな同級生の自白はIくんにどう映ったんだろか。
笑いたきゃ笑え! と思いましたが、Iくんは笑うでもなくウンウンと話を聞いてくれました。
Iくんもまた、気さくで優しい男の子だったのです。
知らなかったよ……。Iくんは面白いだけじゃなかったのね。
恥ずかしがって人と口をきかないと、その人の良さも見えにくくなるんだな……。
ともかく、Iくんまで巻き込んだことだし後には引けません。決行です。

さてお菓子。
何作ろう?
家族が図書館で借りたらしいケーキ本を自宅で発見。
パラパラ……
ん?
切るとチェック模様が見える楽しいケーキが載ってるではないか!
これにしよう!

ケーキを焼き、手紙を添え、いざ待ち合わせの公園へ。

ドキドキして待っているとSくんが鼻歌を歌いながら登場。
サザエさんが履いていそうなサンダルにはんてんというくつろぎスタイルで登場。
「マブ~!!」(←Iくんの愛称)
Iくんを呼ぶSくん。
「あっ、Sくん……」
私が声をかけるとSくんが振り向きキョトン……とした表情を見せました。
そりゃそうです。Sくんが待っていたのは私ではなくIくんだったのですから。

「実は……」

~略!!~

それから。

初告白・初バレンタインを完了した私は何だかそれだけで達成感を感じてしまい、それ以上Sくんに対してアプローチしようとはしませんでした。
中学生だったし、恋に恋をしていた部分もあったんでしょうかね。
卒業式で第二ボタンをもらおうとしたら「ごめん。もうない」が返事でした。もじもじしている間に他の女の子に取られちまったようです。

あちゃー。

残念でしたが、あまり悲しくはなかったです。
あいや、悲しくはあったけど、傷ついた感じはしなかったというのが本当でしょうかね。
その後Sくんとはたま~にぱったり会えば笑顔で挨拶して喋る。それだけで満足でした。気が済んだというか。
銅像然としていた私が人と会話を持とうとするようになったきっかけはいくつかありましたが、
このバレンタインはきっかけとして大きかったなと思います。

それにしても、「告白の段階でケーキをまるまる一個も渡すのは重いんじゃないか?」なんて少しも思いませんでしたわ……。
直径20cmのケーキを持たされて、家で「何それ?」って家族に突っ込まれたかな?
……なんてことへも気が回らず。
「このケーキのチェック模様を見て!!」としか思っていませんでした。
だはは。押し売りですねぇ。銅像女の恋の押し売り。

さてさて。ディプロマットケーキですよ。
このケーキは作る側にも楽しいケーキです。
手間はかかりますがケーキ作りそのものも楽しんで欲しいなと思います。

プレゼント用というわけで15cm丸型1個分です。
材料は当時のままではなくて、大人になったことだし、試作して今の好みに変えてみました。
……と書くと聞こえはいいですが、なんのことはない、レシピを覚えていなかったんですわい。
でも何とかなると思ったのよ……。
(ありがとよ……試作ケーキを食べ続けてくれた方々よ……)

 

では参りましょう。
「ディプロマットケーキ」

1 2 3 4

自意識和代

人の好意をなかなか信じられず、褒め言葉はとりあえず疑ってかかる。逆にけなし言葉をかけられて「なんて率直なんだ!」と心を開くことがある。社交辞令より愛あるdis。愛がなければただのdis。凹んじゃうよ! ラブリーかつ面倒なアラフォーかまってちゃんである。