
Photo by bailey foster from Flickr
前回、セックスレスに関係する人の心理的なプロセスと男女のプロセスを紹介しました。ここからは、事例をあげて個別の原因を探ってみたいと思います。今回は、パートナーとのセックスを拒絶し、セックスレスに陥った2人の女性のエピソード。1人はすでに離婚もしてしまいました。彼女たちはなぜ「拒絶」に至ってしまったのでしょうか?
むつみさん 外資系コンサル勤務(現在は離婚して独身)
むつみさんは趣味を通じて出会った彼と交際2年を得て、結婚します。相手はどちらかというと女性にモテ、甘やかされてきたタイプだそう。自分の都合に合わせて何でも言うことを聞いてくれるオンナたちに飽きた頃にむつみさんに出会い、好奇心旺盛で男勝りなところがあり、どっしり構えている彼女に惚れ、結婚を申し込んできたそうです。
―――結婚当初はセックスしていたんですよね? それがどのように冷めていったんですか?
「彼は付き合っている時は本性を隠していて、元々束縛する性格だったんだと思うんですよね。ちょうど私も仕事が軌道に乗り始めて、英語も流暢に話せるようになってきたので、交友関係も広がって、どんどん外に出たいなって思っていたんです。それと反対に、旦那は結婚前は友達が多い人だったのですが、友達の誘いを断ってでも私と一緒にいたがって、私が『友達と出かけなよ』と言っても、『君にも一緒に来て欲しい』ってべったりでした。なんかすごく依存されていることが伝わってきて」
―――そうした旦那様からあなたへの依存や束縛をうれしく感じるというよりも、うっとうしく感じて性欲も薄れた?
「うっとうしいというより、私は仕事も軌道に乗り世界が広がって、旦那はどんどん狭い世界に閉じこもって、夫婦なのに違う世界で生きている感じがしたんです。そのうちに旦那がどんどんツマラナイ人に見えてきて。結婚前はバイクに乗ったり、すごくオトコっぽい人だったのに、結婚後、コンパクトにまとまっちゃって……結果、旦那に対して性欲も冷めていきました」
ふみさん 専業主婦
ふみさんは同じ職場の男性と出会って、付き合って1年で結婚しました。
―――旦那さんとのセックスに飽きた理由は?
「私、妊娠中に体力がなくて身体を壊したんですよね。専業とはいっても子育ても大変なくらい体調が悪くなってしまったので、自然に旦那がほとんど育児を請け負ってくれるようになりました。そこは感謝しているんですけど、そんな優しい旦那が結婚後どんどん太っていって熊さんのようになってきて、オトコとして見れなくなったんです」
―――子育てに積極的な旦那様は、ふみさんに対してはどんなふうに接していたんですか?
「もうべったりです(取材中にも旦那さんから、たわいのないメールが数回送られてきていました)。あと、私だけにべったりなのではなくすごく子煩悩でもあります。子供の野球のコーチをしていてそれに熱中しているんですよね。それも何だかな~っていう感じで」
―――旦那様を「男として」ではなく、「子供の父親」としてしか見られないのでしょうか?
「なんか家庭的なのは感謝しているんですが、こぢんまりまとまってる感じで。少しくらいワイルドさが欲しいんですよ」
キーワードは「依存」?
ふみさん、むつみさんの2人に共通しているのは、結婚したパートナーに依存されていると感じていること。お2人とも生き方は違うけれど、好奇心旺盛なタイプの女性でした。夫とのセックスを拒否する女性を「こういうタイプ」とひと括りにするなんて無茶は到底しないけれど、彼女たちに代表されるように、パートナーに依存されることで性欲がなくなっていくケースは実は多いのです。むつみさんはすでに離婚に至ってしまいましたが、仮にふみさんが、ご主人とのセックスレスを解消し、夫婦関係を良好にするためには双方がどのように意識を改善していけばよいのか……考えてみましょう。
拒否されている男性側の場合
■オトコ友達との付き合いをやめない
旦那が家に全くいないと嘆き、旦那が家にいすぎ、誰とも付き合わないのも面白味を感じない。オンナってワガママだという声も聞こえそうだけど、オンナは結局のところ本能的で、強いオトコ、チャレンジするオトコに性的魅力を感じるようにインプットされているかもしれません。
■パートナーにかまいすぎない
妻に構わなすぎなのも問題だけど、かまいすぎると、ある種のオンナはそのオトコにウンザリし、性欲を感じなくなるようだ。かまいすぎるというのは、不安と依存の表れ。相手は息ができないような感覚になり、相手と距離を取りたくなります。
定年後の旦那が、ずっと家にいて、何もせず、妻にべったりになり、わずらわしく思うというオンナも少なくないコトを考えると、ごく普通のことかもしれません。
拒否している女性側の場合
■相手のことを大切な友達としてみる
パートナーがあなたに依存してきて、あなたにニーズ(何か要求してきたり甘えてくること)が出てきたとしたら、長い付き合いの友人がちょっと弱っている時期や、次の何かにチャレンジする怖れを持っていることに気づき、相手のニーズに優しくします。
本当は自立している人ほど依存しているのですが、自立している側は依存している人が「気持ち悪く」感じます。それは自分の中に依存心があり、(自分の中の依存がなければ相手の依存に優しくできるからです)潜在意識の中で、自分の依存を相手に写しだし、自分の依存から距離をおくために、相手を避けている可能性があるのです。
相手の依存やニーズに優しくなると、自分にも優しくなり、相手への気持ちから自分のニーズや投影に対する気づきが早くなり、自分の依存やニーズにも優しくなります。
今回の取材対象は偶然にも2名とも精神的にどっしり構えているタイプの女性で、同性の私でも安心感を覚えるような人柄。男性は家に帰って彼女たちと一緒にいると心地がよく、リラックスできるのかもしれないな~と感じました。その居心地の良さに甘え、彼らはオスからオトコの子になってしまい、いつしか妻にとっての性的魅力を失ってしまったのかもしれません。そうは言っても、結婚しても独身時代のように外で遊び歩き家庭を顧みない男性に対する不満の声も多く聞こえる世の中。子煩悩で家庭に寄り添ってくれる彼らのような男性像を求めている女性もいるにはいるでしょう。ただ、「依存度合」が強すぎればやはり依存されている側には負担が蓄積されていきます。お互いに精神的自立を意識し、家庭内を占拠しすぎないこと……パートナーのスペースを空けてあげることが大切なのかもしれませんね。
■荻原かおる/http://healing49.com/