
ダンサーの武藤つぐみさん
きらびやかな衣装を着て音楽に合わせて踊る女性。会場にはミラーボールや豪華な照明器具があり、ダンサーの姿を美しく照らす。それをキラキラした目で見守る女性たちがいる。
でも、それはアイドルのライブでも宝塚でもミュージカルでもない。なぜなら、ステージの女性は途中からどんどん服を脱いでいって、最後は裸になるからだ。これは、性風俗関連特殊営業3号営業「ストリップ劇場」での一幕なのだ。
かつては繁華街や温泉地の定番スポットとして知られ、ピーク時にはその数300以上と言われたストリップ劇場は、今全国に約20軒ほどしか存在しない。風前の灯、絶滅危惧種、斜陽産業と呼ばれがちなストリップ劇場に、今ひとつの波が訪れている。
女性客の増加と、それと併行するかのような業界全体の変化だ。性風俗に位置づけられ、男性の娯楽と言われてきたストリップ劇場が、今多くの女性の心を捕らえている。撮影可のライブイベントが珍しくなく、あらゆる空間がSNSで共有出来るようになった昨今、完全撮影禁止の劇場内。その秘密の場所、ストリップ劇場で、今一体何が起こっているのだろうか。そして、女性たちはストリップをどう見ているのだろうか。
ステージの神々しさに打たれ、舞台の上へ
「あ、これやんなきゃダメなやつだ」
AV女優の武藤つぐみは、初めて浅草ロック座でストリップを見た時、そう思ったという。
「思ったよりずっと踊ってるところが多いし、舞台も大きくて広いし、お客さんも熱心な人が多くて……。ストリップって『ピンクでエロ~』ってイメージしかなかったんだけど、その常識を覆されて」
浅草ロック座の舞台は、本舞台と呼ばれるステージからまっすぐに花道が延び、花道の先には盆と呼ばれる円形の舞台が用意されている。ストリッパーは群舞に囲まれながらステージでダンスを踊り、一人になってから花道を歩き、盆の上にたどり着いたところで、ゆっくりと脱いで、その身体を人々にさらけ出す。この盆での見せ場はベットショーと呼ばれている。
美しい裸体を誇るようにポーズを取るストリッパーを「まるで銅像みたいで神々しい」と思った武藤は、鑑賞直後に浅草ロック座のプロデューサーに感想を聞かれ「あれなら一日で覚えられますね」と答えたという。
武藤の大胆な答えに根拠がなかったわけではない。彼女は14歳からの3年間バレエを習っていた。しかし、トウシューズが性に合わずに裸足で出来るコンテンポラリーに移行。それから現在までずっとダンスを続けているという実績を持つ。
肝の太い答えにプロデューサーが期待したのか、彼女は次の週、2014年5月1日からの浅草ロック座公演にオファーされることになる。出演予定のストリッパーがいなくなったためのピンチヒッターだったが、これが武藤のデビュー。そして、現在ロック座随一の女性人気を誇る人気ストリッパーであり、同時に異端児として注目を集めるストリッパー・武藤つぐみの誕生となった。

「これやんなきゃダメなやつだと思った」という武藤つぐみさん
「ピンクでエロいイメージ」しかなかったという武藤を魅了した浅草ロック座のストリップとはどのようなものなのか。
一般的にストリップ劇場では、4~6人のストリッパーが1日おおよそ4回ステージに立つ。踊るダンスの内容(演目と呼ばれる)はストリッパーごとに違う。ソロアーティスト4~6人の対バンが、1日何度か繰り返されるとイメージしてもらっていいだろう。
しかし、浅草ロック座では一つのテーマに合わせ、メインのストリッパー7名が、ダンサーを従えてステージを作る。舞台はプロジェクションマッピングで華やかに彩られ、照明がストリッパーの肌を美しく照らす。クレイジー・ホースやラスベガスのショーを参考にしているというその舞台の華やかさは、まさしく「ショー」という言葉にふさわしい。