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「ストリップ劇場は女子校みたい」「男の人も踊り子になりたい」劇場は多様なエロとの向き合い方を肯定する場所

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<短期集中連載:第一回/現代ストリップは多彩なボディーパフォーマンスの場に 女性たちが憧れるストリップの多様性

 2016年6月、日本のストリップ71年の歴史においておそらく初めて、圧倒的な比率で女性客が男性客を上回った公演がある。

 かつて新宿に存在したTSミュージックという劇場の閉館興業。4人のストリッパーによるチームショーを目当てに、多くの女性たちが足を運んだ。ストリップは通常1人で行うが、チームショーでは2人1組。時間も2回分使ってショーを構成する。(まれに、3人、4人で構成することもある)

 これ、実は腐女子ストリッパーたちが集まって演じられた「BLストリップ」と呼ばれるショーだったのだ。ストリッパーたちはおのおの望む姿の美少年を演じ、絡み合う。その面白さが口コミで広まり、いつのまにか女性が劇場を埋め尽くすまでになったという。

 しかし、考えてみれば不思議な話だ。客層が変化しているとはいえ、メイン顧客は中年男性。彼らはBLストリップをどう見たのだろうか。そして、そこでストリップに出会った女の子たちはどう感じたのだろうか。

 BLストリップは、萌えの方向性が一致したストリッパー同士が、偶然同じ劇場に出演した際にしか成立しない。筆者は運良く一度だけBLストリップを観ることが出来たが、その内容は想像の斜め上を行くものだった。

観客を子ども時代に返すようなストリップ

 ステージに現れた攻め役と受け役の男装ストリッパー2人。おもむろに攻め役が先端に小さな張り型のついたホースを取り出し、受け役の下半身をいじりだす。と、同時にホースのもう一方を客に持たせ、それをこする動作をするようにうながしはじめた。どうやらオナニーの動作をしろということのようだ。攻め役の求めに応じて、必死になってホースをこする客。そして、動作に合わせるように流れる激しいギターリフ。

 攻め役はホースをこする客を余裕の表情でいなしながら、受け役の子をいじっていく。どうも、こちらがBLストリップと聞いて想定していたものとだいぶ違う。そして、BLストリップを見に来た女性たちも、どうやらストリッパー2人のファンと思われる男性たちも、ニコニコしながらその様子を眺めている。

 あっけにとられながら観ていると、後半の脱ぎの場面でさらに意外なことが起こる。2人がペットボトルを取り出し、口に含んだ水を客にかけ始めたのだ。俗に毒霧と呼ばれるこうしたパフォーマンスは、パンクバンドのライブやプロレスでも観られるもので、それ自体は珍しくはない。しかし、この演目のすごいところはとにかく客席のあらゆる人に、あまさず水をかけるところだ。逃げ出すと追いかけられるし、口から吹き出す水の量も「霧」というより「じょうろ」というくらいの量だ。

 ふと客席を見ると、男女とも仲良く、時には肩を組みながらきゃあきゃあその様子を楽しんでいる。それはまるで、小さな子どもが公園の噴水で水をかけあって遊んでいる時のようなプリミティブでハッピーな風景だった。

「ストリップは裸になりさえすればあらゆる表現が許される場所」とはよく言うが、こんな形で演目を成立させ、しかも客を笑顔にしている人がいるのか。ストリップ鑑賞歴の長そうな男性たちと、おそらく最近ファンになったのであろう20代と思われる女性たちが、談笑しながら踊り子との写真の列に並ぶ様を眺め、しみじみ考えていた。

 この時の受け役のストリッパーは、ストーリー性のある演目で人気の京はるな。攻め役のストリッパーは、異色のベテラン・栗鳥巣だった。

 このステージに感銘を受け、数カ月後の2018年9月、栗鳥巣の元を訪ね、終演後に話を聞いた。

『これがやりたい』という熱意だけで作っていますと語る栗鳥巣

『これがやりたい』という熱意だけで作っていますと語る栗鳥巣さん

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