<短期集中連載>
第一回/現代ストリップは多彩なボディーパフォーマンスの場に 女性たちが憧れるストリップの多様性
第二回/「ストリップ劇場は女子校みたい」「男の人も踊り子になりたい」劇場は多様なエロとの向き合い方を肯定する場所
かつて福島に芦ノ牧温泉劇場というストリップ劇場があり、そこでは「潮吹きショー」を披露する中川マリというストリッパーがいた。体調不良で彼女が現役を退くと共に、芦ノ牧温泉劇場もそのまま閉鎖された。2018年6月のことだ。
2019年2月に、マンガ雑誌『イブニング』(講談社)でストリップレポマンガを連載することが決まっている菜央こりんの制作した同人誌『ストリップ劇場遠征女 サラバ! 福島編』には、閉館直前の芦ノ牧温泉劇場の様子が載っている。
年配の女性が客席に話しかけながら脱いでいき、最後は潮を吹く。雑談を交えながらおっぱいをさわらせてくれる、タッチショーの時間もある。芦ノ牧温泉劇場でのストリップには、「世間がイメージするストリップ」の形がそのまま残されていた。
30分ほどのステージの間に客をなごませ、楽しませてくれた温泉街のストリッパーのステージを、菜央こりんは最後に、「どんな場所でも、自分の身体を使って誰かを楽しませている人を見るとなんだか元気になる!」という言葉で表現している。
そこにはストリッパーをエンターテイナーとして捉え、尊敬する素直な気持ちがにじみ出ている。
ストリップの客数は年々増加中
ところで、私はこれまでの記事で「ストリップに女性客が増えている」と書いてきた。しかし、それは事実なのか。事実だとしたら、いったいどのような過程を経たものなのだろうか。
15年以上ストリップを観ているという50代男性のHさんは、「そもそも、ここ数年はストリップ全体の客数が増えてきている」という印象を強めているという。Hさんは、指標の一つとして浅草ロック座の大入り報告の増加をあげている。
浅草ロック座は大入りの日にはTwitterでその旨を報告する。2012~2015年には年に数日だったこの大入りの回数が、2016年は46日、2017年は50日、2018年は11月23日時点で66日と、着実に増加している。
2016年の大入りについては、恵比寿マスカッツの川上奈々美、上原亜衣が舞台に立ったことが大きな理由の一つとされており、特に上原亜衣の引退公演では20日間全てが大入りになったという。
また、この公演には上原の女性ファン有志が花輪を出しており、彼女たちも劇場に足を運んでいた。中にはそのままストリップそのもののファンになった人もいるという。
浅草ロック座の客数のみをストリップ界全体の客数増の証拠には出来ないが、指標の一つにはなるだろう。実際、浅草での鑑賞をきっかけに、お気に入りのストリッパーを追いかけてさまざまな劇場に出向く人は少なくない。
そして、Hさんによるとトータルの客数だけでなく、その中での女性客の割合もここ数年で明らかに増えているという。ほかにも10年以上ストリップを観ているファンや劇場関係者に話を聞いたが、一様に「ここ数年で増えている」と話してくれた。
「女性客増加」について引き合いに出される理由は様々だ。「an・an」、「GINZA」(いずれもマガジンハウス)などの女性向けメディアがストリップについて取り上げたことでの露出の増加。第2回で取り上げたBLストリップのブレイク。若林美保に代表されるような、映画、演劇など多様なフィールドで活動する演者が活躍するようになったこと。AV女優がSNSで美容情報などを発信するようになり、モデルやアイドルと同じような「女の子の憧れ」になっていること。
また、因果関係を証明するのは困難だが、2000年代に劇場の摘発が相次ぎ、いわゆるピンクサービスの提供が縮小したことも要因としては大きいと思われる。ちなみに最後の摘発があったのは2013年1月のTSミュージックだ。
かつては演目中の自慰行為は当たり前だったというが、今では劇場によっては「自慰行為厳禁」という貼り紙が用意されている。
こうしたことすべてが複合的に絡み合い、「女性が足を運ぶきっかけ」になっていることは間違いないだろう。しかし、現在ストリップ劇場で起こっている変化に関して語る際に注目したいのは、ストリップにおける「語り」の変化だ。