ストリップを巡る言葉の変化
下の写真はすべてここ数年のうちに頒布された「ストリップ同人誌」だ。
そして、現役ストリッパー高崎美佳の「女の子向けのスト本作りたい」というツイートに同調したマンガ家・たなかときみ編集の「はじめて・ひとり・女性のためのストリップ観劇ガイドFirst Strip Guide」を除き、制作者は全て女性である。
そもそも、これまでは女性がストリップを語る場が、公には設けられていなかった。酒井順子『ほのエロ記』(角川文庫/2008)、田房永子『男しか行けない場所に女が行ってきました』(イースト・プレス/2015)のように、男性の場に女性がお邪魔するという形での記述はあり得たが、あくまで見学者として語る向きが強かったと思う。
正確には、上記の同人誌の中では『脱衣舞』が2010年8月から発行されており、芸能としてのストリップの魅力を語っているし、ブログなどを探すと2000年代にも女性目線のストリップ観劇記は見つかるが、まだまだムーブメントを感じさせるボリュームはなかった。
しかし、2012頃からいわゆる秘境・珍スポットの一つとして、個人ブログなどを通してストリップが語られる機会が増えてくる。ちなみに、この切り口では金原みわが『さいはて紀行』(シカク出版/2016年)、『日本昭和珍スポット大全』(辰巳出版/2017年)という本の中でストリップの魅力を語っている。
ここ数年の同人誌ではそうした「秘所に出向く」という要素はさらに薄められていて、それぞれの制作者が「私にとってのストリップの魅力をなんとか形にしてみんなに伝えたい」と力を尽くす傾向にある。そこではストリッパーひとりひとりに対する憧れはもちろん、劇場で一緒になった男性たち、あるいは運営側の人々への共感や敬意、劇場空間の非日常性の魅力などがストレートに綴られている。
また、もう少し手軽に、SNSで「ストリップ体験」を語る人も増え続けている。Twitterで「ストリップ、レポ」で検索してみよう。メンズストリップと呼ばれる演者が男性のストリップも含め、さまざまなストリップに対するポジティブな反応を目にすることが出来る。インスタグラムのタグでもロック座、ストリップといったタグとともに「行ってみた」レポを挙げる人はもはや少なくない。
こうした「新しいストリップ語り」が目立つようになったことは、女性客の増加の大きな要因になっているのではないだろうか。
「語り」の方法が変わったのは客席だけではない。ストリッパー自身も、自分の演目に対するこだわりや、楽屋での過ごし方、仲間との旅行の様子、ストリップへの思いなどをネットを通じて発信するようになった。
これまでどこか薄暗いイメージをまとっていたストリップだが、そこで踊る女性たちはそれぞれがプライドや愛情を持ってストリップの世界にいる。時には演者の葛藤や業界の理不尽さをこちらが目の当たりにすることもあるが、それも含め、ステージ上の人間が一個人としての輪郭をはっきりさせたことは大きいだろう。
こうした変化を男性客は、そして劇場側はどう受け止めているのだろうか。